夜が待ち遠しい

2023/11/24(金)08:30

亀有の注文を受けられない居酒屋

葛飾区(194)

亀有というと「こち亀」で知られる町でありまして、「こち亀」とは断るまでもなく秋本治著『こちら葛飾区亀有公園前派出所』のことですが、連載終了して随分経ちましたが、読み返すことも全くなかったし、そもそもちっとも興味を失ってしまっていましたから。このマンガを中学生の頃までは愛読していたのですが、主人公の両さんが少年マンガ誌に相応しい無難な破天荒キャラへと変貌するにつれ一挙に興味を失ってしまったのです。今にして思うと、両さんが酒を呑むシーンが減っていく過程とも連動しているような気がします。幼稚園時代から酒場通いを始め、職場や入院中でも呑むのが当たり前、運転手や空き巣、子供にまで酒を呑ますような少年誌どころか青年誌だって掲載を危ぶむような無茶さこそこのマンガの生命線であったはずなのに、その根柢にあるはずの過激さを封印してもなお脈々と温いドタバタコメディが継続したのだから、作者も編集者も読者も惰性的にこのマンガと付き合っていたんじゃないかとすら思えてくるのです。思えば亀有の町から陰惨な暗さが徐々に一掃されていった過程とも連動しているように感じられるのです。果たして両さんが異常な酒の吞み方をしていた頃にこの町に亀有名画座というシーズンごとに全く毛色の異なるフィルムを上映していた映画館を覚えている人がどの位存在するのだろうか。  先般お邪魔した「家庭料理 寺うち」のお通しに衣かつぎ風の里芋が一つ盛り付けられていました。女性客が店の方にそうそう私このお芋を炊いたのが大好きなのよ、これ、何て言うんだっけ、あっそうか衣かつぎかといった会話をなさっていました。というやり取りを聞いたからではないけれど、その次にお邪魔したのが、そこからすぐの「衣かつぎ」というお店でした。外観はガラス張りでちっともぼくの好みではないけれど、同行した知人が余り愚図愚図していると帰ってしまいそうだったので、迷いなど投げやってお邪魔することにしたのです。高齢女性が店の方かやはりご高齢の男性の相手を務めています。肴は頼んでいないらしく卓上は瓶ビールのみでした。こういう呑み方が許されるのは気が楽になります。というのがぼくの知人はやはりかなり高齢でもともとが食が細かったうえにさらにそれが進行しているようだったからです。ウーロンハイを注文してのんびり呑み始めます。店の造りが居酒屋というよりは喫茶店に近い風貌でありましたからドリンクのみで呑んでいても違和感はないのですが、それでは申し訳ないからと300円とお手頃な餃子を注文しました。すると恐らく1パック100円とかの市販の餃子が3個しか残ってなかったらしく、お値段惹くので3個でいいかしらと聞かれたのでそれで構わないと答えます。今日は調理の人がいなくて、できないモノがありますなんてことを仰る。ふうん、それでも店を開くんですねえ。とそのうちに先客は勘定を済ませています。ふと厨房を眺めると餃子を焼くだけなのにフライパンから大きく火が立ち上ってフランベしたみたいになっていたのです。餃子をこんな火が怒る程の火力で焼いちゃうのと思いつつも会話に戻ります。しばらくして店の女性が皿を持って現れ、真っ黒にしちゃったからお代はいただかないのでもしよろしかったらどうぞ。というそれは真っ黒こげなのにタネは何だか生っぽかったのです。勘定を済ますと、どうも値段は引かれていなかったようです。

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