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カテゴリ:短歌/俳句/小説/戯曲
◆第5話「終わらない自問自答」 純一 じゃあ、みんな、今日はお疲れ様。そろそろ合同説明会も始まるだろうから、今度はそれについて話そう。 学生たち お疲れ様でした。ありがとうございました。 (店内が閑散とする。) (純一、一人で作業をする) 麻衣 あの…。 (純一、顔を上げる) 麻衣 さっきの話、とても勉強になりました。 純一 それはどうも。学生さん? 麻衣、美里 はい。九州学院大学の学生です。 純一 じゃあ、さっきのみんなと同じだね。 美里 今の人たちって、サークルか何かなんですか? 純一 ああ、「起業・取材サークルRUN」っていうサークルだよ。 麻衣 RUN…。聞いたことがあります。 純一 毎月雑誌出してるからね。九州学院の学生さんは特に多いよ。あと、箱崎の筑前大学の学生さんも多いね。さっきも四人ほどいた。 麻衣 実は、近所の康司さんに純一さんのことを聞いて、何のあいさつもなしにここに来て、失礼ながら、ずっとお話を聞いていました。 美里 すっごい面白かったです。 純一 康司君?ああ、あの子は去年の卒業生だ。最近は上司が辞めたそうだけど、彼なら立派に引き継いでやっていくだろう。 麻衣 いつも、こんな勉強をやってるんですか? 純一 勉強?まぁ、就職活動対策はボランティアだね。サークルでは、もっと本質的なことを教えてるよ。この店は仕事場に近いし、時間的にも学生が多い時に仕事が終わるから、よく使ってるんだ。 麻衣 「本質的なこと」って、どんなことなんですか? 純一 …簡単には説明できないくらいたくさんあるけど、学生には「職業観」を教えてるよ。 美里 職業観? 純一 そう。仕事とは何か、働くとは何か、ってこと。 麻衣 さっきの話以外にもあるんですか? 純一 だから、さっきの話は、基礎の基礎なんだって。僕は就職活動には興味がない。ただ、若者が天下国家のために雄大な気持ちで働くことにのみ興味がある。 麻衣 あの…。サークルの勉強会って、誰でも参加できるんですか? 純一 誰でも、いつでも参加できるよ。 美里 あたし、入部したいです! 純一 そうは言っても、僕はただの顧問だからねぇ。今度、見学に来てみたらいいよ。ホームページから申し込めるから、近いうちにメールで問い合わせたらいいよ。 麻衣 あの、四年生でも見学に行けますか? 純一 もちろん。サークルの新入部員の半数は、内定後の四年生だ。 美里、麻衣 ええっ? 純一 普通なら、卒業を控えて一番遊びたい頃の学生たちが続々と入ってきて、ホントに変わったサークルだと思うよ。まぁ、それくらいやる気がないと、こっちも教え甲斐がないけどね。 内定のためなんて低レベルな動機で来られちゃ、迷惑だから。 麻衣 実は、私が一緒に連れていきたい先輩は、まだ内定してないんですけど…。 純一 内定していようがいまいが、僕には何の差でもない。学生は学生だ。未来に賭けたいと思うなら、その気持ちだけ持って見学に来たらいいよ。 麻衣 じゃあ、早速次の勉強会に行きます。 純一 そうか。じゃあ、楽しみに待っておくね。どうぞよろしく。 麻衣、美里 よろしくお願いします。 (亘、部屋でベッドに横たわりながら電話中) 亘 …だからさぁ~、別にいいんだって。オレはオレなりにやってるんだから。 麻衣 でも、絶対にいいきっかけになるって思ったんです。 亘 おまえの気持ちは有り難いけど、今頃「サークル」なんて行けるか? 麻衣 あそこは普通のサークルじゃない。学生の目の色が違ってました。 亘 お~、怪しい、怪しい。 麻衣 センパイ! 亘 オレは四年生だぜ?しかも「未就職」。要するに、「フリーター予備軍」ってことさ。 麻衣 どうしたんですか、そんなこと言って! 亘 オレのプライドにかけても、そんなサークルの見学なんて、行くもんか。 麻衣 でも、新入部員の半数が「内定後の四年生」って言ってましたよ。 亘 何だって…? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.06.23 03:56:20
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