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カテゴリ:短歌/俳句/小説/戯曲
美里 あんた、あれからどうだった? 麻衣 美里!びっくりした。あれからって? 美里 亘先輩のこと。あれから何か話したの? 麻衣 いや、すぐ帰ったけど。 美里 昨日みたいな話聞くと、就活がいきなりリアルに思えてこなかった?あたし、フツーに「自分が一社も決まらなかったらどうしよう」って思っちゃった。先輩には悪いけど。 麻衣 そうね。私も正直、先輩があんなにきつそうなのを見て、真剣に考えなくちゃって思った。で、美里、今日はこれからどうするの? 美里 別に。何も入ってないけど。 麻衣 じゃあ、また喫茶店に行かない? 美里 いいよ。じゃ、今から行こっか。 (二人、喫茶店に向かう) 麻衣 こんにちは。 マスター おう、君たちか。今日は早いね。 美里 授業、二限までだったんです。 (マスター、皿を拭きながら) マスター 昨日の男の子はいないの? 麻衣 はい、今日は一緒じゃありません。 マスター そうか。昨日は突然のことで、何の相談にも乗れなくて悪かったと思ってたんだよ。 美里 マスターが気にすることじゃありませんよ。 麻衣 マスターに聞きたいことがあるんですけど。 マスター 何だい? 麻衣 このお店に「純一さん」って方が来られてると聞きました。 マスター あぁ…純一さんか。時々来てるよ。平日の夕方から、よく若者と話しているね。 麻衣 私の知り合いの人が、その人のことをマスターに尋ねたらいい、って言ってたんです。 マスター あの方はあらゆる仕事に精通してるからね。風来坊のような変わったお客さんだけど、僕がここから見てても、ここに来た若者たちの表情が見違えるように変わるのはよく分かるよ。若いのに、大したもんだ。 麻衣 若い?何歳くらいなんですか? マスター そうだねぇ。見たところ、三十前後じゃないか? 以前、一人で来た時にちょっとお店の話をしたら、瞬時に利益率を計算されて、そのアドバイスが全部当たっていて、ウチもお客さんが増えたんだ。 美里 変わった人ですね。 マスター 来週あたり、また夕方過ぎに来るんじゃないか。学生たちもけっこう来るから、よかったら見に来てみたらどうだい? 麻衣 そうですね。じゃあ、また来てみます。 マスター じゃあ、昼のお代はいいよ。今度まとめて、ってことにしよう。 麻衣 え?そんな…ごめんなさい。 美里 ありがとうございます。 マスター 僕も、君らのような若者にウチの店を使ってもらいたいからな。 (翌週、再度来店) 学生1 …僕、実は四年生なんです。もう二十社も受けているのに、一社も決まらないんです。 (麻衣 えっ?就活の話?) 学生1 それで、ここに相談に来ると誰でも理想の内定が決まると聞いて、初めて来てみました。 学生2 ぼ、僕じゃなくて私も、噂を聞いて一緒に来ました。 純一 ようこそ。僕でいいよ。お互い頑張ろう。どうぞよろしく。 学生1、2 よろしくお願いします。 純一 君たちは、どういう業界を中心に受けてきた? 学生1 僕は広告代理店です。 学生2 僕は不動産会社です。 純一 そうか。じゃあ、商社だね。 学生1、2 しょ、商社? 純一 そう、商社だ。会計的に見ればね。 学生2 「会計的に」…? 純一 君たちは財務諸表は読める? 学生1 はい、少しは…。 純一 じゃあ、資産欄を上から順に言ってもらえるかな? 学生1 えっと…確か「流動資産」があって…。 学生2 その下は「固定資産」です。 純一 そうだね。じゃあ、流動資産は、何と何で構成されてる? 学生1 それは、分かりません。 学生2 「棚卸資産」です。 純一 そう。それと「当座資産」だね。じゃあ、その二つの違いは? 学生1、2 分かりません。 純一 そうか。でも安心してほしい。これが分かれば、今からでも理想の内定は楽勝だ。では、今から会計的視点について説明していこう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.06.23 04:06:11
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