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 NOB1960@ Re[1]:無理矢理持ち上げた結果が…(^^ゞ(10/11) Dr. Sさんへ どもども(^^ゞ パフォーマン…

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2006年04月08日
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「優雅な舞(その6)」

彩香が鴻基に、梅香が芝草に、香萠が金波宮に発った日の午頃、桃香、朱楓、琉毅の三人の遣士たちが累燦の家を訪れた。金波宮に向かった香萠とは行き違いになったようで、累燦から鴻基の情報を聞いて、一様に驚いていた。

「累燦さん、使令が王や麒麟を襲うことがあるんですか?私は聞いたことがないんですが?」
「琉毅、私も智照さんも蘭桂さんも初耳だよ。玄英宮の朱衡さんも聞いたことはないと言っていたらしい。前代未聞だ。だから、これが鴻基だけの問題かどうか、というのが重要になる。一応、泰台輔の使令が尋常でなかったのが一つ、泰台輔が『げんばく』の毒素にやられていたらしいのが一つ、使令もまた『げんばく』に侵されていた可能性が一つ、泰台輔の使令は蓬莱で穢瘁のせいで暴れた過去があることが一つ。これらのことをあわせるならば、鴻基の不幸な事故になる。と、夕べ三人で考えたんだが、君たちはどう思う?」
「辻褄はあうと思います。が、使令が逆らったことを公表してよいかどうか」
「王には伝えないと拙くはないか?あとで別のところから耳に入ると余計にややこしくなる。最低限のことは伝えないと」
「うちは冢宰ですが、事実だけを伝えようと思います。『げんばく』による不幸な事件だったとは付け加えますが」
「芳や漣もあるだろう?あそこには補佐を飛ばすか?」
「その方がよろしいようですね。連絡員が変なことを口走っても困りますし」
「芳は玉拓がいるし、峯王も聡明だから良いが、漣は玄載にあの女王だろう?変に台輔を忌避されたりしないかな?」
「玄載は大丈夫ではないですか?あれからなら廉王もすんなりと受け止めると思いますよ」
「琉毅と玄載、舜の澄雲は南の最悪の時期に苦労してるからな。その辺りは信用してもいいだろう。詳報はどうする?速ければ明日にでも届くが?」
「厭でも現実から眼は逸らせませんからね。ただそれを他に漏らすかどうかは別の問題ですね」
「ああ、夕べもその話をした。おそらく気分が悪くなるような話だろうと思う。だから、そちらには梅香を走らせるつもりだ。芳や漣には補佐を飛ばしてくれ。くれぐれも取り扱いは注意してもらいたい。無論、今回の第一報も同じだが」
「恭から先には廻っていないのですね?」
「芝草で止めている。君たちがいないところで騒ぎが起きると厄介だろう?あとは任したからね」
「そういえば智照さんは?」
「蘭桂さんと玄英宮に行っている。戴が斃れて妖魔の出没にも変化が出るかもしれないからな」
「夕暉さんは来るんでしょうか?虎嘯さんが亡くなられたんですから」
「今頃はこっちに向かっているかもしれないな。来るのを待っているか?」
「いえ、とんでもない。ここで何をぐずぐずしてるとかどやされそうですから。すぐに発つことにします」
「くれぐれも注意して帰ってくれ」

三人の遣士たちは吉量で移動してるのでそう無理はできない。今日は漉水の河口域で留まり、明朝黒海を渡るのだ。夜半には連檣に着き、翌日紫陽、その翌日に揖寧にたどり着くという感じだ。才に戻る琉毅は南回りの方が速いのだが、奏や巧から才へ向かう地点が何れも妖魔の跋扈する箇所で、吉量では危険なので北回りをせざるを得なかったのだ。三人を送り出し、しばらくすると智照と蘭桂が戻ってきた。

「お帰りなさい。玄英宮はいかがでしたか?」
「太師の白沢殿を加えた四人だけで内緒話になった。本来なら累燦にも来てもらった方が良かったのだが」
「いえ、あの三人が来るのもわかっていましたからね。彩香もいませんし、葉堆や木蓮ではまだ無理ですからね」
「その葉堆や木蓮は?」
「葉堆は念のために待機させていますが、木蓮は柳との高岫地帯から虚海沿岸にかけての状況を見にやらせました。今まではさほどではなかったところですが、戴が斃れたことで妖魔の出没が増えるかもしれませんのでね。もしいけるようなら戴の近くまで見て来いと言ってありますが、無理はしないようにとも」
「戴からの玉がまだ輸送できるかを見に行かせているわけか。一人で大丈夫か?」
「ない袖は触れませんから。葉堆も黒海から青海にかけての状況調査に出したいんですが、彩香がいませんからね。何かあった時に私が飛び出していけませんからね」
「三人は?」
「頭を抱えて戻っていきました。ホントならここで詳報が来るのを待っていてもよいのですが、夕暉さんが来るかもってことで」
「来るとしたら明日の夜か?」
「だと思います。今夜辺り香萠が金波宮に着きますから、飛んでくるんでしょうね。蘭桂さんはどうします?」
「鴻基に行くかってことか?いや、私は行かないよ。詳報を金波宮に届ける役目もある。泰王も台輔も関りはあるが…」
「ああ、台輔を蓬莱から連れ戻した時のことですね。泰王の騎獣の世話をしたとか」
「そうだ。その縁もあって戴の担当を言い付かったけど殆んど行く機会もなかった。虎嘯さんにも可愛がられていたけどね。すべてが落ち着いてからゆっくりいくことにするよ。今は個人的なこともよりも大事なことがあるからね。夕暉さんが金波宮を離れるなら私が戻らないと拙いだろう?いくら親しいと言っても私は肉親を亡くした訳じゃない」
「……」
「ああ、玄英宮の方だが、やはり柳の方を気にしていた。光州の警備を強化しないといけないか考えていたな。木蓮の調査結果は早めに知らせてやって欲しい。彩香が戻ったら黒海や青海の方もな。今まで大人しかったところだからな。翠蘭が前に調べた虚海上の妖魔の巣はこれで沈静化することはなくなったと見たほうがよいだろうな」
「そうですね。とすると柳からの航路が?」
「その辺りは智照さんが芝草に戻ったら調べてもらうことになっている」
「梅香にそのことも言いつければよかったんだけど、迂闊だったな」
「夕べはあの情報についてどうするかばかり考えていましたからね。木蓮を光州に遣った累燦のほうが立ち直りが早かったようだ」
「いえ、昨日のうちに彩香からすぐに出られるように命じられていたのに結局は仕事がなくなってしまったものだから、葉堆や木蓮の方から行かせてくれと言ってきたんですよ。それでハッとしました。呆けていることに自分では気がついていませんでしたね」
「なるほど、こういう場にいると自然と鍛えられるのかもしれないな。梅香や香萠に負けてられない気持ちもあるのだろう。まぁ、明日まではじっくり待つことにするか」
「そうですね」

  *  *  *  *

翌日の夕刻、最初に戻ってきたのは木蓮だった。柳との高岫付近を黒海側から虚海側まで抜け、そこから戴の近くまで行き、引き返して北路で一泊し、虚海沿岸を南下して関弓に戻ってきたのだ。それによると、柳との高岫付近および戴までの航路には妖魔の姿はなく、虚海沿岸も光州内では今まで通り、それ以南は危険なので迂回して戻ってきたそうだ。泰王が斃れて数日なので影響は出ていないようだ。次に戻ってきたのは芝草に行っていた梅香である。劉王に報告した後、柴耀と話し合い、戴との航路を調査することにした。

「ほぉ、戴との航路をな」
「はい、藍旋を向かわせました。垂州の例などもありますのでくれぐれも無理をしないように命じていました」
「すると明日向うに戻る頃には一応の結果が得られているわけか」
「はい、しかし、泰王が崩御なさったばかりですので、すぐに影響が出るかどうかは不明ですので、定期的な調査も必要かと。これについては智照さんが戻られた時に改めて検討したいと」
「で、劉王は?」
「難しい顔をしていました。使令が麒麟の命に背いて王や麒麟を害したことに驚いておられました。泰台輔の使令が特別であり、『げんばく』の影響を受けていたので、特異なことになったのだと説明しましたが、やはり台輔のことが気にかかるご様子で」
「妖魔の恐ろしさを厭ってほど知っているだけに、使令だから背かないってのが馴染めないのかもしれないが… 急いで帰った方が良いかもしれないな」
「すみません、力不足で」
「いや、止むを得まい。だが、詳報については言葉を選ばないと拙いかもしれないな。ご苦労だった。彩香が戻ってきたら連檣、紫陽、揖寧を廻ってもらうからな。桃香、朱楓、琉毅にはその旨伝えてあるから言葉は選ばなくて良いぞ。あいつらが勝手に考えるからな」
「わかりました」

梅香との簡単な打ち合わせが終わる頃、金波宮から夕暉と香萠がやってきた。夕暉は平静を保とうとしているが、顔色は悪い。起居にいたものはスッと立って拱手し、蘭桂が代表するように言った。

「夕暉さん、この度は虎嘯さんが…」
「いや、個人的なことで皆に迷惑をかけてすまない。蘭桂を関弓に派遣した時点で私は動いてはいけないのはわかっていた。が、主上のご厚情に甘えて来てしまった。蘭桂、私は鴻基で兄の葬儀を終わらせたらすぐに戻るので数日だけ頼む。本来は戴との所縁の深い蘭桂に行って貰うべきなのだが、我が侭を許してもらいたい」
「とんでもない。夕暉さん、鈴さんは?」
「このようなときなので連れてこなかった。ことが収まってから改めて墓参に来させるつもりだ」
「では、私もその時はお供を」
「すまん。先の話だがな。…で、鴻基からは?」
「間も無く戻ると思います」

梅香が茶を淹れて一同に配り終えた頃、厩のほうから彩香がやってきた。夕暉の姿を見て慌てて拱手する。梅香が彩香の分の茶の用意をしに厨に戻ろうとしたのを智照は制し、香萠に行かせて、梅香は残るようにさせた。

「遅くなりまして申し訳ございません」
「いや、で、鴻基の様子はどうだ」
「はい、小司馬の翔雲と申すものが指揮をとり、二日でほぼ収拾、明日にも泰王の葬儀が行われるとのことです」
「明日にも?随分手際が良いな。それにしても小司馬がなぜ指揮を?」
「今回の惨劇の犠牲者は泰王、冢宰、三公、八侯、王師左右将軍、六官長、内宰と小司冦、小司空、衛兵十名と虎嘯さんの三十五名です。重傷者は王師中将軍、瑞州師三将軍、小司徒、小宗伯、冢宰府侍郎、瑞州尹など十五名で、白圭宮の要が殆んど失われました。したがって、白圭宮で今現在動けるものの打ち最も高位の官が小司馬の翔雲だったそうです。翔雲は泰王の葬儀まで、と言う条件で白雉の肢を持ち、その後改めて仮朝の責任者を選任するもようです。ですが、翔雲は実務能力に優れており、おそらくはこのまま白稚の肢を管理するものと思われます」
「犠牲者の中に台輔の名がなかったようだが?」
「この三十五名は遺体が確認されたもののみだそうです。台輔と女怪については翠蘭がその死を目撃しておりますが、白圭宮のものは一人も見ていないので、とりあえず行方不明扱いなのだそうです」
「遺体が確認されていないというのは…」
「使令が台輔を喰らったそうです。女怪の遺体については翠蘭もわからないそうです」
「翠蘭は血塗れだったそうだが、怪我は?」
「ないようです。使令に向かって行って無傷なのは翠蘭一人のようです。当人も訝しがっていました」
「で、虎嘯さんは?」
「使令が暴れた時、唯一帯刀していたのが虎嘯さんで、泰王や台輔を逃がすための楯になったそうですが…」
「あの使令相手で人が何か出来るものではない。…遺体は揃っているのか?」
「…はい。既に柩に入れられていました。翔岳さんの葬儀の時に翔岳さんの隣に葬って欲しいと仰っていたそうです」
「…そうか。では、その望み通りにするしかあるまい。自ら望んで戴に赴いた人だからな。泰王を守れなかったのは悔いが残ろうが、あの人のために命を賭したことには悔いはないだろう。あの人と同じ国に葬られるのが望みなら叶えるのが私の務めだろう」
「…夕暉さん」
「ああ、大丈夫だ。彩香、大まかなことはわかった。が、実際にどういうことがあったのか最初から経緯を」
「はい、翠蘭が申しますには…」

彩香は翠蘭から聞いた白圭宮での出来事を語った。一同はその凄惨さに言葉を失い、顔色が青ざめた。






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最終更新日  2006年04月08日 12時28分18秒
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