身に付けては解き放し、身に付けては解き放し…
五月、風、吹流し…、一人ひとり好きな布を選びました。シルクの三尺です。布と遊びながら布からイメージを貰います。遊び方もまたひとり一人違います。次ぐから次へと遊びが発展していく人、それを見る人、真似る人、ゆっくり一人で遊ぶ人…。遊びながら布とからだが繋がり、そのからだは地球と繋がる…。自分の重さを地球に働きかけると、その反作用として足の下から反作用がかえってきます。足の下から脚へ、脚から胴体へ、そして腕の中を通り布へと繋がっていくエネルギーの通り道。それは「気体」の通り道。それは「風」の通り道。時間と共にからだが「布」から「気体」、そして「風」へと飛躍的に変化してゆきます。「事実としては不可能なことも、イメージの世界では、可能と信じて行うことによって、他の部分の協力的動きが起こり、結果的に見ると、不可能な動きが可能になる。このような試みによって、動きと感覚は新しく切り劈かれ、その水準は上がっていく」(野口三千三)しかしからだはなかなか劈(ひら)かれません。途方にくれ、しばし中断します。救いは皆めげないで楽しそうに笑っていることです。うん。もう一度やってみよう…。もっと強烈な救い主が現れました。初心者のNさんです。何の約束事もなく、立っているからだが、ただひらひらと地に舞い降りてきました。思わず拍手が起きました。つい最近まで泣いてばかりいたのに…、あれだけ泣けたのが良かったのかもしれません。やればやるほど約束事を身に付けていきます。身に付けては解き放し、身に付けては解き放し…、練習、稽古の意味の一つです。初心者の何の約束事もないからだにはっとして、よし。もう一度やってみよう…。