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カテゴリ:父の死
家族みんなで談話室に移動した後、 兄は会社の常務と連絡を取り、 地元の葬儀社に電話して、父の移送の準備を整えました。 母は、父に着せてもらう衣類を整えた後、 医療費の清算もしなくてはならないと、 また、しっかりとした母に戻りましたが、 私は、ただただ、ぼんやりとしていました。 父の仕度が整ったのが、何時だったのか? 会社から呼んだ常務が、何時に来てくれたのか? 棺と一緒に病院を後にしたのが、何時だったのか? まるで夢を見ているような覚束ない心持の中で 先生方お二人が半袖姿で表に出て、深く頭を下げたまま、 私たちの車を、いつまでも見送って下さるお姿を 助手席から車のドアミラー越しに眺めながら、 まだ、現実感の戻らないままに車に揺られて病院を出ました。 ピンクセミダブル posted by (C)ちまのん 実家に帰る途中で、会社の近くを通り過ぎた時には、 「パパ、会社が見えるよ。会社の側よ。」 と、父に声をかけました。 後部座席に乗った母も、私と同じ言葉をつぶやいていました。 夜も遅い時間でしたが、道はそれほど空いてはいなくて、 たぶん、一時間ほどもかかったのでしょうか? まだ、父を寝かせるための準備の整っていない実家に到着して、 甥や姪が息子や兄、兄の友人とともに急いで和室を片付けているのを 母と二人で、ぼんやりと眺めていました。 母は、病院に居た時とは別人のように、 目はうつろ、話す言葉もおかしくなってしまっていました。 私が憎んだ母の姿は、実は母の本当の姿ではなく、 精一杯、虚勢を張ったものであったとその時気が付き、 一瞬でも母を憎んだ自分を嫌悪する気持ちと、 母へのすまない気持ちで、頭の中はいっぱいになっていました。 バターイエロースポット posted by (C)ちまのん 葬儀社の方が、その後の準備をすべて整えて、 明日、また打ち合わせにお見えになると約束して帰られたのは もう深夜近くの事でした。 それから、兄はあわてて親類に電話をかけて、 事の次第を連絡していました。 まさか、こんな展開になるとは思っていなかった私たちは、 親類等の電話番号など、普段は持ち歩いていなかったのです。 真夜中に電話を受けた叔父、叔母たちは、 どれほどビックリした事でしょうか…。 しかし、そんな事に気が回るほどにしっかりした人間は、 もう家族の中には、誰もいなかったのです。 ピンクセミダブル posted by (C)ちまのん 自宅に帰って横になった父は、病院での父とは違い、 頬には赤味がさして、口元は軽く微笑んで、 息をしていないのが嘘のような優しい笑顔をしていました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010年02月17日 18時42分17秒
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