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天使の降りた家

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2018.02.20
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カテゴリ:遥音の事
遥音のクラスで弦人が副籍交流をした後の続き。
(すっかり続きが遅くなりましたが・・・)

 ​弟の副籍交流の日記

初めて2年生の弟のクラスで弦人を紹介した日。
ただのお兄ちゃんだと思っていた弦ちゃんを
自分の口で、みんなに紹介した。
どんなものが好きで、どんなものが嫌いなのか。
普段どんなことをしているのか。
彼なりに客観的にお兄ちゃんを見て、それを言葉にして
みんなの前に立って、紹介をした。
恥ずかしくて緊張して声が震えてたけど
最後まで大好きなお兄ちゃんを、みんなに紹介できた。


あの後、遥音の頭の中で、色んな感情が出てきいた。
夜の布団の中で、その溢れる気持ちを話してくれた。

「何で弦ちゃんは頑張っても出来ないの?」
「誰でも努力したら出来るのに、何で弦ちゃんは出来ないの?」
「何で病気になったの?誰のせい?」
「ママのせいなの?あ、神様のせいか・・・」
「僕も弦ちゃんと一緒に学校に行きたかった。一緒にしゃべりたかった」
「僕も普通のお兄ちゃんが欲しかった」
「みんなに弦ちゃんのことを悪く言われたら、僕は悲しい」
「今日もよだれが出てるって言われた。」
「弦ちゃんを悪く言う人は憎たらしい」

などなど・・・・・・

私からの答えを聞きたい訳でもなく
自分自身に問いかけている様だった。

なぜ動けないのか、や
お腹の中で何があったのか、など
何度も話して聞かせていたことなので
理屈では分かっているんだけど、気持ちが納得できない、
そんな状態だったのかと思う。

私はそんな彼の言葉に耳を傾け、そうかそうかとうなずきながら
色々と深く考えられるようになったなぁと、
これはすごい成長だなぁと感じていました。

産まれてからずっと側にいて、そこまで疑問に感じていなかったことが
改めてみんなの前で紹介することで客観的になり
なぜ?という疑問の気持ちから、
人にどう思われているのだろうか?という気持ち、
病気を否定したい、悔しくて悲しい気持ちなど
色んな感情が噴き出てきたんだろうと思う。

これは、私たちが弦人の病気を初めて突き付けられた時の
あの病名告知の衝撃の感情に似ているなぁと思った。

そうか、遥音は今
弦人の障がいを受け止めようとしているんだな・・・・と。



しゃべるだけしゃべって、
その日は眠ってしまったハルトを見て、
副籍交流をしたことは、彼の人生の中で大きな出来事だったんだなぁと。
自分の気持ちに向き合う、大事な時期かとしれない、と。

そんな風にも思ったりした。

もう少し話を聞いてあげよう。
気持ちを聞いて、寄り添ってみよう。
きっと彼なら、大丈夫・・・。




その数日後に、仕事の都合がつけたので
遥音を誘って近くのカフェ店に入り、デートをした。

向かい合って座るテーブルだけど
二人で横に並んでくっついて座って
はるとはココアとケーキ、私はコーヒーとパイを頼んで
久しぶりに静かな二人の時間を取れた。
はるとは久しぶりのママとの時間に、甘えっぱなしだった。

私は、弦ちゃんに病気が判明した時のことや
悲しくて泣いた話や
公園でママたちの目が気になり、みんなの中に入れなかったことや
お父ちゃんといっぱい気持ちを話し合ったことなど
初めて病気と向き合った時のことを話したりした。

はるとは、ふーん、ふーんと聞いて考えている様だった。
しかしあの夜以来、彼は弦人兄への不安を言葉にしなくなっていた。
あの時にもう全部吐き出してしまったのかもしれない。

また時々、時間を取って
ゆっくり話をする機会を作れたらいいなと思う。





その週の週末。
公園に弦人とはると、ほのかと行くと
はるとの同じクラスのお友達が数人遊んでいた。
「あ、弦人君だ!」

クラスの子が弦ちゃんを見つけて駆け寄ってくる。
ワーーーー!と嬉しそうにやってきて
ある子は弦ちゃんに笑ってもらおうと、お笑い芸をやりだす。
(副籍交流でお笑いが好き、と紹介したから)
ある子は、車いすを押し始めて、一緒に押し出す。
わ~、自転車と一緒のブレーキがある!とか言いながら。

そんな様子に、弦ちゃんはケラケラ笑い
はーくんも一緒になってお笑いを始め
弦ちゃんの周りが段々と賑やかになっていった。

はるとの動きが一番面白くて弦人が大ウケしていたら、
次こそは僕もと、どうすれば弦ちゃんに笑って貰えるかと工夫し出したりと
子供たちが弦人と遊ぼうと集まってきた。
はるとのお兄ちゃん大好きの気持ちが、みんなに伝わっているのを感じた。

そういう子供たちを見て
子供って元々、垣根がなくて優しくて、
思いやりがあるんだなーと
温かい気持ちになりました。

また通りすがりに、友達の一人が
「弦人君の紹介、分かりやすかった!へーっ!と思った。」
と声を掛けてくれました。
存在は知っていたけど、知らなかった事。
知れた事で理解が広がった。
そうなんだ!と。
子供達は素直だなぁ。
違いをそのまま違いとして認められる。
知って貰うって大事なんだなぁ。


はるとが
「副籍やって、みんなに紹介して良かった。」とポツリ。
心配していた気持ちが、楽になったようだった。

実は兄弟の副籍交流は前例がなかったみたいで、
一時はどうなるかと思ったけど、

やって良かった。

はるとの一生にとって
大事な一歩の一日になったと思う。



弟のゲームを覗き込む弦人。
はるとは弦ちゃんが見える様に、横に座ってやり始める。
ほらほら、時々手がにゅ~っと伸びて来ますよー。
はーくんがYou Tuberばりに、ゲーム解説を始めると
弦ちゃんは面白くってゲラゲラ大笑い。

弦ちゃんが見える様に、さりげなく横でやるってとこが
はーくんの優しさだったりするんだよね。





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Last updated  2018.02.21 10:02:53
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