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2006.03.12
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Michel Pastoureau, "Les Couleurs Medievales : Systemes de Valeur et Modes de Sensibilite"
dans Michel Pastoureau, Figures et Couleurs : Etude sur la symbolique et la sensibilite medievales, Paris, 1986, pp.35-49.

ミシェル・パストゥローの論文集『図柄と色彩―中世の象徴と感性に関する研究』より、「中世の色:価値体系と感性の様式」を、簡単に紹介します。

クレルヴォーの聖ベルナール(12世紀)は、色への敵意を示しています。彼は修道士でしたが、同時代の修道院の、派手な装飾の建築や派手な服の修道士などを非難しているのです。
一方、中世の人々にとって、色は救済の印だったといわれます。

さて、全ての色が対等の地位にあったわけではありません。また、時代によっても色への価値観は変化します。たとえば青は、初期中世では価値が認められていませんでしたが、次第に好まれる色になっていくと指摘されます。
初期中世は、三つの色を基本としていました。白、黒、赤です。他の色は、重要ではなかったというのです。たとえば、黄色は白と同一視され、青や緑は特別な黒とみなされたそうです。この三色の図式は、11世紀半ばから13世紀半ばに崩れていくといいます。

先に少しふれましたが、青がしだいに好まれていきます。ヨーロッパの13世紀は青の世紀だと指摘されています。その頃、青は聖母マリアの色、王の地位の色となるそうです。18世紀頃までは、赤と競い合う色でした。これについて、面白い話が紹介されています。アカネ商人が、フレスコ画家に、悪魔を青色で描かせました。それは、青の地位をおとしめるためだったというのです。

後半では、まず、色のレッテルとしての機能が紹介されます。13世紀から、色が、個人あるいは集団になんらかの位置付けを与える機能をもつようになったといいます。色は、排斥されるべき人間を示します。例として、娼婦、死刑執行人、異端などが挙げられます。
(排斥される者たちへの)レッテルの役割を果たした色として、赤と黄が重要です。以下は、主にこの二色について論じられます。

赤はキリスト教徒の中で非難される者(娼婦、死刑執行人、病人など)に、黄は非キリスト教徒(ユダヤ人、イスラーム)に適用されました。
黄色は、過失、裏切りの色で、ユダヤ人、シナゴーグ(ユダヤ教の礼拝堂)を示しました。絵画に見られるユダヤ人は、いつも黄色い服を着ているそうです。
裏切り者ユダも、黄色の服を着ています。また、その髪は赤い長髪。赤毛がもつ軽蔑的な意味合い、その起源は古く、聖書や古代のラテン語文学までさかのぼるそうです。中世ヨーロッパの有名な文学『アーサー王物語』では、赤毛は裏切り者、不実の騎士を示しているとか。
黄色はまた、無秩序、狂気を示し、道化者や狂人folieの服とされました。
一方、金色は、良い黄色とみなされたそうです。

最後は、黒の話です。
最初の方でも言われたように、色には二面性があります。黒にも、良い黒と悪い黒があるということですが、「良い黒」は、とりわけ中世末期からについて述べられます。良い黒は、謙遜、節制を示す色であり、君主や貴族の色とされました。また、奢侈法によって、高価な色(高い染料から作られる色)ではなく、黒がすすめられたことにより、黒が流行するといいます。
最後ですが、黒と喪(服)の関係について述べられます。これは、比較的あたらしい習慣だとか。黒い喪(服)は11世紀スペインに見られ、13世紀頃からやっと他の地方にも見られるようになるそうです。

はしょりながらですが、本文はこのくらいで。
本論には、色の象徴についての図がありますので、より適切な訳語があるかもしれませんが、以下に紹介してしまいます(p. 40の図より)。

色 / 美徳・長所 / 悪徳・欠点

赤-美徳:強さ、勇気、寛大さ、慈善
  悪徳:高慢、残酷さ、怒り

白-美徳:純潔、貞潔、希望、永遠、正義
  悪徳:死、絶望、曖昧さ

黄-美徳:豊かさ、高貴、信仰(特に金)
  悪徳:誤り、背信、貪欲、妬み、裏切り、怠惰
                    
青-美徳:誠実、正義、知恵、教養、強さ、誠実な愛
  悪徳:愚かさ、私生
   
緑-美徳:美、若さ、力強さ
  悪徳:無秩序、狂気、不実の愛、貪欲

黒-美徳:謙遜、忍耐、節制、悔悛
  悪徳:絶望、喪、死

紫-美徳:慎重さ、節制
  悪徳:悲しみ、曖昧さ、大食

ーーー
久々に外国語論文の紹介でした。
(これだけ整理しておけば、自分にとっても便利です)

*最後の図が、一時ぐだぐだになってしまっていました。応急処置として、上記のかたちにしておきます(罫線が使いたい…)。





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Last updated  2008.07.12 21:02:57
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