カテゴリ:本の感想(や・ら・わ行の作家)
横溝正史『蔵の中・鬼火』 ~角川文庫、1975年~ 横溝正史さんの中期の短編が6編収録されています。喀血して、長野で療養されていた頃の作品ですね。 それでは、それぞれについて簡単な内容紹介を書いた上で、感想を。 ーーー 「鬼火」 幼い頃から憎しみあっていた万造と代助は、長じて二人とも画家になった。二人の間でモデルをつとめていたお銀を巡り、二人はさらに対立する。万造がお銀とともに旅行に行ったとき、二人は大事故に遭遇し、万造は大けがを負った顔を隠すため、仮面をつけるようになる。それから、三人はさらに破滅への道へと歩み始める…。 「蔵の中」 雑誌『象徴』の編集長、磯貝氏に届けられた原稿『蔵の中』。今は亡き姉のことを思いながら、姉と過ごした蔵の中で過ごした始めた男の話が、そこに書かれていた。読唇術をもつ男は、双眼鏡で外を見ながら、そこに一つの犯罪を目撃する…。 「かいやぐら物語」 病気療養のため、海辺の別荘で過ごし始めた私は、ある月夜に、浜辺で一人の女に出会う。彼女は、私に哀れな青年の話を語る。その女そっくりの女も登場する、不思議な話を。 「貝殻館綺譚」 からくり仕掛けのある、画家の別荘「貝殻館」を訪れていた二人の女が、崖でもめあい、一人が落ちて死んでしまう。生き残った女は、近くの看視小屋の少年に一部始終を見られていたことに気付く。女は、貝殻館の中を見てみたいという少年の希望を利用し、ある策略を実行に移すが…。 「蝋人」 年の離れた旦那と一緒だった珊瑚は、ある日、今朝治と出会い、彼との恋に落ちた。二人の中に気付いた旦那は、今朝治を罠にかける。さらに珊瑚は重い病を患い、視力を失ってしまい…。 「面影双紙」 私の友人の話―。その父は物堅く、商売上手でいたが、母は浮気をすることもしばしばだった。しかし、父が薬屋の店舗に、当時流行った人体模型―それも、本当の人間の骨を飾るようになってから、一家の状況が変わり始め…。 ーーー 読了してから感想を書き終わるまでに3週間近く経ってしまったので、もはや忘れかけているところもあるので、簡単に書いておきます。 まず、本書はほかに『鬼火』というタイトルのもの、『蔵の中』というタイトルのものと、収録内容は同じで表紙と表題のみが違っている版が3種類あります。中でも、私は『蔵の中・鬼火』の表紙が好きなので、記事のタイトルはこちらにしました(古本でも割と手に入りやすいので、3種類の表紙全て揃えてしまっています…)。 さて、本書に収録された作品はどれもいわゆるミステリとはいえないと思います。謎解きの要素はほとんどなく、どろどろした人間模様などを描いた物語です。 「鬼火」のどろどろっぷりはすごいです。謎解き要素がない分、そのすさまじさが際だっているとでもいえましょうか。 「蔵の中」は、どこか幻想的な作品です。その雰囲気が大好きです。 と、表題作2作のみについての印象しか書いていませんが、このあたりで。 どの話も味わい深い短編集です。 ※表紙画像は、横溝正史エンサイクロペディア様からいただきました。 (2010/07/29読了)
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