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2013.08.31
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ニコル・ゴンティエ(藤田朋久/藤田なち子訳)『中世都市と暴力』
(Nicole Gonthier, Cris de haine et rites d'unite. La violence dans les villes, XIIIe-XVIe siecle, Brepols, 1992)
~白水社、1999年~


 著者のニコル・ゴンティエは、訳者あとがきによれば、リヨン第三大学文学部教授です(1999年時点)。リヨンを主要な研究地域としていて、テーマとしては、貧者、犯罪、刑罰などの研究を進めていらっしゃるようです。本書も、そうした関心領域の成果です。
 訳者のお二人の研究として、私の手元には、樺山紘一編『西洋中世像の革新』(刀水書房、1995年)所収の、
 藤田朋久「汝のために神は闘えり―法廷決闘とその叙述をめぐる問題」
 藤田なち子「十三世紀エクセンプラにおける告解の問題」
があります。
 それでは、本書の構成を掲げた上で、簡単にメモを書いておきます。

ーーー
はじめに


第一章 不和と軋轢
第二章 共有された憎しみ
第三章 日々の暴力
第四章 暴力の諸形態
第五章 平和をもたらす都市
第六章 公的な暴力
第七章 「厄介ごと」か、それとも脅威か?
結論

訳者あとがき
原註
参考文献
主要用語索引
ーーー

 第一章は、都市の内部で起こる、様々な階層の人々(貴族、同職組合、若者、聖職者たち)の、その階層内部や階層同士での暴力を描きます。

 第二章は、レプラ患者、「よそ者」、ムスリムやユダヤ人などの非キリスト教徒たちに対する都市民たちの暴力、そしてそのような排除された人々による暴力について論じます。ここに列挙した人々は、「公的な暴力」の対象となりえましたが、興味深いのは、貧者に対しては、集団的な敵意が示されることがなかった、という指摘です。もちろん、貧者も集団になって暴動を起こすことはあったわけで、その際に敵意の対象とはなったでしょうが、キリスト教徒たちは救貧の理念があるので、貧者にはある種の連帯を示していたというのですね。

 第三章は、具体的に暴力の起きる場、時について論じていて、興味深いです。まず、住居も暴力を免れられる場所ではなかったことが示されます。戸を破って侵入してくる乱暴者は、もはやどうしようもないですね…。その他、通りや風呂屋などなど、そこでの暴力事件の具体例も示されていて、面白いです。暴力の時として重要なのは、祭りの時ですね。

 第四章は、その標題のとおり、いろいろな暴力のあり方を示しています。突発的に起こったのか、綿密に計画されていたのか。喧嘩なら、どんな武器が使われたのか。その他、盗みや言葉の暴力など…。
 ここでは、特に言葉の暴力についての部分が興味深かったです。都市民は、相互の信頼、名誉を重視していました。そこにきて、「盗賊」「人殺し」などと侮辱されると、名誉はずたずたです。さらにひどいのが、「追放者」という侮辱。「追放者」は、以前いた町でなんらかの犯罪を犯したはず、この町でも何かするのではないか…という、住民の恐怖がそこに現れていると同時に、言われた方は、非常にひどい打撃となる、というのですね。

 第五章は、警察のあり方や地縁的絆による警備、若者のエネルギーを祭などで上手に発散させたり、暴力をふるう者を追放したりという事例を見ながら、都市の平和の維持のあり方を論じます。ここでは、平和のための説教と、犯罪者への烙印が興味深かったです。
 都市当局は、都市の予算から毎年一人から数人の説教師に報酬を支払う習慣があったそうです。説教師たちは、時には暴力を起こすような説教もしたようですが、平和を説く説教も重要でした。ときには政治色を帯びることもあったとか…。
 そして、悔い改めない盗人には、耳裂きや手足の切断が科せられたとか。本書には図版も多く掲載されているのですが、耳裂き・手足の切断の図版は、なかなかインパクトがあります。

 第六章は、犯罪者への見せしめなど、「抑圧機構」としての公的暴力を中心に論じます。

 第七章は、よそ者やマルジノー(貧者、乞食など、社会の周縁的な人々)による暴力、彼らへの暴力について論じるほか、下層民同士の暴力に対しては都市は無関心を示していたことなどが指摘されます。

 一章ごとに、章末にその章が要約されていたり、図版もたくさん掲載されていたりで、とても読みやすい構成でした。





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Last updated  2013.08.31 16:17:25
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