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カテゴリ:感想【小説】
伊坂幸太郎さんの「オーデュボンの祈り」です。
伊坂さんの小説は、本当に会話が卓越して洒落ています。 デビュー作であるという本作にも、伊藤と日比野のやりとりにそれは既にみられています。 突然奇妙な島に連れて来られた伊藤が出会う、変わった人々や変わった風習、何より、人の言葉をしゃべり、未来を知っているカカシ。 百何十年かで文化がそんなに変わるものか?とか、 百何十年も閉じていたら生活はもっと遅れているのではないか?とか、 突っ込みたくなるところではあるのですが、そこはまあ、カカシがしゃべるくらいだから大きな問題ではない、ということでスルーしました。 伊坂さんの小説世界には、いつも「絶対的な悪」が存在し、かけらの良心も持つことを許されていません。 改心も許さず、どんな救済もせず、徹底的に邪悪な人間の姿として、容赦がありません。 それでいて、「正義」には殺人さえも許す。 それにしても、こんなに人間的なカカシを描いた作品は、世界広しと言えど、本作品唯一ではないでしょうか? カカシを「神」のオマージュとして存在させ、その自殺により、神の自殺という禁忌を描いたように思います。 ただ最後、島にかけているもの、が「音楽」だった、というのは、最後にきてちょっと腑に落ちなかったような気がします。 一応、前振りがしてあるので唐突というわけではないかもしれませんが、物語の根本に関わるようなものだと思っていたので。 じゃあ、何?といわれると困りますがf^^; 人間の罪、悪、裁き。 のちのちの伊坂作品に繋がるテーマが根底にあり、「アヒルと鴨~」、「重力ピエロ」の源泉的な作品ではないかと思われます。 現在、「陽気なギャングが地球を回す」を読んでますが、読み終えたら伊坂さんはしばらくお休みして、「ラッシュライフ」は後日読もうかな。 何だかまとまりのない文章になってしまいました。 ちょっと日を置いて読み返してみます。
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