テーマ:ショートショート。(1084)
カテゴリ:創作
「みきせんせー! きょうのぱんつのいろなーにー?」
「ま、たかし君たらおませさんね! そんなことおしえてあげませーん」 「むうう! おとなはみんなそうだ! こどものじゅんすいなちてきこうきしんにみずをさしやがって!」 「むずかしいことばをつかってもだーめ。おとなしくしてなさい」 「くしょー! こうなったらちからずくでみきせんせーのおぱんつをみてやるじょー!」 「イヤーン! たかし君のエッチ!」 抉り取るような弧を描き、岩石のごとく硬く握り締められた美樹の左手は、寸分の狂いなく肝臓に突き刺さった。衝撃と呼ぶのも生易しいほどの強烈な不快感が、高志の体を襲う。外部から与えられたそれは、まるで突き抜けるかのように高志の内部からダメージを与える。抗えぬ嘔吐感に、たまらず体をくの字に折った。 「スケッチ!」 顔面が下るとき、待っていたと言わんばかりの膝蹴りがアゴに叩きつけられる。カカトが尻に付くほど折り曲げられた脚は、衝撃を与える面積を絞り、力を逃すことなく与えることができる。開いた口は無理やりに閉じられ、奥歯がお互いを砕きあう。舌を噛み切らなかったのは、運が良いとしか言いようがない。 「ワンタッ……」 今にも白目をむかんとしていた高志が最後に見たのは、散大した美樹の瞳と、大きく振り上げられた右腕だった。暗くも鋭い輝きを放つ眼は、裂けんとばかりに笑みを浮かべた真っ赤な口とあいまって、逃げられぬガゼルに飛び掛る直前の肉食獣を連想させ、 「チ!」 その直後、後頭部に振り下ろされた鉄槌により、高志の意識は消し飛んだ。よってその後、頭が地面にたどり着き、鼻の曲がる音を響かせたことを彼が知るのは、45分後意識を取り戻した後のことになる。しかし、無意識のなせる業だろうか。高志はこの段に至ってなお、呻きとも呼吸とも取れぬほどではあるが、明確な意思を持った発言をしたのである。 「せんせーのパンチーみずたまもよう~……」 「あーん、もう! たかし君キライ!」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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