カテゴリ:きみに願いを。(詩)
指輪よりも、携帯のアドレスを教えて欲しかったな。
そんなセンチなことが頭をよぎりました。びっくりです。 送ってあげる。と言う冬至を断わって、ひとりふらふらと歩きます。 夜の街の喧騒が耳に遠く聞こえます。 ぼんやりしていますね。 通り過ぎるコンビニの明るい照明がまぶしいです。 はあ。とため息をつきました。 無意識におなかのあたりを触っていました。 お昼から何も食べていませんが、何か食べたい・・こともないのです。 なんだろう、この感じは・・。 <性欲が満たされないから食欲に走るんだ、お前は。> 担任の声を思い出して。はっとしました・・。 しばらくはまっすぐ歩けませんでした・・。 「ぼっちゃん。なんでした?さっき電話くれたでしょ。」 「・・・おまえ。どこにいるんだ!」 冬至がかけなおした立秋の携帯番号に、くぐもった男の声がしました。 「だれ?あんた。ぼっちゃんじゃないの。」 「俺は真夏の担任だ!」 ぷち。 「あ!きりやがった。」 「・・・生徒の携帯に黙って出るからですよ。しかしドアを開けないなあー。」 「おい学年2番。本当にここが・あの猫目の住むマンションか?」 「どうしてですか?」 「人の声どころか。住んでる気配もないぞ?」 ぴんぽーん。 ぴんぽーん。 「違うかも知れませんね?」 「じゃあどこだ!」 「知っていたら最初から案内していますよ。将軍また引越ししたのかな。」 マンションのドアは開く気配がありません。 「・・もういい。送ってやるから。乗れ。」 「先生のことを信じたいところですが・・変なことだけはしないでください。」 「絶対・しません。」 夜の街は昼間とは違う顔です。 しかも。 「どこだっけ・・。」 よく知らない街なら、なおさらです。 「だから携帯の・・・。」 知っていたらかけましたか。 真夏は家に帰ることよりも、なによりも、・・心細くてなりませんでした。 今もし携帯に冬至から連絡が入ったらどうしますか。 なんでしょうか。この置き去られるような気持ちは。 忘れられたら、嫌なのです。 なのに、今一緒にいないのです。 真夏は<不安>を初めて知りました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/04/18 02:43:33 PM
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