カテゴリ:きみに願いを。(詩)
バイトは明日から開始になりました。
時給は市内では高めの設定で。助かります。 恭は、部屋で雑誌の整理をしながら思い出します。 夏至 というひと。 左の耳につけたピアスが、多分 恭の好きなブランドのものなのです。 少し高くて、それに取り扱っている店舗が近くに無くて、欲しくても集めにくいブランドです。 話があうひとかもしれない。なんだかバイトが楽しみになりました。 しかし自分より年下なのに・・あのピアス・・。 あのバイトは儲かるんだなあ・・。 大学から帰ると、冷蔵庫に入れてあったコーヒーを飲んで。 さっそくバイトに出かけます。 指定の時間より早くつきそうなので、本屋に寄り道します。 情報誌が平積みになっています。 1冊手にとって、ぱらぱらめくっていると。 「あ。こんにちは。」 声がしました。 「今日からですよね?」 夏至です。 昨日は茶髪の子・・左耳にピアス・・しか見ていませんでしたが。 やわらかそうな生地のモスグリーンとアイボリーのチェックのシャツを着て。 ゆるめのジーンズを腰ではいて。 グレーとワインの色の入ったスニーカー。 「どうか・・しました?」 上から下まで、見てしまいました・・。 それは不審がられますね。 「その服って。」 「これ?古着ですよ。俺、古着がすきなんです。」 にこっと笑います。 「古着って。高いでしょ?」 「そーでもないですよ?俺から見たら恭さんのそのシャツ。 好きなんですよ、そのブランド。なかなか手に入らないでしょ?」 「あ。わかる?」 なんだか、ほめられたみたいで嬉しくなりました。 「俺・ネットオークションでも探してるくらいですもん。なかなかでませんけどねー。」 「オークションやってるの?」 「たまに掘り出し物が出ますよ。見るだけでも面白いですよ。」 嬉しいです。服をほめられると。 それに、やっぱり話が合いそうで。 「あ。そろそろ行きましょう。初日から遅刻はまずいですよ。」 さりげなく腕の時計を見ました。 それは・・結構お高いものでは・・? 「ねえ。夏至くんて学生?」 「俺は専門学校生ですよ。」 「へえ・・。」 学生しながらのバイトで、いろいろ買えたりするんだ。 て・ことはお金持ちの家の子・・? だよなー。きっと。と庶民の恭は遠い目をしました。 自分はバイトしないと欲しいものが手に入らないけど、 多分この子は おこずかい でも買えるんだよな。 「春田さん。俺の名前覚えてくれたんですか。」 急に声をかけられて驚きました。 「あ。・・珍しい名前だし。」 「ありがとう。なんか・嬉しいです。」 並んで歩くと気がひけるくらいの子・・。 自分とは背丈は変わらなくても。 爽やかな笑顔に・すらりと細い体。腰パンだからよく判別しがたいけど この背なら足も長いでしょう。 すたすた と歩いて。風を切って。 陽の光に髪の毛が透けて・きらきらと輝きます。 思わず、横目で追いかけてしまいます。 「あー俺。早いです?」 いきなり立ち止まらなくても。 「いや?」 びっくりして手を振ります。 「・・そうですか?まあ・すぐそこだし。ゆっくり行きましょうか。」 ・・本当は少し息があがりました。 ついていくのがきつくて。 でもすたすた 歩く夏至がかっこよくて・・。 ついていきたかったのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/04/29 04:51:39 PM
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