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ヒロガルセカイ。

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柊リンゴ

柊リンゴ

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2006/04/29
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バイトは明日から開始になりました。
時給は市内では高めの設定で。助かります。
恭は、部屋で雑誌の整理をしながら思い出します。

夏至 というひと。
左の耳につけたピアスが、多分 
恭の好きなブランドのものなのです。
少し高くて、それに取り扱っている店舗が近くに無くて、欲しくても集めにくいブランドです。

話があうひとかもしれない。なんだかバイトが楽しみになりました。
しかし自分より年下なのに・・あのピアス・・。
あのバイトは儲かるんだなあ・・。


大学から帰ると、冷蔵庫に入れてあったコーヒーを飲んで。
さっそくバイトに出かけます。
指定の時間より早くつきそうなので、本屋に寄り道します。
情報誌が平積みになっています。
1冊手にとって、ぱらぱらめくっていると。
「あ。こんにちは。」
声がしました。
「今日からですよね?」
夏至です。
昨日は茶髪の子・・左耳にピアス・・しか見ていませんでしたが。
やわらかそうな生地のモスグリーンとアイボリーのチェックのシャツを着て。
ゆるめのジーンズを腰ではいて。
グレーとワインの色の入ったスニーカー。
「どうか・・しました?」
上から下まで、見てしまいました・・。
それは不審がられますね。
「その服って。」
「これ?古着ですよ。俺、古着がすきなんです。」
にこっと笑います。
「古着って。高いでしょ?」
「そーでもないですよ?俺から見たら恭さんのそのシャツ。
好きなんですよ、そのブランド。なかなか手に入らないでしょ?」
「あ。わかる?」
なんだか、ほめられたみたいで嬉しくなりました。
「俺・ネットオークションでも探してるくらいですもん。なかなかでませんけどねー。」
「オークションやってるの?」
「たまに掘り出し物が出ますよ。見るだけでも面白いですよ。」
嬉しいです。服をほめられると。
それに、やっぱり話が合いそうで。
「あ。そろそろ行きましょう。初日から遅刻はまずいですよ。」
さりげなく腕の時計を見ました。
それは・・結構お高いものでは・・?

「ねえ。夏至くんて学生?」
「俺は専門学校生ですよ。」
「へえ・・。」
学生しながらのバイトで、いろいろ買えたりするんだ。
て・ことはお金持ちの家の子・・?
だよなー。きっと。と庶民の恭は遠い目をしました。
自分はバイトしないと欲しいものが手に入らないけど、
多分この子は おこずかい でも買えるんだよな。
「春田さん。俺の名前覚えてくれたんですか。」
急に声をかけられて驚きました。
「あ。・・珍しい名前だし。」
「ありがとう。なんか・嬉しいです。」
並んで歩くと気がひけるくらいの子・・。
自分とは背丈は変わらなくても。
爽やかな笑顔に・すらりと細い体。腰パンだからよく判別しがたいけど
この背なら足も長いでしょう。
すたすた と歩いて。風を切って。
陽の光に髪の毛が透けて・きらきらと輝きます。
思わず、横目で追いかけてしまいます。

「あー俺。早いです?」
いきなり立ち止まらなくても。
「いや?」
びっくりして手を振ります。
「・・そうですか?まあ・すぐそこだし。ゆっくり行きましょうか。」
・・本当は少し息があがりました。
ついていくのがきつくて。
でもすたすた 歩く夏至がかっこよくて・・。

ついていきたかったのです。







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Last updated  2006/04/29 04:51:39 PM



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