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ヒロガルセカイ。

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柊リンゴ

柊リンゴ

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2016/06/11
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お弁当に唐揚げが5つも入っているのを喜んだのはいつだっただろう。

僕ひとりではとても食べきれない量を、
母さんが早起きして友人と取り分けするように作っていてくれるのだ。
だけど、今、僕はひとりでお弁当を食べている。
教室の中は楽しそうな笑い声や時折興奮したのか机を叩く音で騒がしいけれど、
僕には関係の無い事だ。

窓の外の風に揺れる小枝が心を落ち着かせ、和ませてくれる。
新緑の青・と聞く。
しかしあれは瑞々しい緑だ。
生命力に満ちた色だ。
そしてそれを支える色は大地のそれだ。
それらは決してものを語らない。
ただそこに日々成長しながら毎日存在している。

ものを言わずただ存在する、それが肯定されるのは羨ましく思う。
人間は何か会話をしていないと数10時間で自分を見失うと聞いたことがある。
だったら、この学校にいる間のせいぜい9時間ばかりは誰と話さずとも過ごせるはずだ。


「立葵壬(たちあおいじん)、おまえのお弁当、今日も豪華だねえ」

自分のお弁当を食べ終わった級友が数人覗き込んできた。
語尾が上がっている、明らかに僕を馬鹿にしているのだ。

「そんなに食べると太るぜ―?」
「馬鹿言え。折角お母さんが作ってくれたんだろ。残さず食えよ」
「あ、知ってる? こいつ自転車通学なのに帰りはそれをひきずってかえるんだぜ。
カロリー消費かな?」
「あははは。親におかずを減らしてと言えない理由があるからかな―?壬?」

とんだ嫌がらせだ。
腹立たしいが相手にしたくない。
こんな奴らと同じ土俵に上がるなんて真っ平だ。
自分のレベルが下がるような真似はしたくない、当然だ。

「唐揚げが好きなんだから構うなよ」
そう言い返しながら、正直なところ胸やけは隠せない。
残せば母さんが不審がる、何よりも余計な心配をさせたくない。
握る箸が震えそうだ、しかしこんな奴らに僕の思いを感づかれるのは嫌だ。


「一緒に食べようぜ―とかいえないもんな、おまえ」
「もしかして誘われるのを待っているとか? 
それじゃあいつまでたっても友達ができないぞ」
「豪華なお弁当が勿体ないな」

こんな人の心を突くような奴らと一緒にご飯を食べたくないだけだ。
無理して振る舞うより、ひとりのほうが楽じゃないか。
そう言いたい。
しかし自分でも矛盾に気付いてはいる。

9時間。
それは長い時間だ。
毎日、僕は耐え忍んでいる。
それこそ馬鹿げたことではないか?
だが今更へつらうのはどうなのか、僕の主義に反する。



「そんな細い体で食べきれないでしょ。唐揚げを2つちょうだい」
穏やかな声と裏腹に、ガンと机の脚を蹴る音がした。
乱暴な行動に思わず大事なお弁当箱を持ち上げて振動から回避する。

「なんだよ、いきなり」
我ながら薄い返しだとは思う。
しかし全然会話をしたことのない相手を前にして、気の利いた台詞は出てこない。

「俺、お昼ジャムパンだったから半日もちそうにないんだよね」
「ジャムパンて」
驚いて聞き返すと「ときどき食べたくなるんだ」
たわいもない返事だろうが、僕には爽やかな風のように、
そう、揺れる青葉を連想させるような声だ。

彼は耳たぶに少しかかるフェミニンストレートの髪。
軽めのレイヤーでトップスからパーマをかけて流れるラインを作り、
カラーも抑えめのブリーチから茶・ダークブラウンを入れた校則違反が疑わしい風貌。
髪型のせいか顎が尖って見えて目鼻立ちが目を惹く。

「盗み聞きしたわけじゃないけどさ」
「なにが」
「聞こえたし」
彼は椅子をがたがたとひきずって腰かける。
何が聞こえたというのか。
まさか先刻の嫌がらせか? 同情してここに来たのか?
そんなものは遠慮したい。
僕はそこまで弱くない、9時間だんまりを決め込める強さがあると僕は自分に言い聞かせる。
矛盾だらけだが。


「ひとりで食べたり自転車ひきずるよりいいでしょ。ま、借りは返すからさ」
机に肩肘をついて僕に目線を合わすその級友、名前は知っている。
翌檜楓秩(あすなろりつ)。

やはり聞こえていたのか、1番嫌なことを。

「俺は見返りを要求しない性質だけど、立葵には礼をしたほうがいいかなと。
漠然とだけどそう思う。だってそのほうが気楽でしょ」

確かにそうかもしれない。
お礼はいらないが、見返りこそ必要ないが、ギブアンドテイクのほうが僕には都合がいい。
後腐れが無いからだ。

「当たっちゃったか」

翌檜がまじまじと僕の顔を覗き込んだ。

「言い過ぎていたらごめん」
「そ、そんなことはないよ。僕は、その……。唐揚げを食べてもらえたらいいんだ」

日陰者だった僕を前からそうだと知っている感じがした。
そして僕は、彼に救われるかもしれないという漠然とした期待を持った。








●Tシャツって消耗品だなあ●

Tシャツをネットでまとめ買いしまして、一息つきました
やはり痛むのが早いと思うので、気になったものをガンガンカートに入れまして
なんとかこの夏もお気に入りのTシャツで過ごせそうです
でもまだ豊天商店さんの、欲しいな

あ、こそこそBL始めました
実は最初にUPしたときは散文詩になっていたのですが改定し続けて
多分、まだ直します
久しぶりでピントがずれてる

あまり過激にならないようにしたいと思ったり





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Last updated  2016/07/01 10:51:37 PM
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