ホテルのフロントバックにて
ホテルのフロントバックって何ぞや??とお思いになる方も多いと思うが、私が販売促進として勤めていたホテルでは、フロントデスクの裏側のことをそう言った。つまり予約の電話を受けたり、客室の割り振りをしたり、色々な作業をする場所だ。私の勤めていたホテルは、客室はシティホテル並みだったが、大抵のお客様はビジネスでお越しになる方だった。それは丁度京都のヘソと呼ばれる場所に位置し、世界的に有名な会社が徒歩10分くらいの範囲に数社あったからだ、だから比較的小さいホテルではあったが、常に客室の回転率は70%を保っていた。またそれくらいないとやって行けなかった。ホテルには一般の方が想像もつかないお客様がお泊まりになる。勿論京都でしかも撮影所からそう遠くない位置だったので、俳優さんや女優さんも沢山宿泊される。が、一番困るのは、ガラのよくない方々。でも予約の段階ではなかなか判断がつかないので、結構フロントスタッフは体を張っている所がある。ルールを守って頂けない時や料金のお支払いがスムーズでない時は、日ごろ温和な彼等も毅然としているので、感心する事が多々あった。ある時、ホテルでそういうお客様のトラブルがあった。なので、フロントスタッフの間では、宿泊予約を受ける段階で少し注意をする事になっていたらしい。勿論繁忙の時間帯には私も宿泊予約を取ることがあったので、その内容は知っていた。確かあれは今位の時期だった。京都のホテルとしてはあまり忙しい時期ではない。フロントバックには、最近入社した支配人代行とフロントの部署についたばかりの若い女子のスタッフと私と経理の女性の4人だった。昼さがり、チェックインの時間帯前、ホテルとしては一番のんびりしている時、一本の電話が入ってきた。その電話を新人の女子スタッフが取った。「お電話有難うございます、○○ホテルでございます」 ・・・ といきなり『あ゛っ~、二月○日空いてるやろっ』・・・・その女子スタッフの顔が強張った・・。「少々お待ちください・・」「え゛っ~どうしましょ~っ変な人から電話なんです~やくざみたいな口ぶりなんです~」私と支配人代行の目があった・・・支配人代行は・・「そっか、この間のこともあるからな、満室って断ったらいいから・・・」「大変長らくお待たせ致しました、二月○日はあいにく満室になっておりまして、お部屋をお取りできません・・・」『そんなわけないやろっ、ほんまにないんかっ!』「はいっ、申しわけございません。お取りできません。」新人女子スタッフはきっばりお断りした。一時間後、副支配人あてに副社長から電話が入った。副社長は実質このホテルのオーナーだった。『あのなぁ~さっき二月○日に客室空いてるか聞いたら満室って言われたんやけど、そんな日満室な訳ないやろっ』「はいっすぐにお調べします・・・お取りできますが・・・」副支配人が新人女子スタッフと支配人代行を呼んで事情を聞いた。実はこの二人はまだ副社長の声を知らなかったのだ。副社長はその筋の人と間違えられたのだった・・・。まあ実際間違われても仕方ないで・・・とフロントバックでは暫くその話題で花が咲いた\(≧∇≦)J。