テーマ:最近観た映画。(38861)
カテゴリ:映画
「ホイットニー 〜オールウェイズ・ラヴ・ユー〜」(原題:Whitney)は、2018年公開のイギリス・アメリカ合作のドキュメンタリー映画です。圧倒的な歌唱力で音楽シーンをリードし、スーパーボールでアメリカ国歌斉唱の歴史を変え、映画「ボディガード」の主演とサウンドトラックで世界的な大成功を収め、南アフリカでアパルトヘイト廃止後初の大規模コンサート行うなど、歌手として頂点を極めながらも、夫ボビー・ブラウンとの結婚を境に薬物問題や家庭問題などのゴシップにまみれる波乱の人生を辿り、2012年に48歳の若さで亡くなったホイットニー・ヒューストンを、ケヴィン・マクドナルド監督が様々な視点から描き出しています。第61回グラミー賞音楽映画賞にノミネートされた作品です。
「ホイットニー 〜オールウェイズ・ラヴ・ユー〜」のDVD(楽天市場) 【スタッフ・キャスト】 監督:ケヴィン・マクドナルド 脚本:ケヴィン・マクドナルド 出演:ホイットニー・ヒューストン ボビー・ブラウン(ホイットニーの元夫) ボビー・クリスティーナ・ブラウン(ホイットニーの娘) シシー・ヒューストン(ホイットニーの母) ジョン・ヒューストン(ホイットニーの父) ゲイリー・ヒューストン(ホイットニーの兄) エレン・ホワイト(クリスティーナの育ての親) メアリー・ジョーンズ(ホイットニーの個人アシスタント) パット・ヒューストン(ゲイリーの妻、ホイットニー財団の遺産管理人) クライヴ・ディヴィス(ホイットニーを発掘、育てたアリスタ・レコードの社長) ケヴィン・コスナー(「ボディーガード」でホイットニーと共演した俳優) ケネス・“ベイビーフェイス”・エドモンズ(歌手、作曲家、プロデューサー) ほか 【あらすじ】 モデルとしてキャリアをスタート、スタジオ・セッション・シンガーとして頭角を現したホイットニー・ヒューストンは、1985年に歌手デビューします。7枚連続でシングルが全米1位となった唯一のアーティストであるホイットニー・ヒューストンは、類いまれな歌唱力で音楽シーンをリードし、スーパーボールで歴史に残るアメリカ国歌斉唱を行い、映画「ボディガード」の主演とサウンドトラックで世界的な大成功を収め、南アフリカでアパルトヘイト廃止後初の大規模コンサート行うなど、大歌手として頂点を極めます。しかし、夫ボビー・ブラウンとの結婚を境に薬物や家庭問題などのゴシップにまみれ、順風満帆のはずだったキャリアと私生活の歯車が次第に狂っていきます・・・。 【レビュー・解説】 圧倒的な歌唱力で音楽シーンの頂点に上り詰め、大きな社会的影響を生みながらも、ドラッグにまみれ、無念の死を遂げたホイットニー・ヒューストンの真実にケヴィン・マクドナルド監督が迫る、充実のドキュメンタリーです。 圧倒的な歌唱力で上り詰めるも無念の死を遂げた大歌手のドキュメンタリー 頂点に上り詰める前半、暗転する後半 ホイットニー・ヒューストンは自分の曲を書くこともなく、歌唱力だけで勝負しました。7曲連続で全米シングルチャート1位の記録を記録するなど、圧倒的な歌唱力で音楽シーンをリードするだけではなく、
時代の最先端を颯爽と走ったホイットニー 1980年代から90年代のアメリカは、
成功が破綻の契機になる皮肉 映画「はじまりのうた」(2013年)で芸術の同じ分野で一緒に働くカップルに焦点を当て、一方だけが成功したら何が起きるのか、成功が信頼関係をどう揺るがすのかを描いたジョン・カーニー監督は、自らもミュージシャンとしてそのようなカップルを数多く見てきたと言います。本作で描かれているホイットニーと夫ボビーの関係が破綻する契機も、ホイットニー主演の映画「ボディガード」(1992年)とそのサウンドトラックの世界的な大成功でした。これが、ボビーが決して追いつけないほどの格をホイットニーに与えてしまい、二人の関係が破綻し始めます。一人娘のクリスティーナが生まれた頃からボビーの浮気やDVが始まり、二人はドラッグに溺れ、共依存の関係に落ちていきます。 ホイットニーを追い詰めた要因に迫る 夫ボビーと釣り合いの取れないホイットニーの大きな成功が、彼女が辿った悲劇の契機であることに間違いはなく、ケヴィン・マクドナルド監督もその点はしっかりと押さえています。しかし、アーティストのカップルのどちらか一方が成功すれば、ドラッグにまみれて無念の死を迎えることになるかと言えば、必ずしもそうではありません。人間の成否や生死というのは、それほど単純ではないでしょう。ケヴィン・マクドナルド監督は、75人、1人最多3回にも及ぶインタビューと、膨大な記録映像から精選されたカットで本作を構成しながら、ホイットニーと彼女を取り巻く環境を様々な視点からあぶり出しています。それは観る者に、
落ちた偶像の末路 こうして見てくると、類いまれな歌唱力で音楽シーンをリードするだけではなく、社会的にポジティブなインパクトまでもたらした彼女が、いざ、ドラッグでつまずくと、周囲の理解も支援を全く得られないという、寒々とした現実が浮かび上がってきます。アフリカ系アメリカ人特有のソウルではなく、白人に好まれるポップスを歌うホイットニーを、一部の人がホワイトニー(白い)と皮肉るなど、実は当初から反発の兆候はあったのかもしれません。人種問題など、1980年代から90年代のアメリカが抱えた様々な問題を一挙にクリアしたように見えた彼女ですが、それは時代の人々が見たかった夢に過ぎず、化けの皮が剥がれ、単なるジャンキーに成り下がった彼女に誰も目もくれませんでした。何故なら、ジャンキーになった彼女は人々が見たいものではなかったからに他なりません。エンタメ要素、ゴシップ要素を併せ持つ本作ですが、こうした社会性を感じさせるあたり、アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞した「ブラック・セプテンバー〜ミュンヘン・テロ事件の真実〜」(1999年)などのドキュメンタリー映画や、「ラストキング・オブ・スコットランド」(2006年)などの社会派ドラマを数多く手掛けるケヴィン・マクドナルド監督ならではの手腕と言えます。 余談:アメリカ国歌斉唱ベスト5 ホイットニー・ヒューストンの歌唱力は素晴らしく、特にポップス・ファンでもない私でも「ザ・グレイテスト・ヒッツ」(2000年)や「アルティメイト・ホイットニー」(2008年)などのベストアルバムを持っているほどですが、そんな私を何よりも強く印象づけたのは YouTube で見た1991年のスーパーボウルでのアメリカ国歌斉唱です。フットボールやバスケットボールなど、アメリカではショーアップされた開会式でビッグアーティストがアメリカ国歌を斉唱する機会が多く、時にアメリカ空軍機による編隊飛行などの演出も加わるなど、とても見応えがあります。私はそんなアメリカ国歌斉唱のちょっとしたマニア(?)なのですが、本作にも挿入されているホイットニーのアメリカ国歌斉唱は間違いなく歴代トップで、30年近く経った今も彼女を超えるアメリカ国歌斉唱がありません。そこで、この機会を捉えて私の独断と偏見で歴代のアメリカ国歌斉唱は歴代ベスト5を挙げてみました。なお、リンク先はいずれもYouTubeです。
【付録:ホイットニー・ヒューストンの年表】
【撮影地(YouTube)】
「ホイットニー 〜オールウェイズ・ラヴ・ユー〜」のDVD(楽天市場) 【関連作品】 ケヴィン・マクドナルド監督作品のDVD(楽天市場) 「運命を分けたザイル」(2003年) 「ラストキング・オブ・スコットランド」(2006年) 「消されたヘッドライン」(2009年) 「LIFE IN A DAY 地球上のある一日の物語」(2011年) 「ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・レジェンド」(2012年) 「ブラック・シー」(2014年) ホイットニー・ヒューストン出演作品のDVD(楽天市場) 「ボディガード」(1992年) 「ため息つかせて」(1995年) 「天使の贈り物」(1995年) 「ホイットニー・ヒューストン/スパークル」(2012年) 「ホイットニー:本当の自分でいさせて」(2017年) ホイットニー・ヒューストンの主なアルバム(楽天市場) 「そよ風の贈りもの」(1985年) 「ホイットニーII〜すてきなSomebody」(1987年) 「アイム・ユア・ベイビー・トゥナイト」(1990年) 「ボディガード」オリジナル・サウンドトラック(1992年) 「ため息つかせて」オリジナル・サウンドトラック(1995年) 「天使の贈り物」オリジナル・サウンドトラック(1996年) 「マイ・ラヴ・イズ・ユア・ラヴ」(1998年) 「ザ・グレイテスト・ヒッツ」(2000年) 「Love, Whitney~ラヴ・ソング・コレクション~」(2001年) 「ジャスト・ホイットニー」(2002年) 「ワン・ウィッシュ:ジ・ホリデイ・アルバム」(2003年) 「アルティメイト・ホイットニー」(2008年):コンピレーション・アルバム 「アイ・ルック・トゥ・ユー」(2009年) ドラッグやアルコールが原因で夭逝したミュージシャンの映画のDVD(楽天市場) 「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」(2009年) 「AMY エイミー」(2015年) 「ブルーに生まれついて」(2015年) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019年12月13日 05時00分07秒
コメント(0) | コメントを書く
[映画] カテゴリの最新記事
|
|