私はパンツ
私は地味なパンツだ。周りには華やかな色合いのレースがいっぱいのパンツが並んでいた。そんな中、ただのピンク、しかもお腹までゆったりサイズの私は、なかなか女の子達の目に留まらない。可愛いとか綺麗とか、何か取り柄があれば、もっとモテたのかな…。世の中、可愛いもの勝ちよね…。売れ残りの悲しい私。今日も、向かいの列の可愛い白いレースの若いパンツが選ばれて行った。「やっぱり、清楚で可愛くなくっちゃね!」そのレースのパンツが羨ましくなった。その後は、斜向かいのバリバリの機能下着が。「やっぱり、特技があると得よね!」素敵な取り柄があって羨ましい。私には、鮮やかな色も、華やかなレースも、これといった特技も何もない…誰がこんな私を選んでくれるのかしら…。落ち込むけど、仕方ない。容姿も普通かそれ以下、華やかさ皆無、若さも無いし、何かアピール出来るような物は持っていないんだもの。世の中に、私みたいなパンツを選んでくれる人は居るのかしら?赤い糸で結ばれた相手なんて居るのかしら?そんなある日、優しそうな30代くらいのワンピースを着た女の人が通路に入ってきた。いつもなら、高めの機能下着やレースの華やかなタイプを選ぶ人が多い客層の女性。私はまた選ばれる事はないわと眺めていたら、突然手に取られた。「これだわ!」私はびっくりした。「縫い目が真ん中に無くて、レースが少なくて、お腹を包んでくれる。肌触りもやわらかくて履きやすそう。私の理想のパンツ!」私が理想ですって!?今までにそんな事を言われた事なんて一度も無くて驚いた。「なかなかこんな綺麗なピンクで、こういうデザインのパンツは無いのよねぇ。最近は短い丈の物やレースのパンツが多いから。帝王切開の傷も痛むし、肌も敏感になってるから、こういうのを探していたのよね~。」呟く彼女をサポートしようと私は決めた。私にも、赤い糸で結ばれた運命の人が居たんだわ。お腹を優しく包み込んで、あなたを守る。ずっと仲良くしてね。私を必要としてくれる人が、世界に居たことを感謝した。見下ろすと、可愛い赤ちゃんが、私を見上げて笑ってくれていた。人生って、分からないものね。【ワコール】パンツが語る、パンツ小説『私はパンツ』大募集! #パンツの日 ←参加中モニプラさんの企画に乗って、書いてみました。アラサーの女性になぞらえてみたんですが、ちょっと投影しすぎかもですかね(笑)。パンツ人生色々ってことで。