【闇の列車、光の旅】 2009年 よりよい暮らしを求めた移民一家に起こる悲劇と、ギャングとして生きるしかない貧困国の闇
ホンジュラスとメキシコ。その歴史をほとんどしらない。wikiによると、メキシコはスペイン植民地時代からスペイン語が公用語となり、革命、独立、戦争が繰り返されてきた国。(なのね)気立てが熱くてノーてんきな国メキシコ・・・・とばかり思っていたけれど、まったく違っていて荒みぶりに驚いた。不法移民やギャング団が蔓延る過酷な物語は、切なくてやるせなかった。 (あらすじ) ホンジュラスに暮らす少女サイラは、アメリカに渡った不法移民の父を持つ。ある日、その父親が強制送還され戻ってきて、今度はサイラと共に再びアメリカを目指すことになる。メキシコからアメリカ行きの貨物列車の屋根に乗り込み、父と叔父とサイラは命懸けの移動を開始する。ちょうどその頃、リルマゴ率いるメキシコのギャング団は、無防備な移民たちを待ち構え、強盗を繰り返していたのだった―――。ギャング団や鉄道警備員に怯えながら、一路アメリカを目指す移民たちの怖れていたことが、やがて現実となる。列車が停車した隙に、ギャング団が襲ってきたのだ。極悪非道のリマルゴは移民たちから金品を奪い、つぎにサイラを見つけて手込めにしようとする、、。そこに助けに入ったのは、リマルゴと行動をともにしていたギャングのカスペル。彼はリマルゴに愛する恋人を殺されたばかりで、恋人とサイラを重ねて憎しみからリマルゴを殺めてしまう・・・・・。一転して、組織から追われる身となったカスペルは、移民たちに交じった列車での逃避行となる―――。自分を助けてくれたカスペルを気にかけるサイラ。サイラによって助けられながら旅を続けるカスペル。移民たちは元ギャングを憎み、サイラの父も関わることを禁ずるのだが、若いふたりの間は急速に近まり、心通わせていく。人のいい彼に、いつの間にか好感持って助かってほしいと願っていたのに・・・・安っぽい映画のようには、そううまく行くはずがないのだった。アメリカに新天地を夢見ても、執拗なギャング一味の魔の手は、ものずごい早さでカスペルを追い詰める。サイラに迷惑を掛けまいと、こっそり列車を下りたカスペルを、サイラはひとり覚悟を決めて追いかけ、ふたりで逃げる未来を選んでしまう。彼らに待ち受ける結末は、もうわかりきっている。束の間、手をとりあって生きた若い男女の姿に、やるせなさと希望を同時に抱く。希望を捨てないこと。過酷な国に生きるには、強くなくちゃダメだ。ゆるい日本に生きていると、そのひた向きな強さが驚異的なくらい眩しく映る。サイラの未来に一筋の光が差す、電話ボックスのラストシーンがすごくよかった。 監督・脚本 ケイリー・ジョージ・フクナガ 製作 エイミー・カウフマン 音楽 マルセロ・サルボス 出演 エドガル・フローレス パウリナ・ガイタン クリスティアン・フェレール (カラー/96min/メキシコ=アメリカ/SIN NOMBRE)