カテゴリ:短歌
伊藤一彦『微笑の空』から、私の注目した歌にコメント。(最初の三首は「短歌へのいざない2」から,後の四首は「話題の短歌」から。) この人はスクールカウンセラーで、介護老人保健施設などで短歌指導のボランティアもしているそうである。心のひだに触れるのがけっこう上手いのかもしれない。 見よ見よと手足動かす三千グラム 言はれなくともわれらは見るを新生児の動きがとても可愛らしく想像される。「もっと見て、もっと見て、もっといっぱい見て……」と、あらんかぎりの力で求めているかのよう。 顔しかめ時に翁のかほをするこれのいのちはどこより来たる赤ん坊は無垢な白紙のようである一方で、不思議といろいろなものを携えているかのよう。転生ってあるんだろうか?と思いたくもなる。 生れきて息してゐるをそこに生物として存在しているというだけで、すでに約一年(280日だが)の生き歴史がある。新生児にもゼロではない存在感がある。 引きこもる若者多し閉ぢこもる老人多し 夜霧出で来ぬ「夜霧出で来ぬ」がいい。対象の単なる心の闇ではなく、見る側とすれば霧がかかって見えなくなっていく感じ。 家庭内殺人のニュース見る昔は、殺人に至るまでずっと恨みを抱えていたものだ。しかし最近の家庭内殺人は、なぜこんなに問題のなさそうな家庭でこんな事件が……と思わされる。必ずしも我慢がなくなったというのではなさそう。むしろ最近の日本人は、暗がりを抱えた存在としての他者を受け容れられない浅薄な精神になってしまったからだろうか。 夕ぐれといへど娘と狼を読みちがへたる老視いましむたしかに暗がりだと間違えそうな字だ。(笑) 二つの字の意味があまりにも違うところが面白い。 いつよりか男のすなるごみ出しをわれも励めり当然として土佐日記の冒頭部の「男もすなる日記といふものを……」を連想させて面白い。「すなる」は、サ変の終止形「す」+伝聞推定の助動詞「なり」の連体形である。伝聞推定で、いつのまにやら男の当然の仕事になってしまった。(^^; 《『NHK短歌』のホームページ》 人気blogランキング ↑この記事が面白かった方、またはこのブログを応援してくれる方は、是非こちらをクリックしてください。 「p(^o^) 和の空間」の Window Shopping |
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