伝われ、愛
昨日から、急に暑さが和らいで、ようやく身体が楽になって来たけど、今年の酷暑は凄かった。毎日午前中から30度を超えてるし、夜でさえも生ぬるい空気が身体を包むような感覚で、早く涼しくなってぇ~って気分。7月の最後の週だったと思う。宵の時間に、自転車に乗ってドラッグストアに出かけた。オトメがいた頃は、この時間に通院していたんだっけ。・・・なんて考えながらペダルを踏み、あるお宅の横を通り過ぎようとした時、建物の脇から2匹の猫が出てきた。暗くて、模様はすぐには判らなかったけど。猫の横を通り過ぎた刹那、1匹の猫が鳴いた。「アギャァ」「・・・?」驚いて振り返ったら、並んでこちらを見ていた2匹が、路上に出てそのまま横断していく姿が見えた。そういえば、オトメを連れて本間獣医科医院に通院していた頃、待合室に5個ある里親募集のケージには、いつも猫さんが1匹ずつ入っていて、私は、そこで待つ間、ケージの中の猫さん達と話すのが習慣だった。里親募集の猫さんは、模様も性別も年齢もいろいろ。元気に動くコもいれば、大人しくじっと見つめるコもいる。新しく仲間入りしたと思ったら、すぐに里親さんのところに行ってしまうコは、たいていは仔猫。仔猫の人気は、そりゃ凄い。ケージに入ったその日から、待合室に来る飼い主さん達の注目を浴びるもんね。仔猫が仲間入りした日と、仔猫が里親さんのところに行った日は、残りの成猫さん達の元気が少しなくなる。そんな日は、いつもより沢山話しかけて励ますけど、やっぱり24時間ずっと広いお家で暮らしたいよねぇ。ある日、冬だったと思うんだけど、ケージに長く住んでいる猫さんに言ってみた。「ここはいつでも暖かいけど、外は凄く寒いよ。」猫さんが答えた。「外は寒いけど、家の中は良いんじゃないの?」会話はもちろん猫語である。さらに話し続けた。「ウチは外よりは良いけど、ここよりはずっと寒いの。」「え?あいつ(オトメ)、そんなところに住んでいるのか?」「そう。コタツはあるけどネ。」「ああ、そういうのはあるんだろうけど。」「夏は夏で、暑いのよ。」「それなら、此処にいても良いのかも。」「そう、そうかもネ。」この会話、冬だったのか夏だったのか、実は憶えていない。夏なら、「外は暑いよ。」って話し始めて、途中で猫さんが、「そういえば、あいつ(オトメ)は、冬はジャケットを着てくるよな?」なんて言っていたのかも知れない。後日、看護師さんから、「最近、里親募集の猫同士で 『外は暑かったり寒かったりするらしい』と会話しているみたい。」と聞いた。「一旦、里子のトライアルに行って戻ってくるコや、 外で暮らしてから来るコもいるので、判るのかな?」なんて、話していたんだけど、、、。自転車で通り過ぎた時に出てきた猫さん達は、本間獣医科医院から来たコだったのかな。「熱いっ!」って言いたかったのかも知れないけど、猫が精一杯しゃべったら、「熱いっ!」が「アギャァ」になったのかな。「そっちに走って行くんだったら、 ケージの仲間達に、外は物凄く熱いって、伝えてニャ」って、言ってくれたのかな。まさか、その日、お家に入れなくなって、助けてって言いに出て来ていたんじゃないよね?なんて、後になって心配になってしまい、その後、同じ場所を通る度に、少しスピードを落として気にしているけど、あの日以来、2度と姿をみかけない。ケージにいる猫さん達にメッセージを伝えたくて、あの熱い夜にわざわざ出てきてくれたのだろうか。だとしたら、暑い夏に、かなり爽やかな気分になったエピソードである。本日のSubjectは、30年以上前に出版された本の題からいただきました。中島みゆきさんのエッセイ集。発売されたと同時に、書店に並んでいるのを見に行ったけど、購入したのは、そこから1か月くらい後だった。奥付をみると、1984年2月29日五刷となっている。発売日が同年の2月5日だから、24日間で4回再刷したことになる。当時のフィーバーぶりが懐かしい一方で、私自身は、呑気に初刷を逃して、閏の日の刷を手にして喜んだことを思い出した。上部焼けや製本のほつれで、かなり傷んでいるものの、今でも私の本棚に、名だたる作家の小説と一緒に並んでいる大切な本である。