やはりカサブランカ
「カサブランカ」(1942) CASABLANCA監督 マイケル・カーティス製作 ハル・B・ウォリス原作 マーレイ・バーネット ジョアン・アリソン脚本 ジュリアス・J・エプスタイン フィリップ・G・エプスタイン、ハワード・コッチ撮影 アーサー・エディソン音楽 マックス・スタイナー出演 ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン ポール・ヘンリード、クロード・レインズ、コンラート・ファイト ピーター・ローレ、シドニー・グリーンストリート 本編103分 モノクロ スタンダードサイズ「ボギー!俺も男だ」(1972)を見たせいで、やはり「カサブランカ」を見たくなってしまいました。 アメリカでの公開は1942年(昭和17年)11月。日本では戦後の1946年6月です。「ボギー!俺も男だ」の原題は「PLAY IT AGAIN, SAM」です。 直訳すると「もう一度それをしてください、サム」「もう一度演奏してください、サム」で、カサブランカのリックの店に夫とともに現れたイルザ(イングリッド・バーグマン)がピアノ弾きのサムに言う台詞「Play it, Sam. Play 'As Time Goes By.」、「あれを弾いて、サム。“時の過ぎ行くまま”を」から来ています。 どんな曲か忘れましたととぼけるサムに、イルザは「こうよ」と言ってメロディを口ずさむ。 やむなくサムは演奏を始め、イルザに歌ってと言われて歌い始める。 店に入ってきたリック(ハンフリー・ボガート)が聴いて「その曲は弾くなといってあったはずだ!」と血相かえてつめよると、そこにイルザの姿を見て驚く。「久しぶりね、リック」と女は落ち着いたものだ。 その夜、リックは酒を飲みながら泣くんですね。 忘れようと思った、忘れたはずだと思った、その彼女が、いまになって俺の店に現れるなんて。 「世界中に星の数ほど酒場はあるというのに、なぜ俺の店に来たんだ」と。 ボスが心配で帰れないサムがいて、ピアノを静かに弾き始めると、それはなんだ?とリックが問う。 「あたしの即興でさ」というサムに、「あの曲をやれ!」と。「さっき彼女には弾いたではないか」You must remember this おぼえておいて A kissis still a kiss キスはキス A sigh is just a sigh ためいきはためいき The fundamental things apply もともとそれだけのこと As time goes by. 時がすぎても この「時の過ぎゆくまま」を聴いてリックは泣きます。彼女との思い出の歌を聴いて。 1941年のモロッコ カサブランカ。酒場を経営しているリックは、この街にもヨーロッパの戦火が浸食し始めているのを感じている。そんな時、彼の目の前に現れたのは、理由も知らせずに彼の元を去ったかつての恋人イルザだった。現在の夫と名乗る男とともに。 彼女が言うには、夫はナチスに追求されていて、夫が亡命するのを手助けして欲しいと。 この映画は女性には好まれないようで、その理由はこのイルザの図々しさだと思われます。 今さらのこのこ現れて、しかも助けてほしいだと。あまりにも虫のいい願いではないか、と。 でもリックは今でも彼女を愛している。忘れようと努力したけど、やはり忘れられない、愛している。 男性がこの映画を好むのは、主人公リックの愛の苦しみが理解できるからです。 彼女の夫が彼女を真剣に思って愛しているのを知って、リックは身を退く決心をし、2人を飛行機に乗せます。「私はあなたと残る」と言うイルザに、「彼には君が必要だ。いま行かないと君はきっと後悔するだろう。さあ行くんだ。君の瞳に乾杯」と。リックのやせ我慢なのですが、そのやせ我慢の格好良さに観客の男性は感動するのです。「男はつらいよ」で、寅さんの甥っ子満男(吉岡秀隆)が泉ちゃん(後藤久美子)に恋をします。どの話だったか忘れましたが、その「恋」を寅さんに相談します。「恋とは、その人を美しく思うことでしょう。僕は泉ちゃんが大好きだけど、頭の中で彼女を裸にしていやらしいことを想像してしまうんだ。そんな気持ちが恋といえるんだろうか?」と。 記憶だけで書いているので間違っているかもしれないけど、そんなふうに相談をするシーンがあったように思います。 こんな相談をするには寅さんはうってつけの人ですね。 寅さんは嬉しそうに甥っ子を見て、お前は正直な良いやつだなあ、と。「愛とは、その人が幸せになるのを願うこと」 「恋とは、その人を美しく思うこと」 映画は、このような大切なことを教えてくれます。