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カテゴリ:アメリカの文化・慣習
数ヶ月前、ある事情により再び引越しをする羽目になり、また新たな地域で再スタートしなければならないことになった。
幸い、今回は市内引越しということもあり、環境がガラリと極端に変わるということもないのだが、折角慣れ始めた地域での生活や親しみ始めた隣人たちとの別れは、何度経験しても心にポカンと穴が開いたような寂しい気持ちになるのである。 この10年の間、夫の転勤の都合などで何度も引越しを繰り返し、今回の引越しで8回目を数えるのだが、そんな引越しに慣れているはずの私も、新しい隣人たちとの付き合いや地域に馴染むことなどをふりだしに戻してまた全てを一から築き直さないといけないという点は未だに慣れず、次の新たなスタートがどんなものになるかなどと正直不安になることもあったりする。 今回も例に漏れず引っ越す前から、治安は勿論のこと、コミュニティの性格やご近所さんとの相性などもかなり気になっていたのだが、引越し早々、お隣さんたちが歓迎の挨拶に来てくれたお陰で、心の緊張も少し解けたと同時に、新しい地域での生活にもすぐに慣れそうな気がしてきたほどである。 ~アメリカでの引っ越し挨拶~ アメリカでは、日本のように手土産を持って引越しの挨拶回りをするといった習慣はなく、先住の人が新たに引っ越してきた人を訪れ、挨拶をしに来る場合が多い。 挨拶のパターンとしては、『Welcome to the neighborhood!(ようこそ!)』の決まり文句に始まり、自己紹介や家族紹介、またはコミュニティーの紹介をし、『If you need anything, please let me know.(もし何か必要でしたら、ご遠慮なくお知らせ下さいね。/もし何か私に出来ることがありましたら、何なりと仰って下さいね。)』という決まり文句で締めるというのが挙げられるが、この引越し挨拶によって、先住者は新しく引っ越してきた人がどんな人か確認をすることが出来るし、一方、新しく引っ越してきた者にとっては、自分の周囲の環境や近所に住んでいる人たちに関する情報を少しでも得ることが出来るという点もありと、両者にとってもメリットがあると思うのである。 中には、挨拶に訪れるついでに、クッキーやパイ、またはキャセロール料理(調理用兼サービング用の皿や鍋を使って焼いたオーブン料理。材料は、肉、魚、野菜、パスタやマカロニ、米や豆類、ハーブ類などから幾つかを組み合わせたもので、ソース(ホワイトソースやピザソース、またはキャンベルスープなど)やチーズなどを絡めて焼く。)を持ってくる人もいたり、housewarming gift(ハウスウォーミングギフト:贈り物の内容は、家で使える実用的な物から食品までと実に様々。バスケットに色々な物を入れて渡す人もいるのだとか、、、。)を持ってくる人もいるそうだが、私個人の経験の中でも特に印象に覚えている隣人からの挨拶は、バーベキューに招待されたことである。 初めは、互いに全くといってもいいほど知らない間柄なのに、よそ様のお宅に上がりこみ、その上食事まで頂くということにかなり躊躇してしまったのだが、何度も何度も誘う隣人にさすがに『ノー』とは言えずに、結局夫と二人揃ってバーベキューパーティーに参加したという経緯がある。 食卓に出された数々の料理の美味しさや隣人たちとの楽しい時間は今でも忘れられずにいるが、『引っ越し作業の最中、料理をするのも大変でしょう。遠慮せずにどんどん食べて下さいね。』という隣人たちの心遣いや『ようこそ!』と温かく歓迎してくれたことは本当に有難く感じたものである。 残念ながら、今はそういった引越しの挨拶習慣も廃れつつあるようで、わざわざ家を訪ねて挨拶をするという形ではなく、道端や庭先などで会った時に挨拶をするという形も珍しくなくなってきているという。 これも地域によるとは思うのだが、アメリカでも特に、人の出入りが激しい流動的な地域や都会などでは、隣人の顔も知らないというのが至って普通という具合だそうだ。 昔と比べても、隣人同士のつきあいや近隣同士の間における連帯意識が希薄になったこと、そして、世間がより物騒になったことなどが引越しの挨拶習慣が廃れてきている理由だとも言われているが、その理由も何となく納得出来るような気がするのである。 また、昔は特に女性と子どもたち同士がコミュニティ内での絆を培う役割を自然と担う形になっていたのが、今では多くの女性が外で働き始めたことによって、家庭が地域に依存する必要のないライフスタイルが築かれつつあることも、積極的な引越し挨拶の習慣に陰りが見えてきた理由の一つと指摘されていたりもする。 ~もし引越し挨拶をされたら、、、~ ・『Welcome to the neighborhood!』や『If you need anything, please let me know.』と言われて返答に困ったら、Thank you.とシンプルに答えるだけでもO.k. ・自己紹介をされたら、こちらからも自己紹介をした方がベター。 同居人がいる場合は、留守でその場に居ない家族のメンバーの紹介(名前だけでも可。)もした方が良い。 ・贈り物をもらったら、Thank you card(サンキューカード:お礼を述べたカード)を送ると良い。 引越し挨拶の場合には特に、お返しをするという習慣はないので、お返しをする必要はないと思うのだが、どうしてもお返しがしたい場合も、お返しの品にThank you cardを添えた方が良い。 また、手作りの食べ物をお返しの品に選ぶ場合には、出来るだけ先方から頂いた品とダブらないようにした方が良い。(例えば、先方から手作りのバニラクッキーをもらった後に、チョコレートクッキーを作ってお返しをするというようなことも極力避けた方が良いだろう。) みなさんのご近所ではどんな引越し挨拶の習慣がありますか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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