カテゴリ:小説
昨日の「センセイの鞄」の続きです。
センセイとツキコさんの恋愛は、なかなか恋愛にならなくて、やっと恋愛小説になってきたと思ったら、突然の別れが来ました。 その原因とか、そのときの二人の様子とか、そんなことは一切書いてありません。 ただ、ツキコさんの手元に、センセイの鞄だけ。ツキコさんはその鞄を開けてみる。 あ、私はさっき突然の別れと書いたけれど、突然かどうかも本当はよくわからないのです。 だいいち、恋愛小説なのに、愛してるとか何とかという言葉もでてこないし、だからどうしようというプランみたいなものもなし。 ツキコさんが、ひとことだけ口に出して言ったこと。 この言葉だけが、ツキコさんの深い愛の表現だったみたいです。 それは「くそじじい」 大人の恋愛に不可欠な家族みたいなものも、ほとんど出てきません。 二人は、ちょくちょくデートをしていたようですが、普段どんなふうにつきあってたのかもわかりません。 これで、恋愛小説って言えるのか? 言えると思いますよ。それも、相当感動的な。 だって、私は最後のところで涙ぐんでしまいました。 セカチューでも泣かなかった、この私が。 スタバのすみっこで、コーヒーのマグ持って。 そんなセンセイとツキコさんの、なにげない一日の過ごし方が、この本「パレード」です。 そっけないのか優しいのかわからないようないつもの口調で、 「昔の話をしてください」とセンセイが言った。 ツキコさんのてのひらをぽんぽんとたたきながら。 それで、ツキコさんが小学校時代の話をするのです。 ツキコさんの話は、小さな童話みたいでとてもかわいくておもしろい。 「センセイの鞄」を読んでいない人も、これだけでも楽しいですよ。 子どもたちにも読めますよ。 そして、何より、「センセイの鞄」を知っている読者は、二人にこんな幸せな時間があったんだと、ホッとするのです。 あーよかった。二人は幸せだったんだ。 川上弘美さん、「先生の鞄」に、こんなすてきな番外編を書いてくれて、ありがとう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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