特許の思想体系

[05 ソフトウェア特許] カテゴリの記事

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• 208 判決事例集（２）

  こんちくは。昨日の続きです特許庁ＨＰに、　　　「技術分野別の主な判決事例集の公表について」が掲載されています。勉強のため、事件の判決へジャンプできます。１－１ コンピュータ・ソフトウエア関連発明の審査基準において、コンピュータ・ソフトウエア関連発明の進歩性の判断に関し、「当業者の通常の創作能力の発揮に当たる例」として示された類型に関連するもの◆H17. 2.15 東京高裁 平成15(行ケ)430 特許権 行政訴訟事件◆H16. 3. 4 東京高裁 平成15(行ケ)300 特許権 行政訴訟事件◆H16.12.27 東京高裁 平成15(行ケ)268 特許権 行政訴訟事件◆H17. 6.28 知財高裁 平成17(行ケ)10335 特許権 行政訴訟事件◆H17. 1.26 東京高裁 平成15(行ケ)540 特許権 行政訴訟事件１－２ 一般的な進歩性の判断基準が適用されたもの◆H15. 7.15 東京高裁 平成14(行ケ)598 特許権 行政訴訟事件◆H16. 7. 8 東京高裁 平成15(行ケ)240 特許権 行政訴訟事件◆H17. 4.12 知財高裁 平成17(行ケ)10084 特許権 行政訴訟事件２．記載要件に関する判決◆H16. 9. 6 東京高裁 平成15(行ケ)325 特許権 行政訴訟事件◆H15.11. 5 東京高裁 平成14(行ケ)513 特許権 行政訴訟事件キーワード　ビジネスモデル感想・質問・意見交換は下のコメント欄、いいことをそっと耳打ちしたい方は私書箱をどうぞ。【行くところまで行く】　人気blogランキング　【ようござんすね】発明者の権利を守る証拠資料　リサーチラボノート

  2006.03.17

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• 185 ソフトウェアの法的保護とイノベーションの促進

  こんちくは。経済産業省のホームページに「ソフトウェアの法的保護とイノベーションの促進に関する研究会」中間論点整理についてという資料が掲載されています（まとめ）。現在のソフトウェア特許の課題が「強すぎる独占権が発生している」とは、一昔前ならば、ちょっと考えつかない話です。以前は、プログラムを直接、特許によって保護する手段がない、間接侵害規定は適用が困難である、等の問題がありました。これらの問題も、最近の法改正によって解決されてきたということも影響しているでしょう。とはいえ、ソフトウェア技術特有の問題ということが大きいと思われます。技術は累積的に進歩するとはよく言われてきたことですが、ソフトウェア技術は累積的にしか進歩しない、ということが影響しているのでしょう。この累積的の基礎部分に権利が発生するということなのですが、他の技術においても同じことは起こりえます。いわゆる大発明と言われるもので、これについては「強すぎる独占権」とは言われず、正当な権利と言われます（その大発明に見合う独占権）。しかし、ソフトウェア技術の場合は、いったんデファクトスタンダード的に使用されだしたら、他への置き換えがきかない（ロックイン）という性質があるということから、皆が認める大発明というよりも、皆よりも早く穴に気がつくという目ざとさによっても、そのような基礎的部分で特許取得が可能ということに問題がありそうです。今までの記事です。（１）　http://plaza.rakuten.co.jp/patent/diary/200510240000/（２）　http://plaza.rakuten.co.jp/patent/diary/200510250000/（３）　http://plaza.rakuten.co.jp/patent/diary/200510260000/（４）　http://plaza.rakuten.co.jp/patent/diary/200510270000/（５）　http://plaza.rakuten.co.jp/patent/diary/200510280000/（６）　http://plaza.rakuten.co.jp/patent/diary/200510310000/（７）　http://plaza.rakuten.co.jp/patent/diary/200511010000/（８）　http://plaza.rakuten.co.jp/patent/diary/200511020000/（９）　http://plaza.rakuten.co.jp/patent/diary/200511030000/（１０）　http://plaza.rakuten.co.jp/patent/diary/200511040000/キーワード　ソフトウェア特許、イノベーション促進感想・質問・意見交換は下のコメント欄、いいことをそっと耳打ちしたい方は私書箱をどうぞ。【人生は勝負】　人気blogランキング　ブログポポタル　【ようござんすね　ようござんすね】

  2005.11.07

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• 182 ソフトウェアにおけるイノベーション促進を確保するための対応（５）

  こんちくは。経済産業省のホームページに「ソフトウェアの法的保護とイノベーションの促進に関する研究会」中間論点整理についてという資料が掲載されています（その１０）。今回は更なる検討課題の３つ目です。－－－－－　－－－－－　－－－－－（３）その他　制度的な対応としては、特許権制限規定（第６９条）について、「特許権の効力が及ばない範囲」に、インターオペラビリティーに関する特許発明の実施を追加することも議論の俎上に上り得るが、以下の点について考慮し、慎重に検討する必要がある。【留意点】i）　TRIPs協定第３０条で、特許権の例外を設ける場合には、「特許の通常の実施を不当に妨げず、かつ、特許権者の正当な利益を不当に害さない」ことが必要とされる。ii） TRIPs協定第２７条で、すべての技術分野の発明について特許が与えられる旨規定されており、同条との関係の整理が必要。iii）例外となる「インターオペラビリティに関する特許発明の実施」の内容の明確化、例外とするための理論的な整理についてさらなる検討が必要。　また、権利設定時の課題については、具体的な問題事例の把握を行い、今後、課題の存在に係る検証・明確化が必要である。－－－－－　－－－－－　－－－－－特許法第６９条は次のような規定です。－－－－－　－－－－－　－－－－－第六十九条（特許権の効力が及ばない範囲）　特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない。２　特許権の効力は、次に掲げる物には、及ばない。　一　単に日本国内を通過するに過ぎない船舶若しくは航空機又はこれらに使用する機械、器具、装置その他の物　二　特許出願の時から日本国内にある物３　二以上の医薬（人の病気の診断、治療、処置又は予防のため使用する物をいう。以下この項において同じ。）を混合することにより製造されるべき医薬の発明又は二以上の医薬を混合して医薬を製造する方法の発明に係る特許権の効力は、医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する行為及び医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する医薬には、及ばない。－－－－－　－－－－－　－－－－－現在の６９条は、ソフトウェア特許特有の問題を解決するような条文にはなっていない。この条文の改正を検討してみるということです。しかし、ＴＲＩＰｓ協定というＷＴＯ協定の付属書１Ｃとの整合性に配慮しなければならないということです。キーワード　ソフトウェア特許、イノベーション促進感想・質問・意見交換は下のコメント欄、いいことをそっと耳打ちしたい方は私書箱をどうぞ。【人生は勝負】　人気blogランキング　ブログポポタル　【ようござんすね　ようござんすね】

  2005.11.04

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• 181 ソフトウェアにおけるイノベーション促進を確保するための対応（４）

  こんちくは。経済産業省のホームページに「ソフトウェアの法的保護とイノベーションの促進に関する研究会」中間論点整理についてという資料が掲載されています（その９）。今回は更なる検討課題の２つ目です。－－－－－　－－－－－　－－－－－（２）独占禁止法による対応の強化　ソフトウェアのインターオペラビリティに係る特許権の行使が「不公正な取引方法」に当たりうる点について、「特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法の指針」等で明らかにすることにより、・競争政策上の位置づけが明確に整理されること・通常の公正取引委員会による執行手続に加え、私訴の対象となることが明確になることが期待される。　その際に留意すべき事項としては、以下が考えられる。【留意点】ｉ）独占禁止法の「不公正な取引方法」に該当すると言えるためには、行為要件を満たすだけでなく、「公正競争阻害性」の認定が必要。ｉｉ）第２４条に基づく差し止め請求を行う場合、「著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがあること」が要件となっているものの、判例の蓄積が少なく、解釈が不明確。－－－－－　－－－－－　－－－－－「特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法の指針」（平成１１年７月３０日）は次のページにあります。http://www.meti.go.jp/policy/kyoso_funso/pdf/tokkyo.pdf独占禁止法第２４条は以下の通り。－－－－－　－－－－－　－－－－－第二十四条 　第八条第一項第五号又は第十九条の規定に違反する行為によつてその利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、これにより著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、その利益を侵害する事業者若しくは事業者団体又は侵害するおそれがある事業者若しくは事業者団体に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。第八条　事業者団体は、次の各号の一に該当する行為をしてはならない。五　事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること。第十九条 　事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。－－－－－　－－－－－　－－－－－その他、独占禁止法で関係のありそうな資料について。「標準化に伴うパテントプールの形成等に関する独占禁止法上の考え方」の公表について（平成１７年６月２９日）は、以下のページ。http://www.jftc.go.jp/pressrelease/05.june/05062902.pdf「独占禁止法に関する相談事例集」は以下のページ。http://www.jftc.go.jp/pressrelease/soudanjirei.htm「独占禁止法に関する相談事例集（平成１６年度）」には、以下のような事例が紹介されています。・印刷機器のメーカーが，ＩＣチップを搭載したインクボトルを使用しなければ起動しない機能を備えた印刷機器を販売することは，インクボトルを提供する競争業者の事業活動を困難にするおそれがない場合には，直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例・自動車メーカーが，部品メーカーに対してある自動車部品に係る特許をライセンスするに当たり，契約書に当該特許技術を用いた製品の販売先を特定の自動車メーカーに限定する条項を設けることは，直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例・住宅メーカーが，自らの保有する工法に関する特許を工務店にライセンスする際に，当該工法で住宅を施工する際には，推奨メーカー製の部材を使用することを義務付けることは，独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例キーワード　ソフトウェア特許、イノベーション促進、独禁法感想・質問・意見交換は下のコメント欄、いいことをそっと耳打ちしたい方は私書箱をどうぞ。【人生は勝負】　人気blogランキング　ブログポポタル　【ようござんすね　ようござんすね】

  2005.11.03

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• 180 ソフトウェアにおけるイノベーション促進を確保するための対応（３）

  こんちくは。経済産業省のホームページに「ソフトウェアの法的保護とイノベーションの促進に関する研究会」中間論点整理についてという資料が掲載されています（その８）。前回の議論までで、（１）権利濫用の具体的行為を定めること、（２）パテント・コモンズ、の施策がありましたが、今回は更なる検討課題について。－－－－－　－－－－－　－－－－－（１）裁定実施権制度の在り方　「公共の利益のための通常実施権の設定の裁定」（特許法第９３条）について、国際条約との整合性等を踏まえつつ、ソフトウェア特許がソフトウェア産業のイノベーションを阻害しているとの具体的な問題の有無を精査した上で、リサーチツール等の他の分野の動向や他の方策も含めて、必要に応じ裁定実施権の在り方について検討する。　その際に留意すべき事項としては、以下が考えられる。【留意点】ｉ）　　　ソフトウェア特許に関して、同条に基づく裁定を行うに足る「公共の利益」の内容を、ソフトウェアの特質、競争政策等を踏まえて整理することが必要。ｉｉ）　　裁定制度の在り方については、昨年、産業構造審議会の下部委員会である特許戦略計画関連問題ＷＧにおいて、リサーチツール等代替性の低い上流技術に係る特許及び技術標準に必須な特許に対する裁定実施権による対応可能性が検討されたが、以下の結論が得られており、これを十分に踏まえることが必要。・問題の解決手段として裁定実施権の制度・運用の見直しを図ることについては国内外からの反対もあり、わが国産業界においても必ずしもコンセンサスが得られているという状況ではない。・裁定実施権の制度・運用の見直しという観点からのみ早急な結論を出すべきではなく、他の方策も含めた検討が必要。ｉｉｉ）　１９９４年の日米合意は、特許法第９２条の利用発明関係の通常実施権に限定されるので、本件とは無関係。－－－－－　－－－－－　－－－－－特許法第９３条は次のような規定です。－－－－－　－－－－－　－－－－－第九十三条（公共の利益のための通常実施権の設定の裁定）　特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。２　前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、経済産業大臣の裁定を請求することができる。３　第八十四条、第八十五条第一項及び第八十六条から第九十一条の二までの規定は、前項の裁定に準用する。－－－－－　－－－－－　－－－－－この条文が適用される具体的な例としては、発電に関する発明であって発電原価が著しく減少する場合、ガスに関する発明であってその発明を実施すればガス漏れがなくなる場合などが想定されています。ただし、この条文が実際に適用された事例はありません。「伝家の宝刀的意義」があると言われてきました。ついに、適用されることがあるということになりそうです。となると、特許権侵害だと言われたときに対抗できる手段の一つとして考えることもできるかもしれません。技術的範囲に属さないという主張、特許無効という主張（無効審判請求）、実施権があるという主張がありますが、この実施権があるという主張の一つとして、次の施策も可能になりそうです。（１）特許権者に対して、通常実施権の許諾について協議を求める（２）協議が成立しないときは、経済産業大臣の裁定を請求するキーワード　ソフトウェア特許、イノベーション促進感想・質問・意見交換は下のコメント欄、いいことをそっと耳打ちしたい方は私書箱をどうぞ。【人生は勝負】　人気blogランキング　ブログポポタル　【ようござんすね　ようござんすね】

  2005.11.02

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• 17F ソフトウェアにおけるイノベーション促進を確保するための対応（２）

  こんちくは。経済産業省のホームページに「ソフトウェアの法的保護とイノベーションの促進に関する研究会」中間論点整理についてという資料が掲載されています（その７）。前回の議論で、本中間報告が薦めるのは次の施策－－－－－　－－－－－　－－－－－（１）現行制度を前提としつつ、権利濫用の法理を援用し、個別のケースに応じて特許権の行使を制限する方法－－－－－　－－－－－　－－－－－これをより具体的にしたもので２番目のものは、次の提案です。－－－－－　－－－－－　－－－－－産業界による対応【具体的なアクション案】　クリエイティブ・コモンズ（的な）考え方の普及。すなわち既存の知的財産権制度の利用を前提とし、各人が保有する知財権について、一定のライセンスを利用して積極的にパブリックドメインの構築に参画し、当該ドメインを活用した創造性やイノベーションの向上を図るというアプローチが考えられる。　具体的には、従来、標準化形成のプロセス等において用いられてきたパテント・プールの考え方を超えて、その保有する特許を広くオープンソースコミュニティの自由な使用に供するとの宣言（パテント・コモンズ）が既に複数の企業によって行われているところであるが、今後、政府プロジェクトにおいて、あるいは民間企業同士の取り決めにより、ＯＳＳ等一定のカテゴリーのソフトウェア、ソフトウェアのインターオペラビリティに係る特許発明については、相互に権利を主張しないとする慣行を業界の標準的な考え方として、従来の特許制度、標準化活動を超えて広めていく。【メリット】現行の特許制度を前提として、公共財としての知財の範囲、厚みを増大することが可能。【デメリット】趣旨に賛同しないアウトロー、「知財ゴロ」に対しては、有効な防衛策となりにくい。－－－－－　－－－－－　－－－－－最近、ＩＢＭやサンが自社の有するオープンソースソフトに関する特許について、無償開放を行うということを行っていますが、このようなことを産業界でも進めてはどうか、というものです。キーワード　ソフトウェア特許、イノベーション促進感想・質問・意見交換は下のコメント欄、いいことをそっと耳打ちしたい方は私書箱をどうぞ。【人生は勝負】　人気blogランキング　ブログポポタル　【ようござんすね　ようござんすね】

  2005.11.01

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• 17E ソフトウェアにおけるイノベーション促進を確保するための対応（１）

  こんちくは。経済産業省のホームページに「ソフトウェアの法的保護とイノベーションの促進に関する研究会」中間論点整理についてという資料が掲載されています（その６）。前回の議論で、本中間報告が薦めるのは次の施策－－－－－　－－－－－　－－－－－（１）現行制度を前提としつつ、権利濫用の法理を援用し、個別のケースに応じて特許権の行使を制限する方法－－－－－　－－－－－　－－－－－これをより具体的にしたものが、次の提案です。－－－－－　－－－－－　－－－－－我が国の法体系に、米国におけるパテント・ミスユースと同様の効果が得られる法理を導入するため、特許権者が、その独占力を最大化するために、第三者の取引を制限したり、公共の利益に著しく反するように特許権を利用する行為たとえば、（１）別の特許の実施許諾の義務づけ（抱き合わせ）、（２）実施許諾後に取得した関連する特許権を譲渡することを義務づけること、（３）被許諾者に対し、関連特許侵害に係る訴訟の提起を禁止すること（非係争義務）、（４）被許諾者に対し、関連特許権の無効審判等の請求を禁止すること（不争義務）、（５）相互運用性を阻害する行為などを、権利濫用的な行為として体系的に整理し、これら行為の中で特に権利濫用の程度が高いと評価される行為については権利を主張された者が抗弁として、また権利不存在確認訴訟の訴因として利用できるよう整備を行う。　具体的には、民法第１条第３項に規定されている「権利の濫用」の法解釈を行い、上記行為が権利濫用に該当しうる旨を「市場における経済取引に係る準則」として整備する。－－－－－　－－－－－　－－－－－特に、（１）～（５）に挙げているということは、実際に行われており、問題であるという認識があるということと思われます。お互いに有効な特許を有しており、知財の専門家がいるような企業同士では、このような契約になることはあまり考えられない。実際に行われているとしたら、特許量の差がある場合、専門家がいるいないの差がある場合という場合（すなわち、企業の規模の違い）ということでしょう。確かに、特許権は独占権であるということをいいことに、その権利に限っての利益以上の効果を得ようとしているものであると思われます。ただし、これはソフトウェア特許に限らず問題な行為ではないでしょうか。ソフトウェア特許のみに適用するのであれば、ソフトウェア特許固有の問題から生じるであろう不法行為にすべきかと思います。なお、「市場における経済取引に係る準則」とは、経済産業省設置法４条に定められています。－－－－－　－－－－－　－－－－－経済産業省設置法４条　経済産業省は、前条の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。同５号　市場における経済取引に係る準則の整備に関すること。〔参考〕既存の準則としては、電子商取引等に関する様々な法的問題点について、民法をはじめとする関係する法律がどのように適用されるのか、その解釈を示すものとして「電子商取引に関する準則」が整備されている。情報財取引分野として知的財産に関する法解釈も対象としている。－－－－－　－－－－－　－－－－－キーワード　ソフトウェア特許、イノベーション促進感想・質問・意見交換は下のコメント欄、いいことをそっと耳打ちしたい方は私書箱をどうぞ。【人生は勝負】　人気blogランキング　ブログポポタル　【ようござんすね　ようござんすね】

  2005.10.31

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• 17B ソフトウェア特許の課題

  こんちくは。経済産業省のホームページに「ソフトウェアの法的保護とイノベーションの促進に関する研究会」中間論点整理についてという資料が掲載されています（その５）。いままでの議論で、ソフトウェアそのものの特質、ソフトウェア産業の特質、ソフトウェア特許固有の性質を検討していましたが、いよいよ課題です。その課題は、以下の通りです。－－－－－　－－－－－　－－－－－強すぎる独占権が発生している－－－－－　－－－－－　－－－－－この課題に対応するために、「厳格な審査を徹底することにより対応を図れる部分もある」のですが、厳格な審査とは、新規性・進歩性の審査を厳格に行うということであり、強すぎる権利を発生させないように審査するということはできません。なにしろ、拒絶するには法定の理由が必要であり、権利が強すぎるからということでは、拒絶できないからです。では、権利の制限を行えばいいということになります。そのための方法が３つ提案されています。－－－－－　－－－－－　－－－－－（１）現行制度を前提としつつ、権利濫用の法理を援用し、個別のケースに応じて特許権の行使を制限する方法（２）特許法における裁定実施権制度により、個別のケースに応じて実施権を付与する方法（３）個別ケース毎の判断ではなく、特許法における特許権の効力制限規定により、予め特許権の行使を類型的に制限する方法、－－－－－　－－－－－　－－－－－（１）、（２）は個別具体的に対処しましょうというものです。（３）は法改正を念頭においたものと思われます。そして、本報告書が薦めているのが（１）です。「権利濫用の法理」とは、民法の基本原則を規定している第１条３項にあらわれています。民法第一条（基本原則）　私権は、公共の福祉に適合しなければならない。２　権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。３　権利の濫用は、これを許さない。キーワード　ソフトウェア特許、イノベーション促進感想・質問・意見交換は下のコメント欄、いいことをそっと耳打ちしたい方は私書箱をどうぞ。【人生は勝負】　人気blogランキング　ブログポポタル　【ようござんすね　ようござんすね】

  2005.10.28

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• 17A ソフトウェア特許固有の特質

  こんちくは。経済産業省のホームページに「ソフトウェアの法的保護とイノベーションの促進に関する研究会」中間論点整理についてという資料が掲載されています（その４）。前々回でソフトウェアの特質、前回でソフトウェア産業の特質でしたが、これらが相俟って、次のようなソフトウェア特許固有の性質が生じるとしています。－－－－－　－－－－－　－－－－－（１）特許権の範囲の不明確なケース等が生じている（２）特許内容が公開されても、当該ソフトウェア製品の基礎となっているソースコードの開示は求められないので、イノベーションの促進という観点から特許による技術公開の価値が低い－－－－－　－－－－－　－－－－－（１）について確かに、ソフトウェア発明に関する特許請求の範囲は、不明確になっているものが多いと思います。ただし、発明はそもそも概念（特許法第２条１項）です。概念というのは、言葉で表現できるのですが、その言葉からどうしても漏れてしまうものがでてきて、その言葉の裏にはらんでいるものがあるものです。ソフトウェアというものがそもそも概念とかなり近いものです。機械に関する発明のように現実の物に近いものと比べると現実的・具体的なものにはなりにくい性質があります。ですので、請求の範囲が不明確になる原因は明細書作成者の技量だけではなく、客観的に完璧な表現になるというのはかなり困難なことであると思います。（２）について特許法の趣旨は、開示代償としての特許権付与です。確かに、ソフトウェアはソースコードを開示するのが、即効性という意味で効果がある開示であり、利用する側にとれば一番楽です。しかし、ソースコードは特定のプログラム言語で記述されており、場合によっては特定のコンピュータ上でしか動作しないものです。そういう意味では、ソースコードというのは普遍性が高いとは言えません。むしろ、日常言語で説明するのが普遍性を高めるという意味では価値があると思います。ただ、現状では開示による発明の利用の促進が図られているかというと疑問がでることになります。キーワード　ソフトウェア特許、イノベーション促進感想・質問・意見交換は下のコメント欄、いいことをそっと耳打ちしたい方は私書箱をどうぞ。【人生は勝負】　人気blogランキング　ブログポポタル　【ようござんすね　ようござんすね】

  2005.10.27

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• 179 ソフトウェア産業の特徴

  こんちくは。経済産業省のホームページに「ソフトウェアの法的保護とイノベーションの促進に関する研究会」中間論点整理についてという資料が掲載されています（その３）。この資料の中で、ソフトウェアの特徴の他にソフトウェア産業の特徴も記載されています。挙げられているのは、次の５つ。（１）イノベーションが、累積的（Cumulative）な形で発生する（２）他のハイテク産業、特に、製薬産業、バイオ産業、ハードウェア産業に比して資本コストが低い（３）技術変化のスピードが速く、製品ライフサイクルが短い（４）著作権による保護やＯＳＳ（オープンソースソフトウェア）を含め、代替的なイノベーション促進手段が存在する（５）特許による保護のあり方が歴史的に見て変化してきているこの中で、（４）は目新しい視点だと思います。特許法をイノベーション促進手段と考えると（特許法第１条で「産業の発達に寄与」を目的としていますから当たり前ですが）、確かに現状では特許法以外のものもあります。ただし、ソフトウェアが著作権で保護されるようになった経緯における議論を考えると、著作権ではイノベーション促進手段としてはちょっと弱すぎるように思います。また、ＯＳＳもありますが、これを企業が全面的・積極的に推進するというのは考えにくいです。とすると、やはり最もイノベーションを促進する手段としては、特許法ということになると思います。キーワード　ソフトウェア特許、イノベーション促進感想・質問・意見交換は下のコメント欄、いいことをそっと耳打ちしたい方は私書箱をどうぞ。【人生は勝負】　人気blogランキング　ブログポポタル　【ようござんすね　ようござんすね】

  2005.10.26

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• 178 ソフトウェアの特質

  こんちくは。経済産業省のホームページに「ソフトウェアの法的保護とイノベーションの促進に関する研究会」中間論点整理についてという資料が掲載されています（その２）。この資料の中で、ソフトウェアの特質が記載されています。これは、ソフトウェア特許に携わっている方々にとっては目を通しておくべきものです。なにしろ、ソフトウェア特許の対応の困難さがまとめられていますので、自分の仕事の難しさを他の人（上司等）に理解してもらうのにも使えると思います。自分の仕事を説明するのに、単にソフトウェアは難しいから、ソフトウェアは特許になじみにくい面がある、などという通りいっぺんのものから踏み込むことができます。この報告書では、ソフトウェア分野は、多層レイヤー構造、コミュニケート構造、ユーザーのロックイン傾向を有すると言っています。「多層レイヤー構造」ということから、利用発明の関係が生じやすいということになります。「コミュニケート構造」ということから、一つのソフトウェア製品を作るのに、多くの発明が関係してくるということ、自分の製品のみでは侵害しないが、他と組み合わされて特許権侵害になり得るという開発者が全く意図しない間接侵害ということが起こりやすいということになると思います。「ユーザーのロックイン」ということから、特許権侵害している製品であっても、いったん世間一般に使われたら、設計変更して問題のない製品に置き換えるのが困難になる等の問題点が生じます。キーワード　ソフトウェア特許、イノベーション促進感想・質問・意見交換は下のコメント欄、いいことをそっと耳打ちしたい方は私書箱をどうぞ。【人生は勝負】　人気blogランキング　ブログポポタル　【ようござんすね　ようござんすね】

  2005.10.25

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• 177 イノベーションの促進

  こんちくは。経済産業省のホームページに「ソフトウェアの法的保護とイノベーションの促進に関する研究会」中間論点整理についてという資料が掲載されています。これは、以下のようなものです。＜目的＞ソフトウェア分野におけるイノベーションを促進するため＜検討事項＞ソフトウェアの知的財産権のあり方や産業側の対応等＜今回の資料＞ソフトウェアのイノベーションを促進するための対応策等の「中間論点整理」もちろん、「中間論点整理」であり、これが決定版というわけではありませんし、これから議論されるものになるのでしょうが、なかなか興味深いものです。ソフトウェアに関して、特許に代表される知的財産権の適用で他の技術分野と異なる取扱いをする必要がそもそもあるのか？、と考えるかもしれません。また、ソフトウェアのイノベーションが阻害されるような事件が実際に起きているのか、とも言えるかもしれません。先の一太郎事件は、ソフトウェアのイノベーションが阻害されるというものではなかったと思います。世間の評価は、ベンチャー企業の製品を特許がじゃましているという感じの受け止め方をしているところが多いようですが、・・・。実務家としては、他社の特許対応でソフトウェア特許が重要になってきています。具体的に見えている特許、まだ見えていないが脅威と感じているものもあるでしょう。そして、見えていないのになぜ脅威と感じているかというと、自社が出願しているので、または自社も出願を検討しているので、他社も同じような出願をしているに違いないと思えるということではないでしょうか。ライバルも同じことを考える。キーワード　ソフトウェア特許、イノベーション促進感想・質問・意見交換は下のコメント欄、いいことをそっと耳打ちしたい方は私書箱をどうぞ。【むずかしい仕事を狙え】　人気blogランキング　ブログポポタル

  2005.10.24

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• 058 「一太郎」「花子」の製造禁止命令：使用中止検討編

  こんちくは。例の「一太郎事件」です。１６回目です。以前のものをまとめて読みたい方はこちらへ。他の方のブログを読んでいると、今回の事件が原因で、使用を中止しようとする動きが一部にありますが、以下のことを少なくとも知ってから判断すべきでしょう。１．個人での使用の場合個人での使用は、「業として」でありません。したがって、個人的・家庭的な実施である限り、侵害者になることはありません。今回の事件で、自分が侵害者になるかもしれない、という心配は杞憂です。２．個人ではない使用の場合たとえば、学校等での使用があります。「業として」とは、営利目的を問いません。（１）判決は確定したものではない。さらに「仮執行宣言は相当でないから付さないこととする」となっています。（２）今回の判決は「ジャストシステム」に対するものであるということ。（３）判決は「製造し，譲渡等（譲渡，貸渡し，電気通信回線を通じた提供）を行い，譲渡等の申出」の中止であること。「使用」の中止ではないこと。上記３つを知っていたとしても、判決が確定して、もしも「一太郎」は侵害しているということになったら、・・・「一太郎の使用者であり、侵害。過去の使用も損害賠償の対象」ということが心配になるかもしれません。コンプライアンス、法令遵守、ころばぬ先のつえ、ということでしたら、原則に戻って、次の３つのことを検討すべきです。（４）相手の特許を潰す。たとえば、出願日である平成元年１０月３１日より前に公開された技術文献を探すことです。そして、特許は無効であるという論理を立てることが必要です。場合によっては、無効審判を請求する。無効審判請求を行わないまでも、特許権者から使用差止、損害賠償等の交渉があったら、交渉の切り札として用意しておくことが必要です。（５）設計変更を行って、特許発明の技術的範囲に入らないようにする。ユーザーがこれを行うというのは普通は非常に困難です。しかし、今回の場合は、ジャストシステムは、「ヘルプモードデザイン変更モジュール」を配布していますので、それをインストールすることによって、侵害にならないことになります。また、本来ならば、このような設計変更が特許発明の技術的範囲に属していないという判断が必要です。しかし、今回の場合、「一太郎事件」の前に「家計簿事件」がありますので、この設計変更案でまず問題は起こらないでしょう（このように疑義なく設計変更できるのは、非常にめずらしいことです）。（６）権原を有する者になる。松下にライセンス交渉することです。松下製品の不買運動よりもずっと効果があると思うのですが。今回の場合は（５）の対策がお勧めです。それでも心配だという方は、次の策です。（７）実施をしない。つまり、「一太郎」の使用を止めることです。感想・質問・意見交換は下のコメント欄か私書箱をどうぞ。「今宵はここまでにいたしとうござりまする」（流行語大賞　１９８８年　流行語部門・金賞）。【運気アップ　クリック２つ】　人気blogランキング　ブログポポタル　【感謝】松下ジャスト判決論考　　　本ページの先頭に戻る

  2005.03.13

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• 043 「一太郎」「花子」の製造禁止命令：その後の論評編

  こんちくは。例の「一太郎事件」です。１５回目です。以前のものをまとめて読みたい方はこちらへ。２００５年２月１８日の日経新聞の解説記事で「大企業優位の知財戦略」とありました。その中で、「ソフトに特許が認められたのは２００２年の特許法改正以降。ソフト会社や研究開発を持たないメーカーには特許の蓄積がなく、相殺することができなかった」とありました。つまり、ソフト会社は特許そのものが取れなかったのだから、相手に対して有効な特許を作りようがなかった。そうなると、交渉手段として、メーカー同士の場合、非常に有効なクロスライセンスが使えないということになり、非常に不利だ。不公平だ。ということでしょう。確かに、「物」に「プログラム等」が含まれることを明文で規定した改正特許法が施行されたのは平成１４年（２００２年）９月１日です。今回の事件が起こるまでに、約２年しかない。これでは、準備不足である。一見、上記の主張は正しいように思えます。しかし、法改正が行われる前に、特許庁の審査基準では、２００１年１月１０日より特許請求の範囲に「プログラム」と記載することは認められていました。ソフト会社が主力製品であるソフトについての特許出願ができる期間（つまりハードメーカーに対抗することができる特許を作成するための準備期間）は、約３年半ありました。その上、その前に、特許庁の審査基準では、１９９７年４月１日より特許請求の範囲に「プログラムを記録した記録媒体」と記載することが認められていました。これは、実質「ソフト」を特許請求の範囲に記載するのと同じ効果を持てます。すると、準備期間は、約７年半ありました。更に、今回の「一太郎事件」で松下電器産業の特許の出願日は、平成元年（１９８８年）１０月３１日です。「ソフト特許が取れないといわれていた頃に特許出願したもので、ソフトウェア製品を押さえることができた」ということになってしまいます。このあたりの事情は、既に２００５年２月１０日のブログに書きました。もう一つ、念押しの更に、特許電子図書館（平成５年（１９９３年）以降の蓄積が検索範囲）で調べてみると、ジャストシステムは、１９９３年７月から特許出願を行っています。「優秀な知財戦略を持った者が優位」ということが妥当だと考えます。別に、どちらかの肩を持っているわけではありません。特許事件はビジネスライク（というよりもビジネスそのものですが）に扱うべきと考えています。意見交換は下のコメント欄か私書箱をどうぞ。「今宵はここまでにいたしとうござりまする」（流行語大賞　１９８８年　流行語部門・金賞）。【プロも愛用クリック】　人気blogランキング　ブログポポタル　【感謝】

  2005.02.22

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• 03C 「一太郎」「花子」の製造禁止命令：資料編

  こんちくは。連載１４回目です。仕上げにしたいと思います。情報収集のためです。「一太郎事件」関係ブログのトラックバックお願いします（収集癖です）。この記事のトラックバックURL：http://tb.plaza.rakuten.co.jp/patent/diary/200502150000/ 法律問題を解決するためには、事実を正しく認識することが必要です。今回の事件は話題性が大きかったせいもあり、憶測記事も多かったです（自分のものも含む）。ここでは、締めくくりとして、後の検討のために事実等を記載しておきたいと思います。（１）判決今回の事件の判決（一太郎事件）「H17. 2. 1 東京地裁 平成16(ワ)16732 特許権 民事訴訟事件」密接に関係する事件の判決（家計簿事件）「H16. 8.31 東京地裁 平成15(ワ)18830等 特許権 民事訴訟事件」他の松下電器産業対ジャストシステムの判決「H16.10.29 東京地裁 平成15(ワ)27420 特許権 民事訴訟事件」（２）判決の争点「H17. 2. 1 東京地裁 平成16(ワ)16732 特許権 民事訴訟事件」（Ａ）　被告製品をインストールしたパソコンに表示される「ヘルプモード」ボタン及び「印刷」ボタンは，本件各構成要件にいう「アイコン」に該当するか。（Ｂ）　間接侵害（特許法１０１条２号，４号）が成立するか。（Ｃ）　本件特許に無効理由が存在することが明らかか否か。「H16. 8.31 東京地裁 平成15(ワ)18830等 特許権 民事訴訟事件」〔本訴及び反訴について〕 （Ａ）　本件製品をインストールしたパソコンに表示される「？」ボタン及び「表示」ボタン等は，本件各構成要件にいう「アイコン」に該当するか。（Ｂ）　間接侵害（特許法１０１条２号，４号）が成立するか。（Ｃ）　本件特許に無効理由が存在することが明らかか否か。 〔本訴について〕（Ｄ）　被告の前記１(5)記載の行為は，不正競争防止法２条１項１４号の営業誹謗行為に該当するか。（Ｅ）　損害の発生及びその額「H16.10.29 東京地裁 平成15(ワ)27420 特許権 民事訴訟事件」（Ａ）　被告製品は，構成要件１－Ｃ，１－Ｄ，２－Ｄ及び２－Ｅにいう「影付き文字のベクトルデータ」を生成するか。（Ｂ）　ロ号物件の製造及び譲渡等は，間接侵害（特許法１０１条１ないし４号）を構成するか。（Ｃ）　本件特許に無効理由が存在することが明らかか否か。（Ｄ）　損害の発生及びその額（３）特許（一太郎事件、家計簿事件での特許）特許番号　　　第２８０３２３６号発明の名称　　情報処理装置及び情報処理方法出願日　　　　平成元年１０月３１日出願番号　　　特願平１－２８３５８３公開日　　　　平成３年６月２０日公開番号　　　特開平３－１４４７１９登録日 　　平成１０年７月１７日特許請求の範囲請求項１（構成要件の分説）　１－Ａ　アイコンの機能説明を表示させる機能を実行させる第１のアイコン，および所定の情報処理機能を実行させるための第２のアイコンを表示画面に表示させる表示手段と，　１－Ｂ　前記表示手段の表示画面上に表示されたアイコンを指定する指定手段と，　１－Ｃ　前記指定手段による，第１のアイコンの指定に引き続く第２のアイコンの指定に応じて，前記表示手段の表示画面上に前記第２のアイコンの機能説明を表示させる制御手段と　１－Ｄ　を有することを特徴とする情報処理装置。特許請求の範囲請求項２（構成要件の分説）　２－Ａ　前記制御手段は，前記指定手段による第２のアイコンの指定が，第１のアイコンの指定の直後でない場合は，前記第２のアイコンの所定の情報処理機能を実行させる　２－Ｂ　ことを特徴とする請求項１記載の情報処理装置。特許請求の範囲請求項３（構成要件の分説）　３－Ａ　データを入力する入力装置と，データを表示する表示装置とを備える装置を制御する情報処理方法であって，　３－Ｂ　機能説明を表示させる機能を実行させる第１のアイコン，および所定の情報処理機能を実行させるための第２のアイコンを表示画面に表示させ，　３－Ｃ　第１のアイコンの指定に引き続く第２のアイコンの指定に応じて，表示画面上に前記第２のアイコンの機能説明を表示させる　３－Ｄ　ことを特徴とする情報処理方法。（４）間接侵害規定第１０１条（侵害とみなす行為）次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。　一　特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為　二　特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為　三　特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為　四　特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為特許法第２条３項、１０１条の改正の経緯「産業構造審議会知的財産政策部会法制小委員会」http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/matrix.htm（５）おまけ（2005.02.12のブログに対する「凡才、只今勉強中！」さんのコメント書き込みより）公正取引委員会のホームページです。（ａ）２００４年７月１３日　マイクロソフトコーポレーションに対する勧告についてhttp://www.jftc.go.jp/pressrelease/04.july/04071301.pdf（ｂ）２００４年９月　３日　マイクロソフトコーポレーションに対する審判開始決定についてhttp://www.jftc.go.jp/pressrelease/04.september/040903.pdf＜追記　20050407＞控訴審第１回口頭弁論　２００５年４月２５日＜追記　20050509＞「大合議部」が扱う最初の案件。大合議部：知財高裁に四つある部の部長らベテラン裁判官５人で構成。裁判長は１部の部長でもある篠原勝美所長。通常は３人の合議で審理するが、社会的な影響が大きいと判断された訴訟は手厚い布陣の大合議部で扱う。＜追記　20050603＞第２回口頭弁論傍聴席（５２席）は満席冒頭に「少し緊張の一瞬ですね。深呼吸でもして」と声を掛けたとのこと次回（７月１５日）弁論で原則として結審＜追記　20050715＞口頭弁論が７月１５日、知財高裁で開かれ、結審。判決期日は９月３０日。「一太郎事件」関係ブログのトラックバックお願いします。意見交換は下のコメント欄か私書箱をどうぞ。「今宵はここまでにいたしとうござりまする」（流行語大賞　１９８８年　流行語部門・金賞）。【開運クリック２つ】　人気blogランキング　ブログポポタル　【感謝】

  2005.02.15

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• 03B 「一太郎」「花子」の製造禁止命令：定義編

  こんちくは。用語の定義を明確にするということが明細書の書き方というような題名の本にはよく書かれています。また、よくそのように教育されます。今回の事件では「アイコン」の定義が問題となりました。これを教訓とするために、この「アイコン」をどう定義すればいいのでしょう＊１。「言葉というものは必ずいくらかの曖昧さを帯びている」と言われます。しかし、曖昧だからといって定義しないというのは知的怠慢です。とはいえ、もしも「アイコン」を定義してしまっていたら、「一太郎」が技術的範囲に属するというような判断は行われなかったかもしれません。狭く定義＊２したら、技術的範囲に属さないと判断されたでしょう。では、逆に、広く定義したならば、その定義がそのまま採用されたかというと、必ずしも採用されるとは限らないです。出願当時の技術水準からの新規性・進歩性を問われて特許になったものだからです。「語の外延は内包と言語外の事態との「関数」であるから、ある語の明確さは、当然、それが指示する事物およびその「周辺にある」事物の変化によって影響され」ます（「法哲学概論」碧海純一 著）。「語の外延にあるか否か」は、侵害事件における技術的範囲に属する属さないの判断であると考えます。「語の内包」は、語の定義です。とすると、「言語外の事態」を出願時にどれだけ正確に把握できているかによります。これが実務上、どれだけできるのかによるということになりそうです。もしも、明確な定義を与えない場合はどうなるか？裁判では、請求の範囲、発明の詳細な説明＊３、出願当時の技術文献を根拠にアイコンについての解釈を行っています。それもかなり厳密なものです。「言語外の事態」を全て完全に把握できないような場合は、明確な定義を与えない場合がよい場合もあると考えます。私は、非常に少数の意見ではありますが、先輩から「似かよっている意味の語を複数用いて明細書を作成する」ということを教わりました。「解釈にまかせることができるから」という理由です。高度なテクニックではありますが、たまに使います。ただし、多義的に解釈できるようなものは避けるべきです。「不明確性は語の正常な性質であるが、多義性は正常でない性質」（「法哲学概論」碧海純一 著）だからです。この点について、私がどのようなことに留意して明細書を作成しているかについて、また後に書いてみたいと思います。＊１直接的な答えとしては、「アイコン」とは，「表示画面上に，各種のデータや処理機能を絵又は絵文字として表示して，コマンドを処理するものであり，かつそれに該当すれば足りるのであって，ドラッグないし移動可能なものであるとか，デスクトップ上に配置可能なものであるなどという限定はない。」ということでしょうが、このような定義が出願時に可能かということです。＊２例えば、「アイコン」とは，「表示画面上に，各種のデータや処理機能を絵又は絵文字として表示して，コマンドを処理するものであり，ドラッグないし移動可能なものであるとか，デスクトップ上に配置可能なものである」という定義です。＊３特許法第７０条第２項において、「前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。」と規定されています。意見交換は下のコメント欄か私書箱をどうぞ。「今宵はここまでにいたしとうござりまする」（流行語大賞　１９８８年　流行語部門・金賞）。【開運クリック２つ】　人気blogランキング　ブログポポタル　【感謝】

  2005.02.14

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• 03A 「一太郎」「花子」の製造禁止命令：控訴編（２）

  こんちくは。高裁での争点になりそうな点の検討の続きです。（２）「アイコン」か否かを争う先の記事でも指摘しましたが、松下電器とジャストシステムの争いは、今回の事件のみではなく、密接に関連するものがもう一つあります。それは、「H16. 8.31 東京地裁 平成15(ワ)18830等 特許権 民事訴訟事件」（以下、「家計簿事件」といいます）です。今回の事件は、「H17. 2. 1 東京地裁 平成16(ワ)16732 特許権 民事訴訟事件」（以下、「一太郎事件」といいます）です。「家計簿事件」では、「？」ボタン及び「表示」ボタンは、絵又は絵文字ではないと判断され、アイコンとは認められませんでした。そして、「文字の記号や図案化が極めて低いレベルのものもアイコンの概念に含まれる」ことは認められませんでした。「一太郎事件」では、「ヘルプモード」ボタン及び「印刷」ボタンが、絵又は絵文字であると判断され、アイコンと認められました。「争点としては、家計簿事件と技術的差異がないのに、異なる判断は失当である」というものです。つまり、「一太郎」の「ヘルプモード」ボタン及び「印刷」ボタンが「文字の記号や図案化が極めて低いレベルのもの」であるという主張を行うことです。ただし、これだけでなく、アイコンでない論理を補強する必要があります。家計簿事件の判断が間違いであるという結論もあり得るからです。これに対して、松下側は、アイコンか否かは操作性に大きな影響を及ぼすことを論証するという反論が考えられます。意見交換は下のコメント欄か私書箱をどうぞ。「今宵はここまでにいたしとうござりまする」（流行語大賞　１９８８年　流行語部門・金賞）。【開運クリック２つ】　人気blogランキング　ブログポポタル　【感謝】

  2005.02.13

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• 039 「一太郎」「花子」の製造禁止命令：松下、ＪＳ、ＭＳ編

  こんちくは。昨日のブログに対する「凡才、只今勉強中！」さんのコメントに刺激を受け、調べてみましたので、報告します。松下電器産業、ジャストシステム、そしてマイクロソフトの特許公報件数を比較してみました＊１。松下：５１８７３件　ＪＳ：８８件　ＭＳ：９０件特にワープロ関係の技術が多いと思われるＩＰＣのＧ０６Ｆ１７（自然言語データの取扱い、自動言語解析等を含む「特定の機能に特に適合したデジタル計算またはデータ処理の装置または方法」です）については、以下の通りです＊２　＊３。松下：７６１件　ＪＳ：６１件　ＭＳ：１９件特許は件数比較だけで優劣がわかるというものではありません。１件でも非常に強力なものがあれば市場を独占することも可能です。ですので、単純な件数比較で判断することには無理があります。しかし、特許の価値を判断することは非常に困難であり、個々の特許価値が判明する前は、件数が優劣を判断するのに非常に重要なファクターになります。さて、松下とＭＳですが、もしも、仮に、イフ、非常に単純な戦術ですが、松下がＭＳに対して７６１件すべてが特許権侵害であるという警告状を送ったとしたらどうなるでしょう＊４。それを確認するだけで非常に多大な工数がかかります（数は力です）。一方、同じことをＭＳが松下に行ったらどうでしょう。１９件程度ならその確認もＭＳに比べたら困難ではないでしょう（容易であるとは言えません）。損害額もかなり違うはずです。もちろんビジネス世界は、特許だけで勝負がつくものではありませんが、一つの武器として用いるなら充分すぎるほどです。たとえば、自分のところのＰＣにＯＳをインストールする際に、ライセンス料の代りに安くしてほしいなどという交渉も考えられます。そうすると、強い特許を持っているメーカーのＰＣは価格面で優位に立てます。昨日のブログの仮説を補強するものになりました。＊１特許公開公報ではありません。問題となるのは、出願件数よりも特許件数のほうでしょう。ただし、特許公報の比較であり、厳密な特許件数を比較するものではありませんので、ご注意を。特許電子図書館のデータベースを用いました。・検索可能範囲は、以下の通りです。つまり、これ以前の公報はカウントしていません。特許公告　昭61-010921　～　平08-034772（1996/03/29）　822,584件特許登録　2500001　～　3619700（2005/02/09）　　　　1,119,640件・公報発行時における出願人／権利者ですので、公報発行後に譲渡等で特許権者になったものは含まれていません。・権利消滅しているものが含まれています。・日本の件数だけです。・２００５年２月１２日検索。＊２全分野の特許公報件数と比べると、以下のことがわかります。・松下の件数に大きな開きあるのは、総合メーカーであるからです。他の分野の特許公報も多いです。・ＪＳは言語処理関係（ワープロ等）の技術に特化していることがわかります。・ＭＳはＪＳほど言語処理関係には特化していないということがわかります。＊３今回の事件での特許第２８０３２３６号のＩＰＣは、Ｇ０６Ｆ３／１４，３３０、Ｇ０６Ｆ３／０２，３７０、Ｇ０６Ｆ３／１４，３７０です。Ｇ０６Ｆ３で検索してみると、以下の通りです。松下：４３６件、ＪＳ：２４件、ＭＳ：２７件また、ＩＰＣは５年毎に版がかわります。これの整合をとって検索することまでは行っていません。＊４・相手からは、「どの製品のどこがどの特許発明の技術的範囲に属すのか明確にしてほしい」という返事ですね。立証責任は特許権者側にありますから。そうすると、攻守逆転か？まぁ仮にですから、この点、軽く流してください。それだけ対象製品の特定というのは困難です。とはいえ、持てる側は仕掛けることができるだけ有利です。・また、実際に技術的範囲に属すると判断できるような権利は非常に少数でしょう。新聞報道によると、松下がＪＳに対して起こした訴訟が５件、そのうち、２件は同一の特許権です。更に、属すると判断できたもの（正確には間接侵害）が１件。意見交換は下のコメント欄か私書箱をどうぞ。「今宵はここまでにいたしとうござりまする」（流行語大賞　１９８８年　流行語部門・金賞）。【開運クリック２つ】　人気blogランキング　ブログポポタル　【感謝】

  2005.02.12

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• 038 「一太郎」「花子」の製造禁止命令：あらぬこと想像編

  こんちくは。「損害賠償請求を行わず、差止請求のみであったことにガテンがいかない」というのをネットのどこかで読みました。松下電器産業はそもそも差止を行ってもワープロソフトを製造・販売していないからというものです。特許発明の内容を検討すると、もしかしたら、という仮説がでてきました。＜仮説＞改正された間接侵害規定とソフトウェア特許を用いて、本格的な権利行使を行うための準備（切れ味を試したかった、小手調べ）だったのではないでしょうか。（理由１）何ら直接的な利益を得ることがない。差止請求を行っても、松下電器産業はワープロソフトを商品として持っているわけではないので、市場を独占できるわけではありません。「技術立社・知財立社」の下、自社の知財を厳重に守り、ライセンス料で収益を上げるということなら、損害賠償請求を行うはずです。ライセンス料相当の額が請求できるはずですが（２００５年２月９日ブログで「凡才、只今勉強中！」さんのコメント記載を参照ください）、損害賠償請求を行ってはいません。嫌がらせまたは正義感だけということは考えにくいです。特許戦略があると考えます。他に狙いがあると考えるべきでしょう。（理由２）相手に痛手を負わす必要がない。特許発明は、アイコンの変更という容易に逃げることができるものでした。これに特許権者である松下電器産業が気がつかないはずはないです。損害賠償請求をしなかったのですから、設計変更のみで回避可能なわけです。過去の損害賠償までとなれば、設計変更だけでは済まず、ジャストシステムは無効審判等で対抗する必要がでてくるわけですが、それは必要ありません。むしろ、損害賠償請求をしなかったということから、自ら逃げ道を教えてあげたと考えることはできないでしょうか。松下電器産業は設計変更を行ってくると考えた。そうすれば、相手に痛手を負わすことなく、無効審判に対応するという労力もさかずに、「改正された間接侵害規定の切れ味を試す」ことができたわけです。（理由３）早く結論を出したい。損害賠償請求を行わなかった。特許権の侵害訴訟は、特定論、侵害論、損害論と進みます。この中で、損害論がなければ、判決も早くでます。「改正された間接侵害規定の切れ味を試す」だけであったならば、特定論、侵害論だけの結果を知ればいいのです。また、上に説明したように無効審判に対応するという必要がないということから、結論も早くでます。判決を早く出して、本格的な権利行使へと進む、という段取りではなかったのでしょうか。（理由４）マイクロソフトに「非係争条項」の排除の勧告が公取委からでた。ワープロソフトは市場を２分（ジャストシステムとマイクロソフト）している。松下電器産業は今回のアイコンヘルプ特許以外にも有効なワープロ特許を有しているはずです。それらのワープロ特許は、ジャストシステムではないもう一方に権利行使も可能です。マイクロソフトに対しての前哨戦であった。＜仮説に対する反論＞松下電器産業株式会社と株式会社ジャストシステムとの裁判は、以下の３つありました（最高裁ＨＰのデータベースより）＊１。上の仮説では、これらの事件での対応の違いの説明がつきません。（１）「H16.10.29 東京地裁 平成15(ワ)27420 特許権 民事訴訟事件」では、１億円の損害賠償請求を行っている。（２）「H16. 8.31 東京地裁 平成15(ワ)18830等 特許権 民事訴訟事件」では、差止請求のみで、損害賠償請求を行っていない。（３）「H17. 2. 1 東京地裁 平成16(ワ)16732 特許権 民事訴訟事件」では、差止請求のみで、損害賠償請求を行っていない。とはいえ、「改正された間接侵害規定の切れ味を試す」という目的は達成しました。しかし、その後はおもわく通りに行かなかった。ジャストシステムは安易な解決方法（設計変更）をとらなかったということです。ジャストシステム対松下という構図のようですが、実は、ジャストシステムにとっては、ジャストシステム対複数のワープロメーカーという構図です。ジャストシステム側からすれば、ここで負けると、他のワープロメーカーからも同様の請求が行われ、それこそ生命にかかわることになります。ジャストシステムは他のワープロメーカーに対して、牽制をかけて、一筋縄では解決しないという印象をつけるのに非常に成功したと言えます。他社も、装置特許（物の発明）で、ソフトウェア製品を対象とすることができることは判明しました。しかし、同様にジャストシステムに対して権利行使することは、非常に危険だという印象も与えました。推測、憶測、夢でした。おあとがよろしいようで。＊１なお、朝日新聞のサイトによると「ジャストシステムとはこの件以外に４件を法廷に持ち込んだが、１件は訴えを取り下げ、３件は要求が通っていない」そうである。上記した３つの事件以外に２件あるようです。意見交換は下のコメント欄か私書箱をどうぞ。「今宵はここまでにいたしとうござりまする」（流行語大賞　１９８８年　流行語部門・金賞）。【開運クリック２つ】　人気blogランキング　ブログポポタル　【感謝】

  2005.02.11

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• 037 「一太郎」「花子」の製造禁止命令：ソフト特許編

  こんちくは。この事件のネタが尽きません。９回目です。この事件で、特許世界全体と出会っているということなのでしょう。でも、そろそろです。ジャストシステムは、「お客様・ご関係者各位　　今回の控訴にあたって」という文書をＨＰで掲載しています。その中で、気になるところがありました。「例えば、ひらがなを漢字に変換する時に、何の疑いもなくスペースキーを押していると思います。これは1983年（昭和58年）に弊社がJS-WORDで最初に考えた仕組みです。当時、ソフトウェアの特許権が認められていなかったために権利化はしませんでした（※ソフトウェア特許は特許法の規定上2002年に初めて認められました）。」特に「当時、ソフトウェアの特許権が認められていなかったために権利化はしませんでした（※ソフトウェア特許は特許法の規定上2002年に初めて認められました）。」というところです。では、なぜ、今回の事件となった松下電器産業の特許はあるのでしょう。その特許出願日は、平成元年（１９８８年）１０月３１日です。１９８３年から１９８８年の５年間の間に、発明の規定に関する特許法の改正があったわけではありません。発明は、思想です（特許法第２条第１項）。ですので、装置（物）であろうが、方法であろうが、プログラムであろうが、発明か否かということとは関係ありません。確かに、特許法第２条第３項には、「物の発明」「方法の発明」という文言があります。しかし、特許法第２条第３項に規定している「物の発明」「方法の発明」は「実施」を定義する上で便宜的に必要となったカテゴリーです。つまり、発明を何の上で具体化するかということが「実施」する上で問題となっているだけなのです。発明か否かという判断の際に、ソフトウェアか否かということは議論されません＊１。ですから、ソフトウェアに関する発明も特許出願できました。しかし、確かに、その頃、ソフトウェアの発明は特許出願できないという暗黙の了解みたいなものはありました＊２。日本では、技術の進歩に伴う特許適格性（発明か否か）の判断基準は、運用（審査基準の改正）で対応が行われてきました＊３。しかし、今までの審査基準では処理できない出願があるからこそ、審査基準の改正も行われるのです。出願人が常に新しいものを作り上げているということです。つまり、出願人は常にチャレンジャブルなことを行っているというのが正しいと思います。発明の範囲という常識を破り、その範囲を押し広げようとすることです。このようなことこそ、ベンチャー企業の精神に沿うものであると思います。その点、ジャストシステムは特許出願ではそのようなことをやらずにきたのではないかと思います。特許法は、他の多くの法律のように規制するためのものではなく、ビジネスに積極的に活用できる法律です。＊１実務的にはいいすぎかもしれません。まずは、ソフトウェアに関するものか否かが判断された上で、ソフトウェアに関するものであれば、発明か否か（特許法第２９条第１項柱書）が判断されています。審理経済のためでしょう。＊２１９８０年代中頃は、私はソフトウェア技術者であり、発明者の立場にありました。その当時、出願依頼するのに、わざわざ論理回路を書かされました。「なんで、ソフトウェア技術者だけ、こんな苦労をする」などと考えたものです。＊３玉井教授（東大）の論文で、日本では法改正、判例の積み重ねで対応するわけではなく、運用（審査基準の改正）が変わるというのが特徴であるというのがあります。次回は、「なぜ松下電器産業が訴訟を起こしたのか」についての仮説（妄想）です。意見交換は下のコメント欄か私書箱をどうぞ。「今宵はここまでにいたしとうござりまする」（流行語大賞　１９８８年　流行語部門・金賞）。【開運クリック２つ】　人気blogランキング　ブログポポタル　【感謝】

  2005.02.10

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• 036 「一太郎」「花子」の製造禁止命令：控訴編

  こんちくは。まだ続きます。今回の事件で、２００５年２月８日ジャストシステムが控訴しました＊１。そこで、高裁での争点になりそうな点の検討です。（１）アイコンの定義を争う地裁では、ジャストシステム側は、「「アイコン」とは，ドラッグないし移動ができる，デスクトップ上に配置される，各種のデータや処理機能を絵又は絵文字として表示して，コマンドを処理するものをいう」と主張しているのに対し、裁判所は、「「本件発明にいう「アイコン」とは，「表示画面上に，各種のデータや処理機能を絵又は絵文字として表示して，コマンドを処理するもの」であり，かつそれに該当すれば足りるのであって，本件明細書の記載によっても，本件特許出願当時の当業者の認識においても，それ以上に，ドラッグないし移動可能なものであるとか，デスクトップ上に配置可能なものであるなどという限定を付す根拠はない」と判断しています。・ジャストシステム側の主張アイコンが、ドラッグ等できるものである例を出願当時の多くの文献を例示して、主張する。・松下電器側の主張アイコンが、ドラッグ等できないものの例を出願当時の多くの文献を示して、主張する。このような主張になると、松下側に有利になるでしょう。というのも、多くの例を内包させるためには、広義の定義にならざるを得ないからです。構成要件の少ない方が技術的範囲が広いようにです（知財関係者しかわからないたとえでした）。しかし、ここは文献に軽重をつけるべきでしょう。当時は、この文献がアイコンを説明するパイオニア的な位置づけにあり、この文献を尊重すべきである等です。また、文献の記載の解釈にしても、単にドラッグ等できるできないではなく、ドラッグできることが原則であり、ドラッグできないことが例外ではないかということも検討すべきだと考えます。特許請求の範囲に記載されているアイコンは原則としてのアイコンを記載しているのであって、例外としてのアイコンを記載しているわけではないでしょうから。その他の争点になりそうな事項（２）「アイコン」か否かを争う（３）間接侵害の要件「その発明による課題の解決に不可欠なものである」か否かを争う（４）権利濫用で争う（５）設計変更した後の「一太郎」で争う＊１民事訴訟法第二百八十五条(控訴期間)　控訴は、判決書又は第二百五十四条第二項の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない。第一審判決日：２００５年２月１日２００５年２月８日控訴「一太郎２００５」２００５年２月１０日発売なかなかのしたたかさを感じます。意見交換は下のコメント欄か私書箱をどうぞ。「今宵はここまでにいたしとうござりまする」（流行語大賞　１９８８年　流行語部門・金賞）。【運気アップ　クリック２つ】　人気blogランキング　ブログポポタル　【感謝】

  2005.02.09

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• 035 「一太郎」「花子」の製造禁止命令：間接侵害適用編

  こんちくは。例の判決の中で、特に注目しているのは、「特許法１０１条２号，４号の間接侵害成立の要件の具体的な判断がでたこと」です。そこで、その点（特許法１０１条２号について）をまとめておきました。長くなってしまいました。結果のみを知りたい方は、この記事の最後へ。改正された間接侵害の規定である特許法第１０１条２号の適用要件は以下の通りです。（１）特許が物の発明についてされている場合であること。　方法の発明についてされている場合は、１０１条４号に規定されている。（２）「対象物（客観的要件）その１」：その物の生産に用いる物であること。　「用いる物」にはプログラム等が含まれる。（３）「適用除外」：日本国内において広く一般に流通しているものを除く。　ねじ、釘、トランジスタ等、世の中に広く普及している一般的な製品をいう。取引の安定性を確保する観点から、一律に間接侵害の対象から外すこととする。（４）「対象物（客観的要件）その２」：その発明による課題の解決に不可欠なものであること。　それを用いることで初めて「発明の解決しようとする課題」が解決されるような、発明のポイントに関連する重要な部品・材料等をいう。間接侵害の成立する対象部品を、こうしたものに限定する趣旨である。（５）「主観的要件」：その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながらであること。　２つのこと「その発明が特許発明であること」、「その物がその発明の実施に用いられること」を認識していることである（いわゆる悪意）。権利者から警告状を受け取った後は、一般的には悪意と考えられる。（６）「行為態様」：業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為であること。今回の事件で、裁判所は次のように判断しました。「一太郎をインストールしたパソコンは，本件発明の構成要件を充足するものである」とし、一太郎は、「被告製品をインストールしたパソコン」の生産に用いるものであるとし、上記要件（２）、（６）を認め、「（従来の方法では）キーワードを忘れてしまった時や，知らないときに機能説明サービスを受けることができない」という本件発明による課題の解決に不可欠なものであるとし、上記要件（４）を認め、一太郎が「日本国内において広く一般に流通しているもの」でないことは明らかであるとし、上記要件（３）を認め、被告は，遅くとも，平成１４年１１月７日に原告が申し立てた仮処分命令申立書の送達の時以降，本件発明が特許発明であること及び被告製品が本件発明の実施に用いられることを知ったものと認められるとし、上記要件（５）を認めました。そして、ジャストシステムは上記要件（４）について、「Ｗｉｎｄｏｗｓというマイクロソフト社のオペレーティングシステムそのものに，本件発明と同様の機能があるから，被告製品は「その発明による課題の解決に不可欠なもの」ではない」と主張しました。しかし、それに対して、裁判所は、「その主張の趣旨は必ずしも判然としないが，仮に被告がいうように，Ｗｉｎｄｏｗｓのヘルプ表示プログラム等によって，「『ヘルプモード』ボタンの指定に引き続いて他のボタンを指定すると，当該他のボタンの説明が表示される」という機能が実現されるとしても，一太郎の機能は，あくまで被告製品をインストールしたパソコンによってしか実行できないものであるから，被告製品は本件発明による課題の解決に不可欠なものであり，被告製品をインストールする行為は，本件特許権を侵害する物の生産であるといわざるを得ない。」としました。互いの主張は次の通りでした。〔原告（松下電器産業）の主張〕ジャストシステムが業として一太郎を製造，譲渡等又は譲渡等の申出を行うことは，特許法１０１条２号の要件を満たし，本件特許権の間接侵害に該当する。・要件（２）、（６）について一太郎をインストールしたパソコンは，本件発明の構成要件を充足するから，ユーザーが一太郎を購入し，これをパソコンにインストールする行為は，本件第１発明に係る物を生産する行為に該当し，直接侵害行為を構成する。・要件（４）について本件発明の課題は，一太郎をパソコンにインストールすることによって解決されるので，一太郎は，本件発明による課題の解決に不可欠なものである。・要件（３）について被告製品は，ねじ，釘，電球，トランジスター等の日本国内で流通している規格品又は普及品ではなく，本件発明による課題の解決のために特別に構成されたものであるから，日本国内において広く一般に流通しているものには当たらない。・要件（５）についてジャストシステムは，遅くとも松下電器産業が平成１４年１１月７日に申し立てた別件にかかる仮処分命令の申立書の送達の時からは，本件発明が特許発明であること並びにジャストシステムが本件発明の実施に用いられることを知っている。これに対し、ジャストシステムは要件（４）について主張しています。〔被告（ジャストシステム）の主張〕一太郎は，「発明による課題の解決に不可欠なもの」とはいえない。「発明による課題の解決に不可欠なもの」は，それを用いることにより初めて『発明の解決しようとする課題』が解決されるような物品をいうとされているところ，本件発明で解決しようとする課題は，「（従来の方法では）キーワードを忘れてしまった時や，知らないときに機能説明サービスを受けることができない」という点である。そして，松下電器産業が一太郎の機能であると主張する機能は，Ｗｉｎｄｏｗｓというマイクロソフト社のオペレーティングシステムの機能なのである。ヘルプ表示プログラム等は，他のアプリケーション・ソフトウェアを実行している間においても利用可能であり，一太郎をインストールするか否かにかかわらず，「『ヘルプモード』ボタンの指定に引き続いて他のボタンを指定すると，当該他のボタンの説明が表示される」という機能が実現されている。したがって，「（従来の方法では）キーワードを忘れてしまった時や，知らないときに機能説明サービスを受けることができない」という課題の解決と，一太郎のインストールとは無関係であり，一太郎は，それを用いることにより初めて発明の解決しようとする課題が解決されるものとはいえず，「発明による課題の解決に不可欠なもの」ではなく，ジャストシステムの行為は間接侵害に該当しない。更に、これに対し、松下電器産業は次のように主張しています。・被告（ジャストシステム）の主張についてジャストシステムは，一太郎の問題となっている機能は，マイクロソフト社のＷｉｎｄｏｗｓの機能であって，そのヘルプ表示プログラム等は，他のアプリケーション・ソフトウェアを実行している間にも利用可能であるから，当該機能は被告製品をインストールするか否かにかかわらず実現されており，一太郎をパソコンにインストールすることと本件発明の課題が解決されることは無関係であると主張する。しかし，たとえ，ヘルプ表示プログラム等がＷｉｎｄｏｗｓの機能であったとしても，一太郎がそのＷｉｎｄｏｗｓの機能を呼び出すように作られていない限り，問題となっている機能が実現されることはあり得ない。すなわち，その機能の表示画面自体が，一太郎をインストールしていないパソコンでは現れることがないのであり，その表示画面で実現される機能は，一太郎をインストールすることにより初めてパソコンに出現するのである。そもそも，本件において対象となっている直接侵害行為は，ユーザーが一太郎をパソコンにインストールする行為，すなわち，問題の画面が表示されて問題の機能が実現されるパソコンを生産する行為であって，ジャストシステムが主張するような，「『ヘルプモード』ボタンの指定に引き続いて他のボタンを指定すると，当該他のボタンの説明が表示される」という機能を実現する一般的，抽象的なパソコンを生産する行為ではない。以上のとおり，一太郎がインストールされたパソコンは，本件特許権を侵害するとともに，本件発明の課題が解決されているのであり，一太郎がインストールされなければ侵害は生じないから，一太郎は，課題の解決に不可欠なものであるといえる。今回の事件から、間接侵害規定の適用について判明したこと。・直接侵害行為が構成されるとなれば、要件（１）（２）（６）は認められることになるでしょう。・要件（３）については、対象製品が、ねじ、釘、トランジスタ等、世の中に広く普及している一般的な製品でなければ、これもクリアされるでしょう。「一太郎」は日本国内で何万本売れているから「日本国内において広く一般に流通しているもの」に該当するという文言解釈的な論理は成り立たないでしょう。・要件（４）が、今回の事件では議論になりました。他の事件でも、この点が議論になる場合が多いのではないでしょうか。・要件（５）は、一般的な解説書では、「権利者から警告状を受け取った後」であると解説されていますが、今回の事件では、「仮処分命令申立書の送達の時以降」を原告側は申し立てて、それが認められました。今回の事件では、差止請求のみであり、損害賠償を求めていないので、認定時期を遡る必要がなく、確実な時期にしたのでしょう。この点、今後の他の事件では争いになるかもしれません。損害賠償を求めていれば、期間が長いほど損害額は大きくなるはずですから。意見交換は下のコメント欄か私書箱をどうぞ。「今宵はここまでにいたしとうござりまする」（流行語大賞　１９８８年　流行語部門・金賞）。【運気アップ　クリック２つ】　人気blogランキング　ブログポポタル　【感謝】

  2005.02.08

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• 034 「一太郎」「花子」の製造禁止命令：法改正経緯編

  こんちくは。改正された間接侵害の規定（特許法第１０１条＊１）が平成１５年１月１日に施行されました。今回の事件は、この改正された間接侵害の規定が適用されました。この間接侵害の規定の改正の経緯についてです。「産業構造審議会知的財産政策部会法制小委員会報告書」には、以下が記載されています。「　ソフトウェア関連発明の権利保護においては，現行の客観的要件のみを採用する間接侵害の規定では捉えられないものが増加することが想定される。また，昭和３４年に導入されて以来見直されていない，客観的要件のみを採用する現行規定については，ネットワーク上の問題に限らず，十分な実効性が確保されているか，問題点として指摘する声も多い。この問題を解消するため，間接侵害成立の要件を見直し，主観的要件を導入して救済の範囲を拡大すべきである。」つまり、ソフトウェア関連発明に対して保護強化を行うために、間接侵害規定の改正を行うとしたものです。また、産業構造審議会知的財産政策部会第４回法制小委員会　配付資料の「資料２　特許法における間接侵害規定のあり方について」には、ワープロソフトを例として「方法クレームとプログラムの多用途性（１０１条２号）」を説明しています。もちろんのことながら、これは例であり、具体的なことを示しているわけではありません。しかし、このような経緯で法改正が行われたわけですから、ジャストシステム側も充分に、今回のような事件が起こるだろうと予測でき、研究してきたのではないでしょうか。このような問題を解決するために法改正が行われた上は、そのような問題が解決されてしかるべきでしょう。一太郎発売（１９８５年２月「ｊＸ－ＷＯＲＤ太郎」発売、ジャストシステムＨＰより）よりも前にワープロを製造していた企業（日本で最初のワープロは１９７８年９月発売）は、その製品について特許出願していたのは当然でしょう。今回の判決に対する世間の反応を見ると、松下電器に非常に厳しい意見、そして、ジャストシステムには好意的な意見が多いです。ジャストシステムにとって、この反応は、松下電器以外の他社（かつてのワープロメーカー）の特許権行使を牽制することになりそうです。侵害者側が有利に立つことはないのか？というひねくれたことを考えてしまったようです。ここまで読んで頂いた皆さんにおまけです。「産業構造審議会知的財産政策部会法制小委員会報告書」の中で、次の２つが問題として取り挙げられています。これらの問題も、改正された間接侵害の規定によって、これから解決されていくでしょう。つまり、次に起きる事件として考えられるものです。（１）プログラムの部品（モジュール）の開発・供給（２）コンピュータ・システム製品群の販売＊１特許法第１０１条（侵害とみなす行為）次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。　一　特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為　二　特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為　三　特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為　四　特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為意見交換は下のコメント欄か私書箱をどうぞ。「今宵はここまでにいたしとうござりまする」（流行語大賞　１９８８年　流行語部門・金賞）。【運気アップ　クリック２つ】　人気blogランキング　ブログポポタル　【感謝】

  2005.02.07

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• 033 「一太郎」「花子」の製造禁止命令：先行技術文献編

  こんちくは。昨日のブログで「技術系古本市場高騰か！」などと書いてしまいましたが、冗談です。確かに、ソフトウェア関係の本は、特許性判断の上で非常に価値があります。しかし、需要はあまりに少ないので、古本が高くなるようなことはないでしょう。公知、公用、文献公知（インターネット公知含む）となっている技術から容易に発明することができた場合に、進歩性がないということで特許になりません＊１。また、仮に特許になったとしても、無効理由があるということで、無効審判によってその特許権は消滅したり、侵害裁判では権利濫用として侵害とは認められないこととなります。公知、公用、文献公知の中で、裁判等で争われる際に証拠として用いられるのは、その確実性から、文献が一番多いです。その中でも、技術を発明として記載してある文献が新規性・進歩性を判断する上で比較しやすいです。ですので、特許公報が先行技術文献として用いられる場合が多いです。しかし、ソフトウェア発明の場合、初期の頃（今回の特許出願が行われた平成元年より以前）は、大多数の人はソフトウェア関連の発明は特許にならないと思っていたので、ソフトウェア関連の特許出願件数はわりと少なかったです。そのため、先行技術文献としては、特許公報ではなく、一般技術文献、例えば技術を説明した教科書的な解説本や、ソフトウェア技術系の雑誌、辞書、ソフトウェア製品のマニュアル等が用いられることが多いという特徴をもっています。特許庁（特許電子図書館サービス）も特許公報の検索システムだけでなく、コンピュータソフトウェアデータベース（ＣＳＤＢ）を特別に用意するほどです。さて、具体的に、どのような文献が証拠になるかについて、今回の２つの事件「H16. 8.31 東京地裁 平成15(ワ)18830等 特許権 民事訴訟事件」「H17. 2. 1 東京地裁 平成16(ワ)16732 特許権 民事訴訟事件」から拾ってみました＊２。（１）昭和６４年１月１日発行の「現代用語の基礎知識１９８９」（２）昭和６４年１月１日発行の「月刊アスキー（１９８９年１月号）」（３）昭和６３年３月３０日発行の「電子情報通信ハンドブック」（４）昭和６１年１１月２０日発行の「図解コンピュータ百科事典」（５）昭和６１年４月２５日発行の「ＪＳｔａｒワークステーション」（６）昭和６１年１２月１１日公開の特開昭６１－２８１３５８の公開特許公報（出願人：三洋電機等）（７）昭和６１年５月発行の「日経バイト」（８）平成元年４月１４日発行の「一太郎Ｖｅｒ．４　活用編」特許公報はわずかに１件、他は一般文献です。特許公報であれば、特許電子図書館サービス等のデータベースが整備されているので、わりと検索しやすいです。ソフトウェア特許に関する難しさは、このような先行技術文献調査にもあります。なお、上記文献の中で、特に（５）については、７か所引用されています。アイコン、マウス、ワークステーション、デスクトップ、ウィンドウ、インタプレス、ＷＹＳＩＷＹＧ、電子メール、イーサネット等の技術に関しては、有用な文献になるはずです。＊１進歩性は、特許法第２９条第２項に規定されています。第２９条（特許の要件）産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。　一　特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明　二　特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明　三　特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明２　特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。＊２特許出願後の文献として以下のものが引用されています。平成２年５月２５日発行の「岩波情報科学辞典」平成１３年１月１日発行の「現代用語の基礎知識２００１」平成１４年１月１日発行の「情報・知識ｉｍｉｄａｓ２００２」平成１４年１月１日発行の「情報・知識ｉｍｉｄａｓ２００２ 別冊付録 ＩＴ用語／カタカナ・略語辞典」意見交換は下のコメント欄か私書箱をどうぞ。「今宵はここまでにいたしとうござりまする」（流行語大賞　１９８８年　流行語部門・金賞）。【運気アップ　クリック２つ】　人気blogランキング　ブログポポタル　【感謝】

  2005.02.06

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• 032 「一太郎」「花子」の製造禁止命令：まだ続くのか編

  こんちくは。しつこいと思われるかもしれませんが、まだ書きます。本日（２月５日）の日経新聞によると、「「一太郎」希望者に変更ソフト」という記事がありました。希望するユーザーに対しソフトの一部変更に応じる検討を始めているそうです。そして、その検討案とは、以下のようなものです＊１。「ヘルプモード」ボタンについて、（１）マウスの絵を抹消する（２）絵文字ではなく「ヘルプモード」などの文字のみとする。ということで、今回は、なぜそのようなこと（ソフトの一部変更）が必要なのか、ということについてです。つまり、製造と販売することだけが禁止されただけで、使用するのまでは禁止されていないのじゃないかということに対してです。「実施行為独立の原則」というものがあります。　「実施行為独立の原則」とは、特許権の効力上、各行為はそれぞれ独立であり、１つの行為が適法であるからといって、他の行為が適法であるとは限らないことをいう。　すなわち、たとえば、Ａが違法に特許品を業として製造する行為は、その物の販売をすると否とにかかわりなくそれ自体で侵害行為である。また、ＢがＡからその物を業として購入---購入自体は、原則として（輸入の場合を除く）、違法ではない---して、これを業として使用する行為も侵害行為である。＊２くだけていうと、特許権者は、メーカー（製造者）、小売店（販売者）、ユーザー（利用者）の誰に対しても権利行使を行うことができるということです。このうち誰に権利行使するかは、特許権者の意思によるわけです。ですから、今回の事件の場合、訴えられたのは製造者であるジャストシステムだけですが、特許権者の意思によっては、街の家庭電器量販店、パソコンショップ、インターネット上のショップ等の「一太郎」を売っているお店に対しても販売するなという権利行使も可能です（可能性の話ですよ。一般には行いません）。さらに、「業として」一太郎を使用している人に対しても使用するなという権利行使も可能です。ただし、「業として」の実施でなければ、侵害にはなりません（２００５年１月１４日、１５日のブログ参照）。ですので、個人的・家庭的な実施であれば、特許権の侵害にはなりません。安心してください。個人だけ・家庭だけで使っている「一太郎」は侵害にはなりません。しかし、それ以外の使用は問題となります。ですので、今回の「ソフトの一部変更」ということを行うわけです。＊１これは私が、昨日（２月４日）のブログで指摘した回避案です。キーボードが打ちにくいと思ったら、やたら胸が反っていました。咳払いがでるなぁ。エッヘン。花粉症かぁ。＊２「特許法概説　第１３版　吉藤幸朔著、熊谷健一補訂」　より引用しました。これから取り上げていきたい事項（かなりしつこい）（１）なぜ今、この事件なのか（間接侵害規定改正との関係）既に改正の時から、このような事件は予定されていた！（２）知っておきたい先行技術技術系古本市場高騰か！意見交換は下のコメント欄か私書箱をどうぞ。「今宵はここまでにいたしとうござりまする」（流行語大賞　１９８８年　流行語部門・金賞）。【１・２の３でクリックお願いします。では、いちにぃのぉ～】　人気blogランキング　ブログポポタル　【感謝】

  2005.02.05

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• 031 「一太郎」「花子」の製造禁止命令：回避編

  こんちくは。続きです。昨日は、家計簿事件と一太郎事件とを分ける分水嶺について書きました。特許を回避するためには、「一太郎」「花子」を家計簿事件の射程範囲内に入れてあげればいいわけです。ジャストシステムが、松下電器産業の特許を回避するための設計変更案は、「「一太郎」、「花子」の該当アイコンを「ジャストホーム２家計簿パック」のものに変更」してしまうことです。（本解決案、既にいろいろなところで公開されています。自分が最初ということはまずないですね。）家計簿事件と同じ判断がされることになります。したがって、アイコンではないと判断され、非侵害です。これならプログラムの書き換えも簡単です。また、従来のバージョンの製品にもパッチをあてるだけで回避可能ということになります。この点、たぶん理解がすすんでおり、株価も昨日（２月３日）は前日比２円安でした。意外と簡単に解決しそうだね、ということだと思います。しかし、Ｂｕｔ、にもかかわらず記者会見でジャストシステム側は、「パソコンに搭載されているウィンドウズの機能を使用している。このままではＯＳ（基本ソフト）の機能を利用するソフトは違法ということになってしまう。日本の大手ソフトメーカーとして、徹底的に争う」というコメントを出しているようです。回避案のような設計変更は念頭にないような感じです＊１。判決内では、「被告は，Ｗｉｎｄｏｗｓというマイクロソフト社のオペレーティングシステムそのものに，本件発明と同様の機能があるから，被告製品は「その発明による課題の解決に不可欠なもの」ではないと主張する。その主張の趣旨は必ずしも判然としないが，仮に被告がいうように，Ｗｉｎｄｏｗｓのヘルプ表示プログラム等によって，「『ヘルプモード』ボタンの指定に引き続いて他のボタンを指定すると，当該他のボタンの説明が表示される」という機能が実現されるとしても，別紙イ号物件目録ないしロ号物件目録記載の機能は，あくまで被告製品をインストールしたパソコンによってしか実行できないものであるから，被告製品は本件発明による課題の解決に不可欠なものであり，被告製品をインストールする行為は，本件特許権を侵害する物の生産であるといわざるを得ない。」とけんもほろろの対応です。コメントで取り上げた論理はもう一度立て直す必要があると思います。たぶん、コメントで取り上げている問題、次のようなことではないのかと思います。もしそうだとすると、ソフトウェアの特許関係者としては、非常に興味があるところです。現在のアプリケーションプログラムはＯＳなくして動作させることができません。ハードウェアであるＰＣにインストールするだけでは、そのアプリケーションプログラムは動作しません。そもそもＯＳなしではインストールさえもできません。ということは、アプリケーションプログラムの発明で、特許請求の範囲にその発明のみを記載したとしても、そのアプリケーションプログラムを動作させるためには、常にＯＳが裏で動いている必要があります。つまり、アプリケーションプログラムを動作させるにはＯＳが一体不可分となるわけです。すると、侵害者は、アプリケーションプログラムの作成者のみではなく、ＯＳの作成者も含めなければならないことになります。そうです。ウィンドウズ上で動作するプログラムを対象物件とするソフトウェア特許の侵害訴訟の際は、必ずマイクロソフトが顔を出すということになります。この点、ＯＳを特許請求の範囲内に含めないようにするというのがクレーム作成のテクニックとして検討されていますが、抜本的な解決が必要なのではないでしょうか。ぜひ、この問題を今回の事件で解決してほしいと一実務者は思ってしまいます。＊１損害賠償請求もあるのであれば、過去の損害も対象となりますので、徹底的に争うというのもわかります。しかし、今回の事件は、差止のみであり、損害賠償はありません。ということは、現在・将来だけが問題となっており、過去のことは問題になりません。設計変更で逃げるのが一番手っ取り早いはずです。最後までお読み頂いた方は、たぶんオープンソースソフトに関しての最近のＩＢＭ、サンの特許の無償解放にも興味があると思います。こちらも参考までに読んでみてはいかがでしょう。同じこのブログ内の記事です。〔029 特許の無償開放 （2005年1月27日ブログ）〕意見交換は下のコメント欄か私書箱をどうぞ。「今宵はここまでにいたしとうござりまする」（流行語大賞　１９８８年　流行語部門・金賞）。【運気アップ　クリック２つ】　人気blogランキング　ブログポポタル　【感謝】

  2005.02.04

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• 030 「一太郎」「花子」の製造禁止命令：アイコン解釈編

  こんちくは。昨日からの続きです。あの判決で、ジャストシステムの株価が前日比ストップ（１００円）安の５００円でした。１件の特許が株価を左右する。これからは、「特許を読めば株が読める」がはやるのでしょうか（冗談）。回避策を検討しました。松下電器とジャストシステムの争いは、今回の事件のみではなく、密接に関連するものがもう一つあります。それは、「H16. 8.31 東京地裁 平成15(ワ)18830等 特許権 民事訴訟事件」（以下、「家計簿事件」といいます）です。今回の事件は、「H17. 2. 1 東京地裁 平成16(ワ)16732 特許権 民事訴訟事件」（以下、「一太郎事件」といいます）です。家計簿事件は、侵害していないと判断されました（ジャストシステム側が勝ち）。一太郎事件では、侵害していると判断されました（松下電器産業側が勝ち）。それにもかかわらず、この２つの事件、かなり似ています。（１）当事者は同じです。原告と被告の立場は異なります。家計簿事件では、本訴原告がジャストシステム、本訴被告が松下電器産業。一太郎事件では、原告が松下電器産業、被告がジャストシステムです。（２）争いとなっている特許は同じです。特許番号　　第２８０３２３６号。（３）争点は、以下の通り。　・家計簿事件の争点　　（Ａ）　本件製品をインストールしたパソコンに表示される「？」ボタン及び「表示」ボタン等は，本件各構成要件にいう「アイコン」に該当するか。　　（Ｂ）　間接侵害（特許法１０１条２号，４号）が成立するか。　　（Ｃ）　本件特許に無効理由が存在することが明らかか否か。　・一太郎事件の争点　　（Ａ）　被告製品をインストールしたパソコンに表示される「ヘルプモード」ボタン及び「印刷」ボタンは，本件各構成要件にいう「アイコン」に該当するか。　　（Ｂ）　間接侵害（特許法１０１条２号，４号）が成立するか。　　（Ｃ）　本件特許に無効理由が存在することが明らかか否か。（４）裁判官の３人のうち、２人は同じです。裁判長は同じです。（５）家計簿事件の後、わずか５か月後に一太郎事件の判決です。その間に、一太郎事件の判決に影響を与えるような、法改正、判決はありませんでした。なお、（４）は、裁判結果に何ら影響を及ぼすものではありません。同一人格による判断だということから２つの事件の違いを強調するためのものです。さて、何が違うかというと、対象物件が違います（当たり前ですね）。家計簿事件では「ジャストホーム２家計簿パック」であり、一太郎事件では「一太郎」「花子」です。この争点の中で、１番目の「アイコン」について、興味深いことがわかりました。判決の中で「アイコン」の定義について論じています。その際、請求の範囲、発明の詳細な説明、出願当時の技術文献を根拠に論じています（この方法は、オーソドックスです）。そして、「アイコン」の定義について、以下の通りです。・家計簿事件では、「本件発明にいう「アイコン」とは，「表示画面上に，各種のデータや処理機能を絵又は絵文字として表示して，コマンドを処理するもの」である」。・一太郎事件では、「本件発明にいう「アイコン」とは，「表示画面上に，各種のデータや処理機能を絵又は絵文字として表示して，コマンドを処理するもの」であり，かつそれに該当すれば足りるのであって，本件明細書の記載によっても，本件特許出願当時の当業者の認識においても，それ以上に，ドラッグないし移動可能なものであるとか，デスクトップ上に配置可能なものであるなどという限定を付す根拠はない」。違いが分かってもらえたでしょうか。一太郎事件の定義は、家計簿事件の定義の文言をそのまま含んでいます。そして、その家計簿事件の定義だけでよいとしています。つまり、ドラッグ等できなくても「表示画面上に，各種のデータや処理機能を絵又は絵文字として表示して，コマンドを処理するもの」であればアイコンであるとしています。そして、家計簿事件では、「「？」や「表示」は，表示画面上にあり，処理機能を表示しているものの，デザイン化されていない単なる「記号」や「文字」であって，絵又は絵文字とはいえないことは明らかであるから，本件各構成要件における「アイコン」には該当しない」としています。つまり、アイコンではないと判断しています。一太郎事件では、「「ヘルプモード」ボタン及び「印刷」ボタンは，表示画面上に，各種のデータや処理機能を絵又は絵文字として表示して，コマンドを処理するものである。よって，被告製品の「ヘルプモード」ボタン及び「印刷」ボタンは，本件発明における「アイコン」に該当する」としています。つまり、アイコンであると判断しています。ジャストシステム側は、「アイコン」は，「デスクトップ上」へ配置可能なことが必要と主張（家計簿事件の定義に更なる要件が必要であるということ）しましたが、認められなかったということです。これが、２つの事件を分けた分水嶺ということになります。「アイコン」の定義が、請求の範囲、発明の詳細な説明、出願当時の技術文献を根拠にしている以上、一太郎事件で家計簿事件の定義を変更しようとするのは困難です。とすると、家計簿事件の判決の時から、今回の一太郎事件の結論は暗示されていたのかもしれません（まったくの後講釈です）。続きます。次回は、回避方法についてです。なお、このブログでは、家計簿事件、一太郎事件ともに、論理的展開という技術論のみを対象にしています。興味対象は、論理のみです。「今宵はここまでにいたしとうござりまする」（流行語大賞　１９８８年　流行語部門・金賞）。【縁起物　クリック２つ】　人気blogランキング　ブログポポタル　【感謝】

  2005.02.03

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• 02F 「一太郎」「花子」の製造禁止命令

  こんちくは。企業の主力製品に製造販売禁止命令がでたということ、これは企業の生命線に関することということで大きく報じられたのでしょう。特許権とは権力であるという考えを一層強くします。さて、この判決は既に最高裁のホームページに掲載されています。「H17. 2. 1 東京地裁 平成16(ワ)16732 特許権 民事訴訟事件」（原告　松下電器産業株式会社、被告　株式会社ジャストシステム）です。争点は以下の３つです。（１）　被告製品をインストールしたパソコンに表示される「ヘルプモード」ボタン及び「印刷」ボタンは，本件各構成要件にいう「アイコン」に該当するか。（２）　間接侵害（特許法１０１条２号，４号）が成立するか。（３）　本件特許に無効理由が存在することが明らかか否か。（１）については、非常に興味あることで、これから研究していきたいテーマです。明細書作成にも大きくかかわってきます。（２）については、間接侵害の規定が、改正（平成１５年１月１日施行、特許法１０１条２号，４号）されて、最初に適用された事件ではないでしょうか。（３）については、被告側は権利濫用ではないかと主張しているということです。この主張は、裁判では認められませんでした。この分野（ソフトウェア技術）の裁判所における進歩性の判断基準を研究するのにいい材料になりそうです。この判決の中で、私が特に注目したいのは、２つあります。一つ目は、「装置特許（物の発明）」でソフトウェアをおさえることができたことです。「プログラムをインストールしたパソコン」は、最終的な生産者はパソコンメーカーになります。そのプログラムを作成したソフトウェア会社に対して、「装置特許（物の発明）」で攻めるのは困難でした。それをこの事件では、ソフトウェア会社に対しても「装置特許（物の発明）」が有効であることを明確にしました。二つ目は、特許法１０１条２号，４号の間接侵害成立の要件の具体的な判断がでたことです。それぞれの要件「本件発明による課題の解決に不可欠なものである」、「日本国内において広く一般に流通しているものでないこと」、「その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら」は、わりとあっさりと認定されています。「その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら」の要件は、「原告が申し立てた仮処分命令申立書の送達の時以降，本件発明が特許発明であること及び被告製品が本件発明の実施に用いられることを知ったものと認められる」とされ、「仮処分命令申立書の送達の時」以降なら知りながらといえることがはっきりとしました。実務家としては、それ以前ならどのような場合が該当するのかを知りたいところだと思います。続く。「今宵はここまでにいたしとうござりまする」（流行語大賞　１９８８年　流行語部門・金賞）。【縁起物　そんなクリックです】　人気blogランキング　ブログポポタル　【感謝】

  2005.02.02

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• 029 特許の無償開放

  こんちくは。そうじきに言え、ホーキはどうした＊１。「ＯＳ特許　米サン、１６００件無償解放　ＩＢＭに続き知財戦略を転換」（２００５年１月２６日　日経新聞　夕刊）という記事がありました。数日前にもＩＢＭが同様なことを行ったことが報道されました。以下のことを考えてみました。（１）まず持てる者の戦略であるということです。ソフト特許を保有していなかったら、このようなことはできませんでした。つまり、オープンソースソフトの世界において非難されていたソフト特許出願、つまりオープンソースソフトをおびやかしかねない特許出願を延々と行っていなければ、このような戦略自体がとれなかったことです。単に、この分野で特許出願する必要がなくなったと考えるのは早計です。ＩＢＭ、サンがこの分野の特許出願をしなくなるとは考えられません。これからの特許出願は、今回の無償開放のリストには入っていないのではないでしょうか。（２）無償開放による利益として以下のことが考えられます。　（ａ）新聞によれば、「最終的には企業や団体など利用者の利益につながり、市場全体も拡大する」ということです。パイ（市場）が大きくなれば、自分の分け前も自動的に増えるということでしょう。　（ｂ）しかし、直接に利用者の利益につながることとしたならば、無償開放ではなく、権利の放棄（権利そのものを消滅させる）という手段もあります。この放棄という手段を取らなかったのは何故か？ということを考える必要があります。　（ｃ）ひとつは、マイクロソフトへの攻撃のためにとっておく。更に、オープンソースソフト業界を中立の立場にし、ＭＳの攻撃をしやすくする。もし、開放していなかったら、たとえＭＳへの攻撃だとしても、次は自分達への可能性があるということで、ソフト特許不要論の議論が強行に展開されてしまうでしょう。開放によって、オープンソースソフト業界は何も文句は言わなくなるでしょう。少なくとも弱まるでしょう。　（ｄ）ふたつめは、他者の技術をコントロール下におくことができます。つまり、特許の利用にあたっては、ホームページ上での簡単な手続きとはいえ、契約手続きが必要なわけですから、だれがどのような技術を開発あるいは必要としているという情報が集まってきます。この情報をどのように利用するかは予想がつきません。しかし、簡単な例では、その特許を利用するのなら、こちらの特許（無償開放されていない特許）も必要ですよ。というライセンス交渉が考えられるでしょう（○○のカングリであればいいのですが）。　（ｅ）みっつめは、貢献に応じて利益を得てもいいという論理を作りやすくなることです。オープンソースソフト業界で、収益を上げるというのは慣習的な面等で困難なところがあります。しかし、巨額を投じた知的財産である特許を開放することによって、オープンソースソフト界に対して貢献しているということをアピールできたわけです。当然に、その知的財産に見合うだけの収益を上げてもいいという論理は成り立つでしょう。（３）なんといってもすばらしいのは、技術的範囲に属する属さないという判断（侵害するかしていないかの判断、またはその発明を使っているかいないかの判断）という非常に困難な作業をする必要がなく、この業界に貢献していること、第一人者であることを知らしめたことだと思います。精査してみたら、１６００件中、本当に必要な特許というのは、○○件ということだってありえます。＊１　「正直に言え、（特許権の）放棄はどうした」のおやじギャグです。「そうじきに言え（正直に言え）」は、Ｒ２５に出てました。「今宵はここまでにいたしとうござりまする」（流行語大賞　１９８８年　流行語部門・金賞）。【縁起物　クリック２つ】　人気blogランキング　ブログポポタル　【感謝】

  2005.01.27

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• 012 摩訶不思議

  『「パーフェクト」は当行が特許を取得したサービスですので、安心してご利用いただけます。』＊１　これは、某銀行のホームページ（２００５年１月４日現在）から、拾ってきたものです。この中で、「特許を取得」と言っているのは、ビジネスモデル特許として、日本で非常に有名になった特許（パーフェクト特許といいます。特許３０２９４２１号）のことです。　さて、これがなぜ摩訶不思議かと言うと、「銀行が特許取得！」ということではありません＊２。　「特許を取得したから安心して利用できる」という点です。特許を取得したことは、何ら品質・性能がよいということを保証するものではありません＊３。　では、何が「安心」なのでしょうか？考えられるのは、次の２つです。　（１）パーフェクトというサービスは、当行しか実施することができません。したがって、他行が行っていることは、権利侵害です。他行の業務は、差止対象です。ですので、当行がその気になれば、他行で同じようなサービスは将来受けられなくなるかもしれませんよ。でも、当行のサービスは将来も受けることができるという点で安心ですよ。　（２）他行のサービスを利用していること、つまり、お客様が他行のシステムを使用していることも特許侵害です＊４。当行のサービスを利用していれば、お客様は当行から訴えられることがないということで安心ですよ。　こうなると、安心するのは、お客様ではなく、当行ではないか。と考えるでしょう。その通りだと思います。特許は、自分のことを考えて出願・取得するものです。資本主義の原則ですね。でも、その代償として、発明の内容を開示しなければ特許取得することはできません。これで、技術進歩のバランスを取っているのです。＊１特許を取得した発明の名称は、「振込処理システム」というものです。また、そのホームページには、『当行がビジネスモデル特許を取得した画期的なサービスです。』ともあります。特許取得ということは宣伝になります。＊２特許というと、製造業のメーカーしか出願しないと思われているかもしれませんが、そんなことはありません。この特許に対して異議申立事件が起きましたが、それは特許権者の銀行と他の日本の３つの都市銀行という銀行対銀行の戦いでした。それまでだったら、メーカーが代理戦争をやっていたでしょう。この特許の価値は、公になっているニュースでは、地方銀行がライセンスを受けており、年間数十億のロイヤリティ収入があるようです。＊３特許取得と品質保証とは関係がないということについては、後日、詳しく説明します。＊４この振込処理システムを生産、販売することの他に、使用すること、つまり、お客様が「業として使用すること」も侵害行為になります（特許法２条３項、６８条）。ただし、特許権者が一般ユーザを侵害行為で訴えるということは、まずありませんので、ご心配なく。

  2005.01.04

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