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ベッドに横たわり、仄暗く、無機質な天井を見ていた。 スポットライトの光源をしばらく見つめていると、 視線を外した時に、白い壁に子供の描いたりんごのような赤い丸が浮かぶ。 目で追うと、りんごは逃げてゆく。 視線の対象物を他へやると、りんごも付いてくる。 緊張感で少し胸が痛い。 ・・・文明も医療も進歩した。 なのに、どうしてこんな拷問じみた事をせねばならぬのか。 私は口からチューブを差し込まれ、泣きながら嘔吐する。 ・・・我慢できない。 反射だもの。 『あぁ、もう』医師は、私がえづく度に、 『鼻から入れれば良かったのに』と、看護師さんを責めるような口調で言う。 ちげーよ!以前、鼻の骨がカメラを入れる仕様になってないと言われたから、 予め口からをお願いしたんだ。 鼻の奥を突かれて、無駄な麻酔を施されるのは御免だからな。 何度も伝えたよチクショーめ。 でなきゃ、誰が好き好んで、こんな目に遭いたいか! 心の中は、診てくれる医師に対する罵詈雑言で一杯。 しかし髪を振り乱して嘔吐を堪えるのに精一杯。 逆流性食道炎。 私に下された診断だった。 なるほど、ファイバースコープの胃カメラが映した私の食道は、シロート目にも真っ赤。 しかし、潰瘍が無いと知った医師は、面白くなかったらしい(そう、見えた)。 吐き気で眠れなかったり、胃痛で目覚めるほど辛かったのに、 病名が下されたら、そんなもんか、と言う感じだった。 人間の内臓という奴は、思っているより頑健なもんだ。 有難く思わなければならない。 ・・・ いやいやいや、 昨日の晩まで、 『あたしが入院なんかしたら、りっちゃんを見てくれる人がいない!』 と、恐れおののいた気持ちを忘れるな! 取り敢えず、週末のプチ同窓会には大手を振って参加出来る! 万歳。 ・・・出来れば、お酒も飲みたいなーっと。(医師には内緒) 『若い人はねえ、お薬貰っちゃうと(胃カメラ)逃げちゃうからね』と、年配の看護師さん。 『だから、逃げないうちに捕まえて、カメラ予約入れるの。』 なるほど・・・なるほど。 でも、あんな拷問、普通は逃げますわな。 『ポリープ持ちなら、一年に一度くらい(胃カメラ)飲まなきゃ。これをきっかけにヨロシクね』 前もそんなこと言われたなぁ・・・。 胃カメラは苦手だ、と正直に伝えると、 『得意な人なんか居ません!』 ・・・大外狩り一本。 返す言葉も無い。 そして、財布は確実に軽くなった・・・(涙) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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