テーマ:BAR大好き!!(735)
カテゴリ:BAR
神戸・元町駅で降り、海側へ足を向ける。夕方というにはまだ早い日暮れどき。いつもの道。いつものビル。そして、いつものBARのドアを押す。
「いらっしゃい」とマスターが小さな声で一言。いつもと変わらぬ柔和な表情。店が開いて早々、すでに常連客が1人、2人。テレビを観ながら、マスターと談笑中だ。 このBARとの付き合いも長い。もう20年以上にはなる。神戸で仕事をしていた頃、まともなオーセンティックBARなどまだ少なかった。そんな時代に出合った、オアシスのような存在だった。 「Abuはち」。昭和30年(1955)のオープン。今年で、もう52年目になる老舗だが、老舗にありがちな、重苦しさ、堅苦しさは、ない。赤レンガの内壁が温かい雰囲気を生み、むしろ、家庭的な心地よさすら感じられる。 三代目のマスターのHさんとの付き合いも長いが、実はいまだに、お互い一度もきちんと自己紹介すらしたことはない。「そんな堅苦しいことは抜きで」とマスターが言った訳ではないが、そのまま20年余が過ぎた。 もっとも、元来、口数の少ないマスターは客にあまり話しかけない。一人で静かに飲みたいときは、そっとしておいてくれる。客との距離感の保ち方がちょうどいい。 どこがどうというBARではない、シンプルな酒場。「売りは何か」と尋ねられたら困ってしまうほど。バック・バーにオールド・ボトルは山ほどあるが、マスターがそのことを話題にしたのは記憶にないし、オールド・ボトル愛好家が集まるBARでもない。 集まる客はほとんどが、シンプルな水割りやハイボールを味わっている。名物はカウンターに置かれたオリジナル・ブレンドの樽のウイスキーだが、銘柄はいまだ謎だ。マスターに聞いても、おそらくは笑って、答えない。 久しぶりに「Abuはち」のカウンターに座ると、この空間は、この空気は20年前とほとんど変わっていないことに気づく。変わったのは、僕とマスターが、お互い齢を重ねたことだけ。 昔はよく、最初の1軒のカウンターとしてここに座り、「さぁ、今夜もBARホッピングに出かけるぞ」と気合いを入れた。ぷらっと来て飲んで、さっと引き上げるのが僕の流儀だった。そんな頃を懐かしく思う。 さぁ、今夜も「Abuはち」という港を出て、神戸の「酔夜の海」に漕ぎ出そうか。 【Abuはち】神戸市中央区元町通2丁目7-8 電話078-31-2798 午後5時~11時半 日祝休 ノー・チャージが嬉しい。 こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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