JR東京駅の丸の内側出口から歩いてそう遠くないところに、「東京會舘」本館はある(「会館」ではなくて「會舘」と表記する)。
東京會舘をあまりよく知らない方のために少し解説しておくと、1922年(大正11年)創業で、宴会場とフランス料理店を備えた格式と風格のある建物である。ホテルのような印象も受けるが、宿泊施設はない。
現在の東京會舘は1971年(昭和46年)、同じ丸の内エリアで移転したので、建物としては2代目であるが、その歴史と伝統を十分に受け継いでいる。
そして、この東京會舘のもう一つの名物は、「メイン・バー(MAIN BAR)」。このBARは文字通り、日本のBARの歴史を語る際、欠かせない酒場。数多くのバーテンダーがここから育ち、沢山のカクテルがここから日本全国へ普及していった。
内装などは旧・東京會舘のメイン・バーのものをできるだけ移築している。従って場所は移っても、店内は雰囲気はまるで戦前の昭和にタイムスリップしたかのようだ(カウンターの椅子は今でも修理しながら大切に使っている)。
東京會舘は敗戦直後の1945年、米進駐軍に接収された。そして、GHQ本部に近いこともあって、メイン・バーは米軍将校専用のBARとなった。このBARを利用した米軍将校を通じて、そこで働く日本人バーテンダーは、それまであまり知らなかった新しいカクテルを次々と覚えていく。
このメイン・バーからは日本にマティーニを広めた恩人とも言える今井清氏(故人)も育った。そして、この東京會舘メイン・バーから日本じゅうのホテルや街場のBARへ広がったスタンダード・カクテルは数知れない。
例えば、マティーニ、ジン・リッキー、モヒート、マルガリータ、ブル・ショット…。なかでもこのメイン・バー生まれで一番有名なのは、GHQ最高司令官・マッカーサー元帥もこよなく愛したという「會舘フィズ」=写真左上=と、今や定番となったマティーニ・オン・ザ・ロック=写真右( (C )東京會舘 )=だろう。
「會舘フィズ」とは、簡単に言えば牛乳入りのジン・フィズ。この歴史的なカクテルは「朝から目立たないように、こっそり酒を味わいたい」という将校の求めに応じて、考案されたという面白いエピソードを持つ。マティーニ・オン・ザ・ロックは、通常はカクテルグラスでショート・スタイルで飲むマティーニを、ロック・スタイルで客に提供するという当時としてはやや冒険的な試みだったが、多くの客に支持された。
レモンジュースが入るジン・フィズに牛乳を加えるなんて、「固まってしまうんじゃない?」と思われるだろうが、そこはプロである。ミルクを入れるタイミングやシェイクの仕方などで、固まらないようにうまくつくる術を心得ている。
私は、大阪のBARで時々この「會舘フィズをつくってほしい」頼むことがあるが、大阪のバーテンダーも「これ結構、難しいんですよ」と言いながら一生懸命、固まらないようにつくってくれる。しかし、やはり発祥の地は東京會舘である。皆さんももし機会があれば、歴史の重みが詰まった素晴らしいカクテルの数々を、ぜひメイン・バーで味わってみてほしい。
【東京會舘メイン・バー】東京都千代田区丸の内3-2-1 電話03-3215-2113 午前11時半~午後10時 日祝休
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Last updated
2021/06/26 03:56:35 PM
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うらんかんろ
大阪・北新地のオーセンティック・バー「Bar UK」の公式HPです。お酒&カクテル、Bar、そして洋楽(JazzやRock)とピアノ演奏が大好きなマスターのBlogも兼ねて、様々な情報を発信しています。
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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。▼コロナ禍の家飲みには、Bar UKのハウス・ウイスキーでもあるDewar's White Labelはいかが?ハイボールに最も相性が良いウイスキーですよ。▼ワンランク上の家飲みはいかが? Bar UKのおすすめは、”アイラの女王”ボウモア(Bowmore)です。バランスの良さに定評がある、スモーキーなモルト。ぜひストレートかロックでゆっくりと味わってみてください。クールダウンのチェイサー(水)もお忘れなく…。
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