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Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2021/03/19
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カテゴリ:ITTETSU GALLERY
 ITTETSU GALLERY:もう一つの成田一徹(141)~(160)

 バー・シーンを描いた切り絵で有名な成田一徹(1949~2012)ですが、実は、バー以外をテーマにした幅広いジャンルの切り絵も、数多く手掛けています。花、鳥、動物、職人の仕事、街の風景、庶民の暮らし、歴史、時代物(江戸情緒など)、歴史上の人物、伝統行事・習俗、生まれ故郷の神戸、小説やエッセイの挿絵、切り絵教則本のためのお手本等々。

 今回、バー・シーンとは一味違った「一徹アート」の魅力を、一人でも多くの皆さんに知ってもらいたいと願って、膨大な作品群のなかから、厳選した逸品を1点ずつ紹介していこうと思います(※一部、バー関係をテーマにした作品も含まれますが、ご了承ください)。
 ※故・成田一徹氏の切り絵など作品の著作権は、「Office Ittetsu」が所有しております。許可のない転載・複製や二次利用は著作権法違反であり、固くお断りいたします。


(141)「SAKENO SAKANA」の表紙のために 1996年 
 ※東京・渋谷にあった日本酒バー「西蔵」(現在は閉店)が発行した、酒と文化のライブ情報誌「SAKENO SAKANA」の表紙のために制作。一つの切り絵が連続するような構図、スタイルという斬新な作品だが、原画が残っていないので、一徹氏が実際にそのように切ったのか、それとも一徹氏の依頼を受けた情報誌のグラフィック・デザイナーが制作意図を生かしながら、パソコン上で編集・加工したのかはよく分からない。



(142)パリのメトロ 1990年代後半 
 ※これもパリをテーマにした一連の作品の一つ。訪れたパリで「切り絵になりそうなもの」を探していた一徹氏の眼には、この歴史的文化財のような駅の出入り口のフォルムは、格好の候補になったに違いない。







(143)道路公団のパンフのために 1988年&89年 
 ※1988年と89年、一徹氏は当時の日本道路公団(現在は、NEXCO東日本、西日本、中日本などに分割民営化)からパンフレットの表紙の切り絵を依頼された。最初の2枚が88年(表紙と裏表紙)、最後の1枚が89年の表紙作品。いずれもカラー作品だが、色使いについて一徹氏はそれぞれ違う発想で制作しているのが面白い。



(144)覚書「江戸のビジネス」の挿絵のために 1993年
 ※月刊誌「実業の日本」誌上での記事、覚書「江戸のビジネス」(1993年6月号)のための挿絵。白紙だけで切った作品である。モノトーンの切り絵の場合、それまで黒紙のみを使っていた一徹氏だが、この頃から、白紙を切って黒紙に貼り付ける手法を手掛け始めた(バーの切り絵では、少し遅れて90年代後半から白紙、黒紙を併用し始めた)。結果的に切り絵の表現の幅を広げることになったこの「白黒逆転」の発想は、おそらくは、一徹氏が最初に生み出したのではないかと思う。



(145)松本清張 1990年代前半
 ※言わずとしれた、戦後日本を代表する作家の一人(1909~1992)。とくに推理小説の分野では、膨大な数の名作を送り出した。代表作の一つ「点と線」は今なお日本の推理小説史上、最高傑作の一つとも言われている。
 この作品(切り絵)は、何にために何の媒体のために制作したかは不明だが、一徹氏の作風・スタイルから見て、冒頭のような時期の作品と思われる。下から見上げた顔の表情、そして中空の何かに万年筆で「清張」と署名するような姿。考えられないような大胆な構図には、ただ驚嘆するしかない。



(146)バー情景(一人飲む男) 1980年代前半
 ※これも一徹氏がバー空間の表現手法を模索していた時期の習作。第47回、第78回で紹介した水彩画(下の画像ご参考)と同じ頃の作品と思われる。マスター、カウンター、そこに座って飲む男という3点セットを描いている。マスターも客も外国人風。窓から見える光景は海。どこか外国の避暑地のバーのような雰囲気が伝わってくる。






(147)「丘をおりる道」の挿絵のために 1989年
 ※米国の作家、ティム・パワーズ(Tim Powers)の小説「丘をおりる道」<原題はThe Way Down The Hill>(早川書房「SFマガジン」198911月号掲載)のための挿絵。一徹氏はプロデビュー(1988年)直後から、早川書房発行のミステリー・マガジン、SFマガジンからしばしば仕事(挿絵)の依頼を受け、その関係は終生続いた。この小説のあらすじは承知していないが、バーで男女が酒を飲みながら語らうシーンを挿絵としたのは、一徹氏ならでは発想か。
 ティム・パワーズは、ジョニー・ディップ主演の映画「パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉」の原作者(原作は「幻影の航海<On Stranger Tides>)としても知られる。この映画には、ローリング・ストーンズのキース・リチャーズもチョイ役で出演したことで話題になった。


(148)クルラホンの白ユリ  2010年 
  ※プロデビュー前の1980年代半ば、一徹氏はバー好き仲間を集めて「グッドバー同好会」なるものをつくった。そして職場の友人のT氏とともに、会員向けに「グッドバー通信」を発行し、毎号、バーの切りを1点掲載した。上京後の多忙な時期、発行は一時中断されたが2005年頃から再び、「通信」を再開し始めた。
 これはその「再開・グッドバー通信」の第8号に掲載された作品。大阪キタのクルラホン(Cluricaun)というバーを取り上げた。心優しきマスターはソムリエ資格も持ち、店内では日本酒からワインまで多彩なお酒がリーズナブルに楽しめる酒場だったが、一徹氏が切り絵の対象として選んだのは、カウンターに飾ってあった金属製の器だった。
 そこにはワインボトルが冷やされ、白いユリがいつも添えられていた。クルラホンとはゲール語で「天使」の意。一徹氏は大阪に来れば時折、この「天使」の棲む居心地の良いバーを訪れ、明日への活力をもらったという。





(149)漱石の原稿用紙  1994年 
  ※夏目漱石は、一徹氏好みの著名人(作家)。たびたび切り絵にしている。「The Cigar Story 葉巻をめぐる偉人伝」(城アラキ氏との共著)では、切り絵漫画の主人公にして一章を費やしている。この2枚は、有名な漱石の自家製原稿用紙を描いた切り絵。
 1枚目の作品は、作家の半藤一利氏のエッセイ「歴史探偵かんじん帳」(当時、毎日新聞日曜版に1994~95年に連載)の第1回の挿絵のために制作したもの。用紙の上中央に「漱石山房」という篆書(てんしょ)があり、両側から龍の首(昇龍)が2つ描かれている。
 この原稿用紙も一徹氏好みだったようで、別の方のエッセイでも切り絵にしている(2枚目の作品=制作時期は90年代。右下の四角い空白は、連載のタイトルカットが入るための空白)。「昇龍」は縁起が良いモチーフ。一徹氏も昇龍のようにさらに「ビッグ」な切り絵作家になることを願って、日々努力していたのかもしれない。



(150)昇龍カクテル(2000年・辰年賀状のために)  1999年
 ※昨日の「漱石の原稿用紙」に続き、龍の話題。「昇龍」は生涯を通じて一徹氏の好きなモチーフだった。プロデビュー直後から晩年に至るまで、連載第7回の「昇龍」(下の画像1枚目ご参照)のような龍の切り絵を、たびたび制作している。
 一徹氏は個人的な年賀状にも、毎年、干支にちなんだ切り絵を制作していたが、2000年の辰年用にはこのような「昇龍」を描いた。1988年の辰年はモノクロームの作品(下の画像2枚目ご参照)だったが、この年は初めて部分的にカラーにした。
 「紅いマラスキーノ・チェリーを抱えた龍がカクテルグラス昇ってゆく」という一徹氏ならではの構図。バー空間の切り絵をライフワーク(得意)にしたアーチストならではの見事な発想である。







(151)ナナクサインコ  1990年年代
 ※一徹氏の作品には、鳥をテーマにした切り絵も多いが、なかにはカラーのものも多い。これは、切り絵の技法書のための手本として制作されたものだが、インコの切り絵は珍しい(ナナクサインコという品種らしい)。しかも、カラーの切り絵としてもかなり手の込んだ作品となっている(残念ながら、結果的に本には収録はされなかった)。


(152)ポートタワー  1980年年代前半 水彩
 ※プロデビュー前の作品で、スケッチブックに残されていた。ポートタワーは一徹氏の当時の職場(神戸港振興協会)の建物のすぐ隣にあり、としばしば絵のモチーフにもなった。この絵は水彩画だが、使う絵具の色を限定しているので、まるで水墨画のような雰囲気も感じさせる。第97回で紹介した「海王丸」(ペンと水彩=下の画像ご参照)もタッチは少し違うが、同じような色調で描かれており、同じ時期に描かれたと思われる。





(153)江戸情緒:なでしこと美女  2000年頃
 ※一徹氏は、浮世絵をベースに江戸情緒を描いた切り絵を何枚か手掛けているが、これは誰のどういう浮世絵を下敷にしたのかは、現時点では判然としない。また何の媒体に何のために制作したのかも不明だ。ただ、下絵(下の画像ご参照)までつくったうえで作品を制作していることから、お遊びでつくった訳ではないようだ。





(154)見つめる老女  1989年
 ※ミステリー・マガジン(早川書房刊)1989年11月号のための挿絵。白と黒だけでなく、グレーゾーンの紙(霧吹き手法で自ら加工した)も使って制作したユニークな作品だ。どの小説の部分で使用されたのかは、現時点では未確認。
 一徹氏は膨大な数の小説やエッセイの挿絵作品を残しているが、残念ながら、絵の付いている付箋(や絵の裏側に残されているメモ)などの情報は限りなく少ない。なので、誰の作品の挿絵かを特定するにはとても時間がかかる。最終的に分からないことも多い(もし情報をお持ちの方はご教示頂ければ幸いです)。



(155)焼き鳥屋にて  2009年
 ※小説家・詩人のねじめ正一さん(1948~)のエッセイ(「あんしん財団」の広報誌「あんしんLife」2009年8月号に収録)のための挿絵として制作。エッセイはねじめ氏が、焼き鳥屋で偶然出会った父との思い出綴ったもの。皿の下になぜ1万円札が置いてあるのかは、エッセイの”肝”。何気ない焼き鳥屋のテーブルの風景だが、そんな小作品でも、一徹氏は手を抜かなかった。作品を見ていると、ほら貴方も、ビールと焼き鳥がほしくなってくるでしょう?
 (ちなみに、一徹氏は下の画像のような「焼き鳥」をテーマにした作品も制作している。原画は兵庫県内の某焼き鳥店の店内に飾られている)。





(156)サクラ(1)  1996年
 ※気象庁が昨日(3月14日)、東京でのサクラの開花を宣言。ということで、今週は、一徹氏がサクラをテーマに制作した切り絵を何枚か紹介していきたい。最初は、色使いがゴッホの描いた油絵(下の画像ご参照)を彷彿させるカラー作品を。1996年春、ウベハウス(当時=【注】ご参照)の広報誌「我が家」の表紙のために制作された(【注】宇部興産傘下のかつての住宅メーカー。2008年に民事再生法を申請し、百年住宅に事業譲渡した。現在は別法人のウベハウス東日本のみ存続・営業しているという)。


ゴッホの名作「花咲くアーモンドの木」




(157)サクラ(2)  1995年頃
  ※この2枚は、いずれもエッセイか何かの挿絵として制作されたと思われる作品。サクラを描く時、一徹氏は「(サクラが持つ)優雅さや気品、侘びが伝わるように…」とよく語っていた。



(158)サクラ(3)  1990年代前半
  ※この頃、一徹氏は毎日新聞社から依頼されて、休刊日告知チラシのための切り絵をほぼ毎月1枚ずつ制作していた。これは3月の休刊日用につくったもの。



(159)サクラ(4)  1990年頃
 ※淡いグレーの紙を使った花びらが、画面に変化を生んでいる。横書きの「一徹」という落款は極めて珍しい。バー空間をテーマにした切り絵制作で白紙・黒紙を併用するのは、基本2000年以降だが、サクラの花びらなど繊細なものでは、早い時期から黒紙以外を使用していたことが分かる。ちなみに、一徹氏はほぼ同時期に、まったく同じ構図のサクラの切り絵で、花びらを白紙で表現した作品も(下の画像)もつくっている。






(160)サクラ(5)  1990年代と2000年代
 ※サクラの枝ぶりは違うが、同じコンセプト(構図)で制作されたカラー作品。左側は90年代、右側は2000年以降につくられた。画面上の配置(バランス)、バックのグラデーションなど、一徹氏の美的センスが光る。



 ※絵の制作時期については正確に分からないものも多く、一部は「推定」であることをお含みおきください。

★過去の総集編ページをご覧になりたい方は、こちらへ。

 【Office Ittetsuからのお願い】成田一徹が残したバー以外のジャンルの切り絵について、近い将来「作品集」の刊行を計画しております。もしこの企画に乗ってくださる出版社がございましたら、arkwez@gmail.com までご連絡ください。


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Last updated  2021/06/09 06:11:10 PM
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うらんかんろ

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汪(ワン)@ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。

▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。
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