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Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2021/04/29
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カテゴリ:ITTETSU GALLERY
 ITTETSU GALLERY:もう一つの成田一徹(181)~(200)

 バー・シーンを描いた切り絵で有名な成田一徹(1949~2012)ですが、実は、バー以外をテーマにした幅広いジャンルの切り絵も、数多く手掛けています。花、鳥、動物、職人の仕事、街の風景、庶民の暮らし、歴史、時代物(江戸情緒など)、歴史上の人物、伝統行事・習俗、生まれ故郷の神戸、小説やエッセイの挿絵、切り絵教則本のためのお手本等々。

 今回、バー・シーンとは一味違った「一徹アート」の魅力を、一人でも多くの皆さんに知ってもらいたいと願って、膨大な作品群のなかから、厳選した逸品を1点ずつ紹介していこうと思います(※一部、バー関係をテーマにした作品も含まれますが、ご了承ください)。
 ※故・成田一徹氏の切り絵など作品の著作権は、「Office Ittetsu」が所有しております。許可のない転載・複製や二次利用は著作権法違反であり、固くお断りいたします。


(181)作家の万年筆  1995年
 ※作家・邱永漢氏(1924~2012)のエッセイ「鮮度のある人生」(月刊「ほんとうの時代」誌連載)のための挿絵として制作。連載は1994~96年の約2年、計20回続いた。



(182)大都会は人間カクテル  2012年
  ※兵庫県人権教育研究協議会の広報誌(2012年1月発行)の表紙のために制作。月夜の摩天楼、カクテルグラス、その周りを飛ぶ鳥たち。一徹氏がこの絵(モチーフ)で何を表現したかったのかはよくわからない。もちろん、「人権教育」のための媒体という性格上、何らかのメッセージ(意味)が込められていたことは疑いない。
 私なりに解釈すれば、ニューヨークのような人種のるつぼの街は、まるでカクテル(混ぜ合わせたお酒)のようで、そんな多様性が愛される街の方が、一人ひとりの人権も大切にされ、文化も文明も発展していくということだろうか。周りを飛ぶ鶴たちは「幸せを運んでくる鳥」のようにも見える。一徹さん、私の解釈は合ってますか?



(183)アーネスト・ヘミングウェイ  2005年頃
 ※白い紙は一切使わず制作した異色の作品。Ernest Hemingway(1899~1961)は、20世紀を代表する米国の小説家。シカゴに生まれ、高校卒業後の1917年、地方紙の見習い記者となるも退職。翌年、赤十字の一員として第一次世界大戦における北イタリア戦線に赴くが、瀕死の重傷を負った。戦後の20年代はカナダ紙の特派員としてパリに渡り、そこで小説を書き始めた。
 行動派の作家で、1930年代にはスペインの人民戦線政府側として内戦に積極的に関わり、その経験を元にして『誰がために鐘は鳴る』『武器よさらば』などを著した。
 1954年にはノーベル文学賞を受賞。他に代表作は『日はまた昇る』『老人の海』など。晩年は、躁うつなど精神的な病気に悩まされ執筆活動も滞りがちになり、1961年7月2日の早朝、散弾銃による自殺を遂げた。
 ヘミングウェイはその生涯で、パリのほかフロリダ、キューバなど世界中の様々な場所で居を構えた。なかでも、キューバでは人生の3分の1を過ごした。ハバナで常連客として通ったバーでは、フローズン・ダイキリやモヒートを愛飲したことでも知られ、前者は「パパ・ダイキリ」「ヘミングウェイ・スペシャル」との異名で、今も愛されるカクテルになっている。



(184)神戸港・中突堤  1984年 デッサン用黒鉛筆&彩色
 ※プロデビュー前、サラリーマン(準公務員)として勤めていた神戸市の外郭団体「神戸港振興協会」の建物は、岸壁のすぐそばにあった。仕事の合間には、スケッチができる対象がいろいろあった。この水彩もその1枚。本人はこの頃、すでに「プロになるか、ならないかは別にして将来、(表現手法は)切り絵1本で」と決めていたので、「中突堤」と題されたこの水彩は、単なる気分転換のための習作だったのかもしれない。



(185)文藝春秋の目次ページのために  1996年
  ※一徹氏はプロデビュー直後から、文藝春秋からしばしば挿絵作品の依頼を受けた。同社発行の月刊「文藝春秋」のほか月刊「オール読物」などが発表の場だった。作品は作家の小説やエッセイの挿絵であったり、目次ページを彩るカットであったりした。
 これは1996年1月に発行された別冊「文藝春秋」の目次ページのために制作されたもの(2枚の作品は、見開き&折りたたみの目次ページの左右の端に配置された)。黒とブルー、オレンジ、白の色使いのみならず、スパッタリング(霧吹き手法)によるグラデーション処理などが個性的で面白い。小さい仕事でも手を抜かなかった一徹氏らしい作品である。





(186)ニューヨークのバーにて(2つのヴァージョン)  1993年
 ※バー切り絵作品集『NARITA ITTETSU to the BAR』にも収録された「ニューヨークのバーにて」という切り絵。80年代に当地を訪れた一徹氏が見たであろうバーに集う人々が、生き生きと描かれている。実は、この切り絵には通常ヴァージョン(上=本に収録したもの)の他に、白黒反転ヴァージョン(下)がある。なぜ2種類を制作したのかは、今となっては天上の一徹氏に聞くしかない。
 前者の原画は現在、一徹氏の母校・大阪経済大学の「成田一徹」ギャラリーのコレクションに所蔵され、学内で公開されている。後者はバーUK店内のギャラリー壁面で常設展示されている。



(187)月夜の外航客船  1990年代前半
 ※一徹氏は同じような構図の切り絵を、生涯に何点か制作しているが、これは珍しいカラー作品。ただし、何の媒体用に制作したかは現時点では分かっていない。



(188)クラシック・ファッションのための小品<D>  1990年代前半
 ※この連載の第18回目、48回目、90回目で紹介したクラシック・ファッションの作品と同時期の作品。とくに48回目の作品(下の画像ご参照)の連作として制作されたと思われる。切り絵技法書の作例としても掲載された。





(189)Shall we dance?  1996年
 ※この連載の第162回でも紹介した故・伊藤精介氏のエッセイ「今宵どこかのBARで」(集英社刊「スーパージャンプ」誌連載)の挿絵として制作された。エッセイは、東京・鶯谷にあったキャバレー「スター東京」を伊藤氏が訪れた際のエピソードを綴っているが、一徹氏は、エッセイの中に登場する「ダンスフロアでジルバを踊る男女のペア」を描いた(服の柄には珍しくスクリーントーンを使っている)。景気低迷とコロナ禍もあって、このようなキャバレーはほとんど姿を消した。そのうち「キャバレー」という言葉自体が死語になるかもしれない。



(190)刃(やいば)  1990年代?
 ※正確な制作時期は、はっきりしないカラー作品。冷気すら感じさせ、シュールな雰囲気も漂う。刃身の向こうに見える紅い円は、月か太陽か、それとも何かを象徴するものか。一徹氏に制作意図を聞いてみたくなる。



(191)雨宿りの一杯  1990年代前半
 ※何かの挿絵として制作した作品だろう。傘を持った紳士がカウンターに座っている。ゴムの長靴まではいているくらいだから、きっと、外はかなり酷い雨に違いない。こういう天気の時は、雨が小降りになるまでバーでひと休みするに限る。「カウンターでのゆったりとした一杯は、冷えた心を温めてくれるなぁ…」。初老の男性客の背中からは、そんな気持ちが伝わってくる。



(192)画家のペン立て  1990年代後半
 ※アーチストの商売道具を立てておく筒を描いた作品。中にはナイフ、ペーパーナイフ、かぶらペン、竹ペン、筆、ハサミなどが収められている(一徹氏自身のペン立てをイメージしたのかどうかは分からない)。よくよく見れば、上に向かって広がる形状、かすかに泡立つ液体のような外観。これはグラスなのかもしれない。背後からは、なぜかフクロウがこちらを見つめている。現実にはあり得ない光景である以上、やはり、空想の産物なのだろう。



(193)ケンタウロス  1980年代前半 エッチング版画
  ※プロデビュー前に、表現手法を試行錯誤していた時期の作品。ギリシャ神話にも登場する半人半獣(馬)の「ケンタウロス」を描いている。
 野心深いイクシオンという青年が神妃ヘラに欲情したので、大神ゼウスがヘラの形に似せた雲を身代わりにした所、イクシオンとその「身代わり雲」の間に生まれたのがケンタウロスという。酒が好きで好色。弓矢を持ち、凶暴という性質を持ち、「英雄に退治される側」であることが多いが、時には「騎士」として「殺す側」に回ることもある不思議な存在である。
 一徹氏はこの時期、切り絵、水彩、デッサンなどと並行して版画にもチャレンジしており、この連載の第24回「バーの情景」、第68回「デス・ヴァレー(死の谷)」、第107回「船長の肖像」で紹介した作品もエッチング版画(下の画像ご参照)。








(194)不思議なカクテルグラス  1995年頃
 ※エッセイの挿絵として制作した作品。カクテルグラスの向こうには大海原、グラスの中には入道雲をバックにした帆船が見える。一徹氏にとっては、カクテルグラスに、様々な空想上の光景をプラスするモチーフはお手の物で、生涯にこのような作品を数多く制作した。







(195)シラサギ(連作)  1990年代前半~後半
 ※鳥の中で、一徹氏が最も得意としたのはシラサギやツル。1枚目と2枚目は同じポーズのヴァリエーション(2枚目の絵のひらがなの「落款」は極めて珍しい)。3枚目は少しポーズを変えている。貴方はどれがお好みですか?



(196)雪国の農家  1990年代前半
 ※雪国の冬の朝だろうか、長閑な雰囲気が漂う。空の表現に注目してほしい。スパッタリング(霧吹き手法)で空や雲をどれだけ上手く描けるにチャレンジしてみたのだろうが、その試みは成功し、どんよりとした冬の空を見事に表現している。





(197)フランク永井  2002年
  ※この連載第31回のちあきなおみ、第103回の青江三奈、第131回の松尾和子と同様(下の画像ご参照)、ビクターレコードからの依頼でベスト盤CDのカバージャケット用として制作された。
 フランク永井(1932~2008)は魅力的な低音を生かして、ムード歌謡の歌手として活躍した。1951年(昭和26年)頃から、進駐軍のクラブ歌手として活動を始め、1955年にビクターと契約。「恋人よ我に帰れ」でデビューした。
 当初はジャズを中心に歌っていたが作曲家・吉田正と出会ったのを機に歌謡曲に転身、1957年に発表した「有楽町で逢いましょう」が空前のヒットを記録し、一躍トップスターとなった。
 1961年に発売した「君恋し」は同年の第3回日本レコード大賞を受賞、人気を不動のものとした。他に代表曲は「夜霧に消えたチャコ」「霧子のタンゴ」や、松尾和子とデュエットした「東京ナイト・クラブ」など。
 NHK紅白歌合戦の常連出場者としても知られ、1957年から1982年まで連続26回出場した。しかし、1985年10月21日(当時53歳)、自宅で首吊り自殺を図った。夫人による発見が早かったこともあり、辛うじて一命は取り止めたが、脳などに重い後遺症が残り、以後、歌手活動をすることはなかった。2008年10月27日、東京の自宅で肺炎のため死去。76歳だった。



ちあきなおみ(第31回)


青江三奈(第103回)




松尾和子(第131回)


(198)大仏開眼  1995年
 ※この年開催された京都市内での切り絵原画展のために制作された作品(案内はがきにも使われた)。黒と金だけで構成されたカラー作品。スパッタリング(霧吹き手法)を使ったグラデーションが重厚な雰囲気を醸し出している。朱色の落款もワンポイントとしてとても効果的だ。









(199)海の男たち  1980年代前半 木版画?
 ※プロデビュー前の作品。原画の存在は確認されていないが、勤めていた神戸港振興協会の広報紙のために制作されたと思われる。「切り絵」とは記されておらず、印刷部分の粗さを見てみると、ひょっとしたら、現在確認されている一徹氏の作品の中では、唯一の木版画(またはゴム版画?)ではないかとも考えている。



(200)稜線越しの月夜  1990年代前半
 ※横長の構図からして、おそらくは「文藝春秋」か「オール読物」誌上でのエッセイか小説の挿絵として制作したものと思われる。シンプルなカッティング(線)だけで山の稜線も浮かび上がらせる技量は見事と言うしかない。


 ※絵の制作時期については正確に分からないものも多く、一部は「推定」であることをお含みおきください。

★過去の総集編ページをご覧になりたい方は、こちらへ。

 【Office Ittetsuからのお願い】成田一徹が残したバー以外のジャンルの切り絵について、近い将来「作品集」の刊行を計画しております。もしこの企画に乗ってくださる出版社がございましたら、arkwez@gmail.com までご連絡ください。

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Last updated  2022/03/06 09:37:41 PM
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うらんかんろ

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汪(ワン)@ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。

▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。
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