カテゴリ:ベルリンにて
(初公開2013年5月9日) 再編集2022年7月 ロバのパン屋さん ロバのパン屋さんですって? そんなパン屋があるなんて知りませんでしたけれどね、以前ベルリンに住んでいた悪友のT君が教えてくれました。 ベルリンの壁が崩壊した後、内心の境遇にも経済的にも苦しい時期があって、もがき半分に思い付いたのが、ベルリンにはまだ売っていないカレーパンを作って売る事。しかしビジネス才能はゼロ人間でした。 今でこそ日本風のパン粉は、ちょっとしたスーパーマーケットでも買えますが、 1990年当時はベルリンにはごくきめの細かいシュニッツェル用のパン粉しかなかったので、それを使って試作してみました。 ドイツ人の口に合うようにカレーは余り辛くせず、小さめのサイズに作って息子達の学校に持って行かせて試食してもらうと、子供たちから聞いて興味を持った何人かの親達からの注文が入りました。 その日の手取り収入は30マルク。←まだユーロではなかったのです。 次の日は27マルク。←ひとつ3マルクはドイツ人には高すぎです。 圧力釜で餡を作り、餡まんやどら焼き、肉まんも作りました。 それは日本人にも食べてもらおうと、当時ベルリンのクーダム通りにあった高級デパートの「三越」に聞きに行くと、若くて可愛い売り子さん達が喜んで沢山注文してくれました。←嬉し涙 毎日売れる訳でもなかったのですが、その日の収入は150マルク。 けれど、朝早く作った何十個ものパンを、形の崩れないように二つの袋に詰めて、えっちら、おっちらと電車に乗りついでガタゴト運んで行くのです。 けれど売り娘さん達の喜ぶ顔が嬉しくてがんばって何回か続けました。しかし掛かる費用をすべて引いたら時間給が15マルク程度になって税金の対象にもならない始末。楽しかったんですけど、気がついたらひと月の収入が、倹しい生活費をかなり下回っている。こんな割の悪い仕事にはもう先の希望の限界が来た! で、諦めが早いので止めることにしました。⇐忍耐が無いだけです 「ポン子さんのどらやきは”とらや”のより美味しかったわ。」 と残念そうに言ってくれた女の子の言葉に、思わずジ~ン。 もうここに来ることも無いと思い、最後に爪切りを買ったら、おったまげるくらいおまけしてくれて 「ポン子さんだから」 とその娘が言ってくれた時はつい、目頭が熱くなって・・・・ 頑張ってピンと心を張っている時に、やさしい言葉を掛けられると緩んじゃうんですよね。 コンピュータ―も無く、出来もしないので事務などの仕事が見つからず、経済的にきつかったとはいえ、昔気質の日本人なので、意地でも生活保護など受けるもんかという意気込みでした。 働ける健康な体を持ちながら、そんなものを受けるのは恥だと思っていたのです。 確か、昔の日本には殆どそんな制度はなくて、みんな老後の為にせっせと貯金していたんじゃなかったですか? 10年ぐらい前、日本で生活保護を受けずに餓死した老母娘がいましたよね。国の負担になりたくなかったのでしょうが、少しでも働いたことがある人なら、国からの援助は受ける権利があると思いますね。 ドイツなんて、働いたことも無いのに生活保護だけはもらっている人は沢山いますからね。生活保護をもらっていながら、闇で働いている移民などもいます。 ショッピングセンターの入り口などに立って、身なりの貧しそうな姿でお金をねだっているジプシーもその一例で、変に正義感の強いプップクンは、そういうのを見ると、すぐにセンターの事務所に知らせて、「乞食の立ち入りお断り」をさせています。そんな余計な事するのはこの街でプップクン以外いない気がします。 先日も夏休みになったとたん、一目でジプシーと判る14~5歳の女の子の二人組が、ウクライナの避難民を装って、献金を求めに来ました。 それに気が付いたプップクンが、「ジプシー共め、警察に連絡するぞ。お前達の顔は覚えたからな!」と大声で怒鳴ると、慌てて逃げて行きました。 後で近所の人に聞くと、懲りもせずにあちこちでベルを鳴らしていたみたいですから、騙されて寄付した人もいるかもしれない。 ジプシーの子は本当にしつこく、ふてぶてしくお金をねだって来ます。 街で買い物をしている時、店のドアを開けるすきを狙って、バックからお財布を取られそうになりました。バックの横に屈んだ頭の髪の毛があったのですぐに気が付きました。 さて、話を戻して、わたくしめは絶対に仕事をみつけてやる、と自分に言い聞かせ意気込んで家に戻ると、たまたまいた友人が、誰か男性から電話があったと言いました。 「名前聞いてくれた?」 「聞いたんだけれど、その人、うふふって笑って、え、いいですよって言うのよ。」 「どんな声だった?」 「なんか、変な声。」 あ、あいつだ、とすぐ気がついて折り返し電話をする。 「T君、電話くれた?」 「ぼく?・・・電話なんてしてませんよ。」 「おかしいなぁ、あんたしかいないんだけど。」 「え、ぼくじゃないですよ。」 「そ~、若い声だって言ってたよ。」 「うふふ、若い声って言ってました?」 「ほら、やっぱりあんたじゃない。」 実にその頃の私の周りには、首をかしげたくなるような不可解な人ばかりが集まって来ていたのです。あ、似た者同士が集まってるだけなのかもしれません。 例えば、一人一品持参でバーベキューをしよう、と友人達に声を掛けたら、サラダを持って来る人、ケーキを持って来る人、ビールを持って来る人、お寿司を持って来る人と楽しいテーブルになったのですが、その中に生のお米を1合持ってきた女の子もいました。やっぱり首を傾げました。 「ポン子さん、ロバのパン屋さん、止めるんだって?」 「なァに、そのロバのパン屋さんって。」 「え~、知らないんですか。昔はロバにパンを積んで売りに歩いてたんですよ。」 「知らないわ、そんなの。私は都会っ娘だったし。」 「だって、ポン子さん、ロバのパン屋さんじゃないですか。」 「私、ロバなんて持ってないじゃない。」 [だから・・・老婆のパン屋さん・・・・」 てめぇ、ぶっころしてやっかぁ~ ( 押絵http://uminekoworld.jugem.jp/mode=comment&act=captcha) その後、有り難い事に、私には家具屋さんで宣伝用の挿絵を描く仕事が見つかり、そのお店が倒産するまでの3年間は何とか生活が落ち着きました。 この記事へのコメント Melba 2013年05月09日 16:23 土曜日の更新かしらと思いつつもお立ち寄りしました。 ユーモアに満ちたお話、内容に引きこまれながら読み終わると胸が熱くなります。 頭の中に、あのメロディーがぐるぐると。 一つ気になりました…Tさんの存在。 毒がありつつも憎めないユーモアですね。 ponko310 2013年05月10日 07:11 Melbaさん 私はそのメロディーすら知らないんです。 T君もすでに帰国して懐かしい悪友です。 お互いにやっつけ合う会話ばかりでしたが何かと心にエネルギーをもらってました。 長老純爺 2013年05月11日 11:28 こんにちは やはりponkoさんは小説家です。 読むうちにグイグイと引き込まれて、最後にはオチまで用意してある!!! 挿絵は手書きですか? ほかの記事にもかなりの挿絵が見られます。 絵も描けるとは!… 尊敬の眼差しを東京より送ります、受け取ってください。 ponko310 2013年05月11日 15:49 御褒めの言葉をいただけて恐縮です。 今回の押絵は今URLを貼りました。 (競馬のサイトです!) 他の挿絵は写真に撮って載せてあるものが私のですけど、幼稚な漫画しか描けません。 とほほ、です。 自分の描いた絵を載せる方法をまだ知りません。 東京からの尊敬の眼差しはちゃんと小包にして「うみねこ」さんに転送しました。 きっと喜ばれるでしょう。感謝! うみねこ 2013年05月12日 04:13 お邪魔いたします。 ponko様、イラストお使い頂き嬉しいです。 ブログも時折拝読させて頂いております♪ どうぞ、今後とも宜しくお願い致します! ponko310 2013年05月12日 05:21 うみねこさん まったく違った分野のブログですが気分転換にでもいらっして下されば嬉しいです。コメント、大歓迎ですよ。 お宅のコマネコちゃんの可愛い事! 花残り月 2013年05月14日 12:50 こんにちは!! わたしロバのパン屋さん知っています\(^o^)/ 子供の頃うちの方にも何度か回ってきましたよん♡ ちんからりん~♪と言う可愛らしい歌声と共に、車を引く本物のロバくんも確かに見ました!! わたしの食べたパンは白くて表面に甘いトッピングをされた蒸しパンだったと思います。 ポン子さんのパン食べてみたかったなぁ ponko310 2013年05月14日 17:51 やっぱり、私だけじゃん、 ロバのパン屋さん知らないの・・・ クスン、クスン・・ Rinanan 2013年06月21日 00:36 老婆のパン屋(笑) 失礼な人ですが楽しそう!! そんなにおいしいのな食べてみたいです(^v^) いつかドイツに行くので作ってください(・´з`・)(笑) ponko310 2013年07月01日 07:08 Rinananさん 私のパンは、お腹が空いている人にはだれにでも美味しいのです。 お腹が空いてないとだめですよ。 おかめねこ 2013年10月05日 23:07 ヒッヒッヒ 老婆のパンとは、よく捻くったもんだわ。 私も知っているけど、ロバでなく馬だった。 のちに三輪の車に変わったけど、歌はいつもロバのパン 白、薄もも色、薄みどりに色づけした蒸しパンでした。 餡入、小豆納豆入は特においしかったなぁ。 ponko310 2013年10月06日 03:29 おかめねこさん コメントをありがとう。 そんなおいしそうなパンを売っていたのですか。 私も食べたかったなァ。 YUKARI 2013年12月10日 13:02 ponkoさんのお料理の腕と営業力は商才があるのでは?と思いました。 とにかくその行動力が凄いです。 ponkoさんは食べる事・作る事・喜んで食べてくれる顔が好きなんでしょうね(尊敬) ponko310 2013年12月10日 19:02 YUKARIさん 買いかぶりですよ~。 それに商才はゼロです。 サービス精神ばかりで"もうけ"などには全くなりません。 今でも同じ状態が続いていて、一銭にもならないブログなどに時間を費やしています。 喜んで食べてくれる顔は実際に見れますが、コメントをくれる方やブログ玉をくれる方の笑顔は想像だけです。 読み逃げも沢山いますから、これからは限定にしようか・・・などとケチ根性も出て来ました。 Melba 2014年01月15日 23:23 今年に入り過去ログを再度拝読しています。 忘れていた記事に接し気持ちが懐かしさでほんわかしています。 ポンコさんが"限定"にされたいのでしたらそれもいいと思いますよ。 ところでポンコさんは、ブログにお立ち寄りした際には必ずコメントを入れられますか? 私はコメは限られサイトにしか。。。 それって普通の事だと思ってました ponko310 2014年01月16日 05:15 MELBAさん ブログを開けると、どの記事に新しいコメントが来ているかどうか判ります。 私はすべてのコメントにお返事を出していたつもりなのですが、たまに見逃すこともあるのかもしれません。 限られサイトって何ですか? Melba 2014年01月16日 15:35 限られたサイトとは、ポンコさんもコメントしておられご存じかと。 「ポンコさんは " 他の方のサイト " にお立ち寄りされ、拝読しましたら 読んだ証に必ずコメントを残されておられますか? 」との質問でした。 コメントを入れる制約があれば、敷居が高く二度目の拝読は無いと思います。私の場合。 学習サイトでは情報収集の一環で立ち寄りコメント等は残さないものの、サイトで紹介された書籍は、そちらから購入したいとは思っていますが。 ponko310 2014年01月17日 00:44 Melbaさん 私は学習サイトにはコメントしません。 個人のブログにはコメントか「いいね」を付けます。 bububa 2016年11月16日 14:29 本当にいつも思っています 文章も絵もとっても上手ですねぇ まさに作家さんですよぅ‥ いつもスルスルって引き込まれるように読めちゃうもん。 ロバのパン屋さんは私が幼稚園時代に見た記憶があります。 ロバのパン屋さんの歌が流れてロバかな‥子馬だったのかな‥コトコト歩いて来る音も記憶に残っています‥とっても懐かしさを感じました ponko310 2016年11月16日 18:32 bububaさん ようやく2年ぶりに此処にコメントが入った事、嬉しかったわ。 その上、読みやすい文だって褒めてくれてありがとう。 頭が単純だから難しい文が書けないって言うのが本音なんだけどね~、えへへ。 それに、思い出して感じたことをそのまま文にしているだけだから現実感があるのかもね。 みんなロバのパン屋さんを知ってる人ばかりなので驚いたわ。 仔馬のヒズメの音を聞いてみたかったな。 💕 お詫び:コメントを入れる時、何度も数字の打ち直しを要求されるのですが、スパム予防の為だと思います。それでもコメントをくださる方には心から感謝いたします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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