日本の復興と消費増税を明確に識別すべき時
日本は、対外的にも資産が債務を上回る純資産国であり、EU諸国の状況とは異なる。 純資産として比較しなくとも、対外債務の内容を調べてみると、純粋の対外債務としての外国人が保有する部分を抜き出してみる方法がある。 日本とギリシャの対外債務残高は、それぞれ3兆8,300億ドル、4,430億ドルであるが、外国人保有比率はそれぞれ、6.1%、57%であり、純粋な外国人からの債務は、それぞれ、2,335億ドル、 2,525億ドルである。 純粋な対外債務で比較すると、対GDP比ではそれぞれ、4.3%,82.7%である。 純粋な対外債務の国民一人当たり負担額はそれぞれ、1,823ドル/人、22,585ドルであり、ギリシャを100とすると日本は 8に過ぎない。 ギリシャの財政赤字は約90億ドルであるので、2008年の外貨準備の1/3以下である。 日本の財政赤字は3,820億ドルであり、2010年の外貨準備はその約3倍、対外純資産はその約8倍ある。 また、日本の対外資産(対外債務の外国人保有分を除く)は、66,795億ドルだから、17.5倍ある。 日本の場合は、焦らずに、財政赤字を均衡するように工夫していくことで、重大な危機には陥らないであろう。 むしろ、円、ドル、ユーロなどの投機筋の思惑に惑わされないように、国際機関が過剰なる信用取引を正常な水準に戻すことを世界に訴えることが大事であろう。 金融・証券などの機関(ライオン)を縛りもなく野に放ってしまったための世界の金融危機であり、米・英が先導してきた「自由主義」の行きすぎが、次の世界恐慌を引き起こすムーブメントであることに気がつかなければならない。 自由であることがかえって自由を壊しているのであり、なんらかの「制約ないし節度」が「自由の存続のためにも必要」であることを、「ユーロ危機は逆説的に証明している」のではなかろうか。 日本では、いたずらに消費増税ばかりを叫ぶことは慎んだ方が良いと思われる。 特に、昨年に発生した東日本大震災では、阪神・淡路大震災の被害額9.6兆円(現在の円/ドル・レート=1ドル/76.95円で換算すると1,250億ドル)を大幅に凌ぐ、16~25兆円(2,080~3,250億ドル)規模の損失を我が国は受けている。 その復興資金の調達が喫緊の課題のはずである。 今は、世界が日本の救済に目を向けており、復興には超円高の追い風がある。 このようなときこそ、日銀が紙幣を増発して復興への資金供給を行い、 経済産業省が緊急時原油等確保のための備蓄貯蔵を講ずべきである。 実物財貨が瞬時に失われたのであるから、ハイパー・インフレーションがすぐに起きる状況ではない。 消費増税に目を向けるよりも、超円高での通貨発行を行い、円を安定 させる事の方が国策上有利である。 あまりおおっぴらにはできないであろうが、日銀、経産省に頑張って貰い たいものである。 [日本]と[ギリシャ]の財政収支などを比較検討する (2010年、WEB資料から推定) 比較項目日本ギリシャGDP :A54,588億ドル3,054億ドル対外債務残高 :B38,280億ドル4,430億ドル同上/GDP比% :C=B/A% 70.1%145.1%(対外債務残高外国保有比率) :D(注)6.1%57%対外債務外国保有残高:E=B*D2,335億ドル2,525億ドル[対外債務/GDP修正比率] :E/A4.3%82.7%人口(千人) :F128,05611,180対外債務外国保有額/人1,823ドル/人22,585ドル/人同上のギリシャ対比 8100財政収支/GDP% :G▼7.0%▼2.9%財政収支 :H=A*G▼3,821億ドル▼89億ドル外貨準備高 : I10,962億ドル34億ドル(2008年)対外純資産 :J30,860億ドル不明I/H (瞬時視点) 2.90.4J/H (短期視点)8.1不明対外債権-E :K66,795億ドル不明K/H (長期視点)17.5不明参考:東日本大震災の被害3,250億ドル-注:2009年6月末データ