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カテゴリ:源義経黄金伝説(2009年版)
■源義経黄金伝説■2009-第21回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第1章10 1186年(文治2年)10月 鎌倉 薄ら寒い10月の鎌倉の朝もやの中で、西行が先ほどの情景を思い出している。 「重蔵どの。頼朝殿は、流鏑馬に熟達し、当代第一の弓持ちと言われたこの西 行の前で、弓矢の技を見せられたのだ」 東大寺闇法師重蔵が返した。 「それは何をお考えなのでしょうや」 「頼朝殿、平泉を攻めるつもりであろう」 「えっつ、やはり」 十蔵は西行を見た。 が西行はすでに自分の殻に入り考えにふけっている。 不思議な方じゃ、重蔵は最初の出合いを思い出している。 ◎ 西行は、しばらく前から後からつけて来る僧衣の男に気付いていた 。身構えている。足取りが早くなる。さすがは元、北面の武士である。 十蔵は西行の住処伊勢の草庵から着けていた、がそろそろ自ら自分の存在を 知らしめた方がよいと考えていた。この西行のただならぬ武闘の力を見抜いて いた。それゆえ、自分の身を西行が気付くようにあらわしている。 「西行様、私はお味方」重蔵はつぶやく。 「自己紹介いたします。私は十蔵、重源殿が遣わされた闇法師にございます。 西行どのをお守り申します。西行殿、どうぞお気を付けなされませ。鎌倉殿、 やすやすと東大寺への沙金動かすことなき気配あれば」 「鎌倉殿が沙金を盗むとか。重源殿の指令それだけだったか」 西行は十蔵をじっと見る。 「と申しますと」 十蔵は少したじろいでいる。 「例えばじゃ、私が裏切って、平泉にて極楽郷を作るつもりとか」 西行は、初手から恐ろしい言葉を放っている。もし、西行の答え方いかんで は、十蔵はこの場で、西行と戦わねばなせない。十蔵の背後には、巨大な東大 寺勢力が控えている。 「さすれば、西行様はもう京都に帰られぬおつもりか」 「ことと次第によってはな。わしはのう平泉の桜がすきなのだよ」 西行は、遠くを見、一瞬、思いにふけっていた。十蔵はそんな西行を、不思 議な顔をして眺めた。いったいこの法師殿は何を考えてござるのか。十蔵には 想像もつかない。あったことのない別種の人間だった。 ◎ 続く090901改訂 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.10.16 20:04:47
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