日常と旅情の狭間で in 仙台・宮城

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  湯治旅　～福島・土湯温泉～

  ようやく時間が追いついてきた、八重桜、健在。旅の前にルーチンのサイクリング、朝ごはんか昼ごはんか分からないけれど、とりあえず卵かけご飯。新幹線で古川→福島。バス待ちがてら、あまりに暑いので、S-PALの2階で花時計を眺めながらアイスティー。この日に空いている貸切風呂めぐりの宿を、東北一円から探してたどり着いたのが此処。隣にオープンしたばかりのラーメン屋にて、まだ明るいうちから、餃子をつまみに「おららのどぶろく」を。温泉街朝日。朝ごはんの後は、こけしたちに囲まれてコーヒーを、クラシックをかけながら部屋でのんびり…ハイキングコースはまた今度かな。

  2024.04.29

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  旅おさめ　～松島　海風土～

  ことしも仕事帰りの旅おさめ。海岸駅から大通りを進み、住宅街を抜けてたどり着いたのは、元祖松島温泉、アジアンリゾートふうの宿、海風土。部屋の展望温泉から、海に浮かぶ満月を眺めつつ。好きなときにお湯を張ったり温度調節できてありがたい。お勧めの梅酒ロックに酔わされてすぐに眠ってしまい、朝風呂を満喫して、コーヒーを淹れて、ふつうに出勤…でも家に帰るより近い。釣り船の浮かぶ、まだ暗い海岸沿いを、陸側にまわってきた月あかりを頼りに歩き、昨日は少し遠まわりをしたようで、センチュリーホテルの裏手に遊歩道があったことに気づく。ひときわ明るい星影が海面に映れば、瞬いたり流れ星のようにみえたりするのは新発見。白みはじめたホームに、始発列車を待ちつつ。夜が明ければ、つかの間の旅の列車が、いつもの通勤列車に。朝焼けに浮かぶ白い月の色を映したかのような、茶菓子の松島こうれんを朝食がわりに、旅と日常を入れ替えていく。

  2024.01.03

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  1011 秋の津軽路（３）十二湖散策→リゾートしらかみ→秋田

  コテージの天窓からさしこむ光が夜明けを告げる。敷地内の展望台に登り、ご来光を拝む。宿の送迎で山道を登りつつ、軽く案内もしてもらい、キョロロ物産館で手にしたクマ除け鈴を鳴らしつつ散策スタート（王池）。あ、何かいる。「もののけ姫」の舞台にもなった青池。ブナの自然林を歩き、カツラの樹の、この時季の甘い香りとハート型の葉っぱに惹かれて、わが家にも植えてみた。神秘的な色あいの、沸壷の池。木の実を投げて水面に輪を描いてみる。王池に戻る道が昨年の大雨から復旧しておらず、舗装路に戻ることに。かつては湧水でお茶も立てていたのだとか。きのうの夕食にもふるまわれた、幻の淡水魚イトウの養殖場。それにしても、十二湖の成り立ちとなった山の崩落から、たかだか300年余、自然現象が災害と称されたり物見遊山に利用されたり、人間の勝手な都合なのかもしれない…バス待ちがてら、日向ぼっこをしたり、どんぐりを拾ったりして、駅で宿に預けた荷物を受け取り、五能線の旅の続きへ。きのうとはうってかわって海が碧い。車内の無人販売所で記念の品を手に、県境を越え、八郎潟のあたりを通り過ぎつつ、つぎの旅に想いを馳せる。秋田駅で、ぎばさラーメン（めかぶに似ている）を昼食に、帰路の読書は、白神山地が舞台の、恩田陸「木漏れ日に泳ぐ魚」。ひとの記憶とは、夢とうつつの境目のように曖昧なもので、なにが真実なのかは誰にも分からない、そしてそのことは時として、生と死の境目を曖昧にせしめて向こう側へいざなう危うさを秘めている、倒木が横たわる湖に泳ぐ魚は、いずれ生を終えて何処へゆくのだろうか、そもそも木漏れ日のもとを歩く我々も、空からはそんなふうに見えているのかもしれない…降り立った駅の雑踏が、現実の世界にひきもどす。夕闇に包まれた住宅街に、キンモクセイの香りがそこはかとなく漂っていた。

  2024.01.03

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  1010 秋の津軽路（２）大鰐温泉→弘前→リゾートしらかみ→十二湖

  岩木山を眺めながら部屋で剥いたりんごを頬張り、朝の散策へ。夜半からの雨もあがり、「アルプス乙女」と「ふじ」の赤色が映える。徒歩圏内に「鷹の羽温泉」という外湯があるので訪ねてみることに～もともと隣の医院の温泉療法用だったとか。満員の代行バスで弘前、そして特急券を買って大鰐温泉へ。ようやく鉄道にたどりついた。駅前の足湯に浸かり、川沿いを散策しつつ、つぎの湯治場へ。洗面器を頭にかぶって小雨もようの露天風呂、実は弘前周辺、貸切風呂天国のよう。此処も当日予約して時間めいいっぱいまで本格湯治。弘前に戻り、駅前で津軽ラーメン（煮干しと鰯の焼き干しの醤油出汁）をすすり、まだ少し時間があるので、市内周遊の100円バスで弘前城へ。博物館を鑑賞して、桜紅葉の色づき始めた大手門周辺を散策、この界隈は洋館が多く、市役所も郵便局も赤れんが。14:30発の「リゾートしらかみ」が、1年前のリベンジ。しだいに空が晴れ、夕焼けに染まる日本海を車窓に、ほぼ日没ごろに十二湖に到着。明日は好い天気になりそう。

  2024.01.03

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  1009 秋の津軽路（１）弘前→弘南鉄道代行バス→田舎館→南田温泉アップルランド

  １年前の秋に乗車した津軽鉄道の縁で送られてきたフリー乗車券が、この地へいざなってくれた（古川→一関→新青森→弘前）。新青森駅の、りんごジュース専門の自販機が、旅のスイッチを入れる。車窓にもりんご畑がちらほら。弘前駅前の「茶房coco」なる喫茶店で、ピーターラビットのぬいぐるみとアップルパイの香りに迎えられ、遅めの昼食がわりに紅茶とスコーンを。弘南鉄道が、線路点検でまさかの代行輸送。田舎館の道の駅で下車、このタワーから、きょう最終日の田んぼアートを観る予定が、まさかのバスの遅延で間に合わず…いつかリベンジを。黄金色の田んぼと、色づき始めた葉っぱが好い感じ。せっかく来たので、裂織りのコースターを買って来た道を。揺られるうちに陽が落ちて、平賀駅前の通りを街灯を頼りに歩いてきょうの宿へ。牛すじやスペアリブのりんご添えに自家製アップルパイ、ひのき風呂あがりの一杯も、もちろんりんごジュース。（つづく）

  2024.01.03

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  米沢・姥湯温泉～薬師森・姥湯分岐～峠駅トレッキング

  吾妻連峰に魅せられて…また来てしまった、峠の茶屋。今回の宿は、平日しか予約のとれない秘湯、姥湯温泉・桝形屋。到着してまだしばらく明るいので、薬師森まで山歩きすることに。部屋食でのんびりして…夜明け前の温泉をひとりじめ。きのう荷物を運んでもらった。自家製ロープウェイ。姥湯分岐まではよかったのだけれど、滑川方面に抜けようとして迷いかけてひき返すことに。この看板、クマにかじられた跡のよう…炎天下、舗装路を8km下ることになり、途中の滑川温泉もこの日お休みだったので、湧き水がありがたかった。峠駅に帰着したときの、ぶどうジュースの美味しかったこと。列車の時刻を過ぎてしまったので、帰路は高速バスで。足の爪がはがれかけたほかは無事でなにより。次は、薬師森も滑川大滝もメインのルートは整備されているので、駅から宿まで歩いて登るのも悪くないかもな…

  2024.01.03

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  米沢・新高湯温泉→吾妻連峰の旅（２）

  よし、いい天気だ。朝食を済ませて、ロープウェイに乗る（宿から登山道もあったみたい）。リフト3台乗り継いで山歩きへ。水がありますよ～、と誰かが言った。眺望がひらけるはずのあたり、今日は雲のむこう…たぶん凡天岩（標高ほぼ2000m）、もうすこし進めば西吾妻山頂なのだろうけれど、岩場に手間どったので帰りの時間を考えて今回は引き返すことに。水場で休憩がてら、持ってきたパンやらを口に入れて、整備された木道を歩きながら人形岩へ。シャクナゲ、で合っているかな？リフト終点に戻ってきましたよ～麓に降りてきましたよ～米沢といえばこれ。明るいうちから牛肉に赤ワイン。こんどは西吾妻山頂リベンジ、そして人形岩から姥湯方面はつぎの挑戦だ。

  2023.08.13

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  米沢・新高湯温泉→吾妻連峰の旅（１）

  紅花に導かれるかのように、また山形方面へ向かう。かみのやま温泉あたり、田んぼの真ん中のタワマンが目印。山形→米沢→バスで小一時間→送迎車で急な山道を登り、秘湯の一軒宿、新高湯温泉・吾妻屋旅館に到着。明るい時間に、五つの露天風呂をめぐる。撮影禁止とか面倒なことも書いてないし、山奥の混浴はおおらかで好いなぁ…といっても、先客がいれば誰も入ってこないので貸切状態。滝見風呂。標高が高いとはいえまだ暑いので、ちょうどよいぬるさ。夕食は、控えめ湯治プラン、でもちゃんと米沢牛がついてくる。暗くなってからもう一度温泉に入ったものの、虫が出るのでほどほどに。

  2023.08.13

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  米沢・滑川温泉の旅（２）

  早朝の岩風呂からあがり、新庄で購入した大豆珈琲を淹れる。宿の裏山を散策。新緑がうつくしい…秋にもまた来るかな。峠駅まで1時間4km、すこし早く出発して歩くことにした。「峠の茶屋」で雑煮の昼食と、力餅を手土産に。帰路は福島経由、新幹線で2時間ほど。餅の売り子さんと。わが家のジューンベリーに迎えられる。

  2023.08.11

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  米沢・滑川温泉の旅（１）

  何か月分か写真整理。初夏の旅は、新庄経由で山形→米沢入り。米沢駅前で自転車を借りて上杉神社へ。山形線の峠駅で下車して、宿の送迎車で滑川温泉へ。宿の裏の吊り橋を渡って15分くらいで、滑川大滝を拝む。温泉の溶け込んだ川で足を洗って、来た道を登る。露天のひのき風呂、予約貸切、先着貸切、翌朝のオープン時間の3回入ったよ。部屋食でのんびり…

  2023.08.11

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  秋田内陸線の旅（３）：八津→角館桜まつり

  「かたくり館」のソファで、いただいたゆべしやら揚げ饅頭を昼食がわりに、ふたたび列車に乗る。角館駅を降りれば、黄色いカタクリがお出迎え。武家屋敷の方角へ歩きつつ、葉桜の中に健在な花を探すのも亦楽しからずや。「解体新書」のゆかりが、こんなところに。「あきたプリン亭」でお土産を買って、にぎやかな新幹線へ。「しょっつる」でいただく稲庭うどんに、いぶりがっこと西明寺栗を添えつつ、旅路をふりかえる夕刻。

  2023.06.04

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  秋田内陸線の旅（２）：阿仁マタギ→八津（かたくり群生の郷）

  朝食に付いてきた大和煮ふうの肉は、イノシシか鹿なのか、もしやほんとうにクマなのだろうか……と思いめぐらせながら、マタギ資料館をめぐってから、宿をあとにする。秋田杉の林と清流に沿って内陸線を南下し、八津駅で下車し、「かたくり館」に荷物を預けて、「かたくり群生の郷」の散策へ。足もとの草花たち。イチリンソウの仲間。ワサビの仲間のよう。わが家にもあるヤブカンゾウ、で合っているだろうか。こんどは視線をすこし空のほうへ。民家の庭先やら畑やらに、見事な桜の木が。こちらは駅舎沿いのシダレザクラ。

  2023.05.20

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  秋田内陸線の旅：（大館→）鷹巣→阿仁合→阿仁マタギ

  土曜日の朝、古川→新青森→大館（特急つがる2号）。桜、健在。後ろのディープな映画館では、RRRなる映画をやっているらしい。この日最初の目的地、秋田犬の里。忠犬ハチ公生誕100年のお祝いムード。渋谷駅から比較的最近移設されたという、元祖レトロ車輌「青ガエル」。冬眠中に着ていた寝袋を脱いで、パンタグラフを設置して、ことしも目覚めたよう。今日の秋田犬、さくらちゃん。目がトロンとして可愛いけれど、立ち上がると、元気な女の子、というには迫力のある大きさと、ふさふさした尻尾。駅前で比内地鶏の鶏めしを買って。乗換時間5分だったけれど、降りたホームに秋田内陸線の乗り場があり。旅のシーズンは秋もいいけれど、この時季の残雪はそそるなぁ。いろんなところに秋田犬の肉球が。阿仁合駅を降りれば、川沿いの桜並木に迎えられる。足もとの花にも目を留めつつ。駅前の商店街を、道に迷って登った坂から見たところ。鉱山の歴史を伝える、異人館・伝承館。明治の洋館の、気泡の入ったガラス越しに列車をながめる。無人の小さな古本屋さん。こんどは急行列車に乗り、渓谷をいくつか渡り、阿仁マタギ駅に到着し、送迎車で宿へ。お造りからマス、ナマズ、湯葉と内陸感たっぷり、ウサギ鍋と濁酒（どぶろく）に酔いつつ、山里の夜は更けてゆく。

  2023.04.23

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  春分の日は鳴子温泉で貸切風呂めぐり

  すこしずつ日が長くなり、朝日が通勤時刻を追い越してゆく。春分の前日、仕事終わりにそのまま鳴子温泉へ。駅を降りて坂道を登っていると送迎車に声をかけられ、４つの貸切風呂めぐりの宿「湯元　吉祥」が今日の宿。​https://www.hotespa.net/hotels/kissho/​夜に岩風呂とレンガ風呂、22:30まで待って夜鳴き蕎麦に並び、朝はタイル風呂とひのき風呂。朝食後にもう一度岩風呂、歌は歌わないけれど口笛を吹いてみたりして～♪スキー場もシーズンを終えて、すっかり春ですね…

  2023.04.23

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  安比高原でウサギの足あとを追いかけてみた

  ことしも、休前日を振替休日にして、盛岡行きの車窓。安比高原行きバスはこの時季、路線バスとして運行されているので、駅裏でチケットを買って。到着。アートチケットを買ってゴンドラで山頂へ。手作りクッキーでひと休み。ゲレ食といえばラーメン。早めに宿に入って、温泉プールから外を眺め、滑らなくてもニッチな楽しみ方。一夜明けて、ガイドさんとスノーシューハイクへ出発。ヤドリギの付いた木の枝。ウサギの足あとを追いかけてみた。お昼を食べて、バス待ちがてら。帰りみち、地元盛岡のべアレンビール。​https://www.baerenbier.co.jp/​宿で見かけた​HERALBONYから​KAPOK KNOTへ飛んでネットショッピング。NYタイムズに選ばれたのも、こういう地元発のきらりと光るひとたちと、そこからひろがるネットワークが、街の活力につながっていくのかな。​​わが家は雪のゆの字もなく…春はすぐそこまで。

  2023.04.22

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  旅おさめ　～松島一の坊～

  仕事おさめの夕刻に松島へ。職場の最寄り駅から仙石線で30分、高城町駅から住宅街を少し歩いて大通りに出て2軒目の温泉宿、松島一の坊が、ことしの旅おさめ。ライトアップされた庭園を部屋からしばし眺め、夕食は仙台牛やら、洋食メインでチョイスしたものの、「お凌ぎ」の寿司を目の前で炙ってもらったり。翌朝5時、猫舌というか熱いもの全般に弱いので、岩盤浴とサウナは早々に切りあげ、朝日を拝み、こんどは和食メインの朝ごはんを食べてのんびりした後は、庭園のジョギングで汗を流す。不思議なステンドグラス。チェックアウトぎりぎりまで部屋の半露天風呂でくつろいだあとは、藤田喬平ガラス美術館へ。ガラスのウサギを手土産に、帰路は東北本線松島駅から、自宅の最寄り駅まで20分。いつでも行けると思えばこそ、観光に欲張らずにのんびりできるのは近場ならでは。一年間おつかれさま～そしていつかまた。

  2023.01.14

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  海峡の地へ（１０）鰺ヶ沢→弘前→白神山地

  岩木山の輪郭が浮かびあがりはじめた頃に、宿の立っている小高い丘を下り、こんどは代行バスでなく、直通・弘前行きに乗る。きのう夕陽を拝んだ日本海、気嵐が立っている。通勤通学の乗客で少しずつにぎやかになってくる道中で日の出を迎えた。弘前駅の混雑に巻き込まれ、西目屋村行きバスへの20分ほどの乗り継ぎに、肝を冷やした。都市部の移動は要注意だが、間に合って何より。道中、弘前城の桜紅葉もそろそろ見ごろ。非の打ちどころのない青空のもと、ブナの黄葉真っ盛りの白神山地へ。この時季に甘い香りを放つハート形の葉をつけているのは「カツラ」という木だそうだ。「もののけ姫」の舞台にもなったとか。壁紙のような、ブナの木肌に写る葉っぱの影。足もとのブナやヤマブドウの実を、湧き水で洗って味見するのも、この時季ならでは。ガイドさんに教わった道の駅で「熊蕎麦」を。「ビーチ」はブナ (beech) の意味らしい。此処の屋上で飼っているというハチミツを手に（クマだいじょうぶか？）。さて、ここ十年くらいのあいだに、旅はずいぶんと便利になった；宿や切符の予約を取ったり、現在地と目的地までの地図を表示させるのはもとより、昼間みたポスターから映画をダウンロードして宿で鑑賞したり、移動中に地元の高校生のリンゴの炭づくりやら、一方で長引く戦争と脱炭素の狭間の一時的な石炭回帰のニュースを片耳で聴きつつ、きのう目に止まった土産物やクラウドファンディングに、翌朝の列車や帰りのバスに揺られつつポチッとしたり、でも、夜中にまでトラックを走らせて翌日届けてもらわなくてもいいし、津軽鉄道のような列車が各地を走っていた頃のように、荷物を駅まで受け取りに行くくらいの余裕があってもいいのに、とは思う。日ごろ簡単にできることがあるとすれば、同じモノを買うのなら、純粋に輸送距離の短さで選べばいい。帰路、地元の新幹線駅にて。高校生たちのかけ声とボールの弾む音を聴きながら、また一日が終わり、季節がひとつ前へとすすんでゆく。

  2022.11.20

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  海峡の地へ（９）竜飛崎→津軽鉄道→五所川原→鰺ヶ沢

  朝日を拝みに、竜飛崎展望台に登る。朝食会場で海をながめていると、窓開けていいですよ、と。奥津軽いまべつ駅まで、宿の送迎バスを利用することにした。予約しておいた乗り合いタクシー（といっても貸切）に揺られること小一時間、津軽中里駅に到着し、津軽鉄道で五所川原へ。岩木山が近づく。ストーブ列車の季節はもうすぐ。駅前の商店街をまっすぐ歩き、「立佞武多の館」へ。青森のねぶた、弘前のねぷた、ほかいろいろあるようだけれど、五所川原は高さ20mもある「たちねぷた」。毎年テーマが決まっており、地震のあとのあの年は、鹿島大明神が地震ナマズを鎮めているのだとか。当地出身の画家・伊藤正規の特別展も鑑賞、一枚の静物画に、果物と干物がおさめられているあたりに土地の匂いを感じてみたり。昼食は駅前のコミュニティカフェ「でる・そ～れ」にて、青森シャモロックの出汁の効いた「津鉄汁」。器は津軽金山焼というらしい～備前焼に似ている、というか区別がつかない。中まで赤いリンゴジュースを手に、五能線の代行バスに乗り込む。「亀ヶ岡石器時代遺跡」から出土した遮光器土偶をあしらった「木造」駅舎。銀杏の黄葉も進んできた。8月の大雨で被災した五能線が戻らないので、旅の行き先を変えようか迷ったものの、予定通り鰺ヶ沢に宿をとることにした。海岸沿いの旅、ようやく日本海側に到達。子ども連れや犬を散歩させている地元のひとたちも訪れる、夕暮れ時の公園を散策がてら、明日の朝食を買いにショッピングセンターへ。スチューベンはもとより、洋梨も特産らしく、そういえば昼間観た画家の絶筆が、「ラ・フランス」だった。それから、肉屋さんのディスプレイに電気がついていないのも、あの水害の爪あとのようだ。昔ながらの格調高いホテルの雰囲気に、バイキングは洋食メインでチョイスしてみたものの、十三湖のしじみ汁とリンゴの天ぷらは例外。それから、鰺ヶ沢はウナギも獲れるのかな。此処から海沿いを列車でたどり、十二湖から白神に入る旅は、いつかまた。祈復興。

  2022.11.20

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  海峡の地へ（８）竜飛崎散策／青函トンネル記念館／映画「海峡」

  青函トンネル記念館入口の登り坂で、階段国道のあるこの地のアップダウンの、吹きつけるにわか雨に、竜が飛ぶが如く舞う風の洗礼を受けた。雨合羽を着込み、宿に荷物を置いて岬周辺の散策へ。海のむこうは北海道。足もとの植生にも目を留めつつ、登山ではないので、どこが最北端という札が立っているわけではなく、いろいろな記念碑や看板がある。この海の碧さ、どこかで見たと思えば、礼文島の澄海岬を思いおこさせる。灯台にて。ホタテをご馳走になったお店。階段国道を下りて港町へ。イカの吊るされている風景を撮影しそうになったが、ふつうの民家なので遠慮する。地元のひとにとっては、我々が柿とかタマネギを軒先に吊るしているようなものなのだろうか。西にかたむきつつある陽光に照らされる「帯島」。それにしても、咲き残ったにしては鮮やかな紫陽花。津軽海峡冬景色の歌碑（に群がる人生の先輩たち）。部屋の窓から夕暮れをながめ、食前酒のりんご酒が美味しかったので、ボトルを持ち帰り、青函トンネル記念館で目にしたポスターを頼りにダウンロードした映画「海峡」を寝転がって観る。高倉健、吉永小百合、三浦友和……みなさんお若い、「海峡」にあやかった「峡子」役、本名同じ女優さんがいたみたい……にしても、先進導坑・本坑・作業坑とか、記念館でみたまんまだな……と、最果ての旅情と乳白色の温泉にどっぷりとつかりつつ、2日目の夜は更けてゆく。

  2022.11.20

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  海峡の地へ（７）浅虫温泉→奥津軽いまべつ→竜飛崎

  夜明けを待って浜辺を散策。4月のカタクリの時季だけ渡し舟が出るという「湯の島」。よくみると鳥居が。こちらの岩は「裸島」。巨大な椅子のオブジェ。森の散歩へ。山を登りきって視界がひらけたときの海の風景は格別。来た道を下り、何処かの旅館の入り口に、猫たちが戯れていた。きのうの久慈良餅の本舗。腹ごしらえをして出発。電車待ち、というほどの時間もなくなったけれど、急いで足湯に入り、青森→新青森→「北海道へまいります、つぎは木古内です～」のアナウンスをききながらひと駅、降り立った最果ての新幹線駅。バスを乗り継いで…めざす海峡の地はもうすぐ。

  2022.11.20

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  海峡の地へ（６）青森・浅虫温泉

  季節がすすみ、朝の空気が澄んでくる10月の後半、去年の続きを旅することにしてみた。鉄道開業150周年にあわせて、峠の釜めしや金華サバのおにぎりを片手に青森へ。夕暮れ時に浅虫温泉に到着。駅前の喫茶店兼・一組限定のゲストハウスが今日のお宿。隣の道の駅「ゆ～さ浅虫」でひと風呂いただき、こぎん刺しやら久慈良餅やらを手にコリドーに戻り、こういう夕食を誰かに作ってもらうって、めったにない幸せだな…関野準一朗・花田陽悟木版画展を鑑賞して、大正ロマン薫る二階の部屋へ。ステンドグラスの間接照明とそのうつす影を愛でつつ、これからの旅路に想いを馳せる秋の夜長。

  2022.11.20

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  海峡の地へ（５）佐井→青森→三沢→八戸

  仏ヶ浦から戻り、佐井港で預けた荷物を回収して、青森行き高速船に乗り継ぎ。昼食は津軽海峡を眺めながら、大間マグロ丼。寄港地、脇野沢港。ゆら～り、ゆら～りと、午後ののんびりした時間を過ごしつつ、青森港に到着。迫力のある船が停泊していると思えば、係留された八甲田丸だった。駅へ向かうも、工事中なのか空港なみに歩くし、切符売り場は見つからないし、実は青森駅の乗り継ぎがいちばん綱渡りだったりして。三沢駅からほど近い、星野リゾート 青森屋　が今日のお宿。森の見える和室でくつろぎぐなり、年中ねぶた祭りの屋台に繰り出すなり……次は、本物の祭りを観に行くぞ。内湯と元湯を満喫したあとは、早めにチェックアウトして、かやぶき屋根の屋敷がならぶ庭園を散策。どこかに動物がいます。だから、こっちを向いて～紅葉、黄葉？もそろそろ見ごろに。面白い自販機を発見。三沢→八戸→古川→とりあえず帰宅、荷物を置いて→仙台、1年以上歩いていなかった一番町、人混みに慣れていないので酔い気味。人の背丈を超えたコスモスとともに、旅の締めくくりはやっぱり、翌朝にわが家から拝む朝日。さて来年は、何処へ旅しようかな。

  2021.10.24

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  海峡の地へ（４）大間崎→佐井・仏ヶ浦遊覧

  佐井港に到着し、青森行き高速船の乗船手続きを済ませてから、遊覧船に乗る。お、来た来た。どことなく、日本でないような感じ。それにしても、ほんとうに好い天気。

  2021.10.17

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  海峡の地へ（３）下風呂温泉→大間崎

  夜明けを待って、宿の周囲を散策。朝（あした）の海。ちょっとした公園があったけれど整備中。8月の大雨で孤立してどうなることかと思えば、復旧していて何よりだけれど、ところどころ傷あとは残っている。幻となった鉄道計画があったよう。海を眺めつつ足湯。宿の女将さんに、朝早いのでと言っておにぎりを持たせてもらい、通勤通学や買い物客で賑わっている路線バスで、つぎの目的地をめざす。大間崎に到着。雲ひとつない快晴。函館までくっきり。テイクアウトのまぐろ丼に保冷剤を付けてもらい、マグロの缶詰やら烏賊の脚やらを買い求めつつ、本州最北端の地をあとにする。

  2021.10.17

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  海峡の地へ（２）恐山→下風呂温泉

  恐山菩提寺。きのうまで、秋祭りでイタコがいたみたい。硫黄のにおいが漂う「地獄」と、エメラルドグリーンの「極楽浜」。こんなところに温泉。せっかくなので、雨風に吹かれつつ山歩きした汗を流していく。バス待ちがてら、朝方に宿の向かいのベーカリーで買ってきた昼食を摂り、下北駅前の土産物屋を物色し、コインロッカーから荷物を回収して、つぎの目的地へ。こんどは右手に海、そして海岸ぎりぎりのところに人が住んでいる。下風呂温泉に到着し、宿の内湯に入ってから港を散策。烏賊釣り船は、近くで見るとなかなかの迫力。古くからの湯治場を改修し、昨年秋にオープンしたばかりの外湯。井上靖ゆかりの客室の復元もあり。今夜は部屋食でのんびり……

  2021.10.17

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  海峡の地へ（１）八戸→大湊→下北→恐山

  旅のスイッチを入れてくれたのは、八戸駅で遅めの昼食にいただいた、烏賊めしと煎餅汁だった。直通快速列車で下北半島に入り、そのまま終着駅・大湊へ。ホテルの窓から、三日月と一番星。夕食は近所の小料理屋さんで。夜明けを待って、海を見に行ってみる。ん、ナニコレ？下北まで一駅乗る――旅はこれから。雨合羽を着込み、支度を整えて恐山へ。路線バスの中で観光案内、そして途中で止まってくれる。さあ、ここからが始まりだ。

  2021.10.17

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  リアル天然温泉＠山形・瀬見

  ツユクサに混ざるタデの割合が徐々に増えつつある此の頃、虫たちの声が子守唄。温泉地の朝。いつもの朝市で朝食と、季節の果物をゲット。気がついたら緊急事態宣言で中止になっていた。あらためて、ありがたさに気づく。地区の清掃をサボって出かけてしまった日も、結構賑わっている。相変わらず頼んでもいない袋をもらったので、道すがらゴミ拾いをしていく。みんながみんな、集まって作業しなくても、ひとりでできることもたくさんあるよ。というか、そもそも捨てなければいい話。プチ収穫。放置気味でも勝手に実をつけてくれるのだから、マメに世話すればもっと採れるのだろうな。すこし時間ができたので、瀬見温泉の、以前泊まった宿でひきこもることに。いつか、わが家を改修するときは参考に。かけ流し温泉つき客室にて、熱いので水を入れて調節してから。一夜明けて、宿の外へ出ていたものの、共同浴場もやっていないし、朝市の立つ気配もなく、静かな朝。薬研の湯、なる、源泉の沸いている河原に降りてみる。川の水と混ざって適温になるあたりを探りつつ足湯に浸かり、山の頂上の朝日を拝む。湯気に蒸かされながらの日光浴。朝の空気はひんやりとしているけれど、今日はいい天気になりそう。卵を持ってきて源泉に浸けたいな……と思えば、ちゃんと朝食に温泉卵が出ていた。宿を後にする頃には、すっかり霧が晴れて。なぜ、こんなところにトトロ？雪国らしさを探して。学校、と思えば公民館？今度で3回目だけれど、雪のない時季は初めて。田んぼの色づきのよいこと。蕎麦畑がちょっとした異国？情緒。紅花やらラ・フランス柄の手ぬぐいとか、おしどりケーキとか買っている時点で、プチ越境を楽しんでいるな。鳴子温泉が、いつになく賑わっていると思えば、SL（デゴイチ）がお目見え。ひと足早く帰宅して、こんどはカメラだけ持って終着駅で迎えられるのは、沿線住民の特権。撮り鉄がなにかと世のなかを騒がせているけれど、集まっている大人も子どもも、みんなマナーを守っていたよ。ただ頼むから、河原とか駅にゴミを捨てないで……予定がフルリモートになって、キャンプと迷い、雨なので温泉にしてみたけれど、川に沸き立つリアル天然温泉はアウトドア気分十分。冬なら源泉が適温だったりして。舟形マッシュルームのスープとか、金山杉の木製品とか、思い出した頃に、また来るんだろうなと、小さな旅をふりかえっている。

  2021.09.23

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  鳴子湯めぐり　～風雅・滝の湯・高友旅館～

  2月初めの休日出勤が決まった何か月も前から、この2日間は連休にすると決めていた。豪雪を想像していたけれど、積み上げられた雪こそ残っているものの穏やかな小雨、気温もさほど変わらない――むしろ西風がなく、湯けむりが暖かい。午後3時台に出発し、まだまだ明るいうちに部屋に入ってひと休み、暗くなってきたころに露天風呂へ。貸切なので思わず撮影。雪見朝ごはんとは贅沢な……そぞろ歩きで、お隣りの「滝の湯」へ。「鳴子風雅」、歴史あるお宿を現代ふうに改装した旅館でした。地元の子どもたちが練習するような小さなスキー場があるみたい。レンタルやっていないようなので、また今度。それとも雪解けがすすんでからなら、潟沼へハイキングかな。駅前の足湯に浸かって温泉街をあとにし、東鳴子へ移動、外湯もたくさんあって迷ったけれど、知る人ぞ知る「高友旅館」へ。石油系というのか、とにかく黒い、強烈な香り。広々した混浴に、先客のご夫婦?が一組いたけれどまったく気にならず。さらに秘湯の馬場温泉共同浴場は次回かな。土産物屋でゆべしを買って帰路へ。さあ今度はいつ来られるかな。

  2021.02.28

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  10月18日：細道の先へ（４）宮古・浄土ヶ浜遊覧

  抜けるような秋晴れの朝、ゲストハウスの共有キッチンで龍泉洞の水を沸かし、きのう道の駅でゲットした久慈「フォレストキッチン」のバラの紅茶を水筒に淹れる。駅のロッカーに旅荷を預け、帰りの切符を買って、最後の目的地、浄土ヶ浜へ。バスを降りるなり、この青空と海。白い石灰岩は、どことなく、この世のものでないような風景。餌付けされたウミネコとともに。ローソク岩に、間欠泉のような潮吹穴に（撮影はできず）、船旅はつづく。聞けば1962年に就航したというこの遊覧船、来年１月でラストランだそうな。高度成長、バブル景気、新幹線開業、失われた20年、3.11と復興、そして今年のステイホーム……ひとつの時代の終わりを見とどけているような気分だけれど、それでなくとも、一日一日が、二度とかえらない大切な時間。船を降りて、しばし散策。絵葉書？観光を満喫したあとは、駅前で「瓶ドン」なる新しいご当地グルメに舌鼓。帰路、高速バスで山道を進むにつれ、深まりゆく紅葉。旅の締めくくりは、わが家の裏の跨線橋から拝む夕日。昨年の台風で一年越しに実現した北三陸紀行、雁たちの鳴き声が、そろそろ冬支度だよと、季節の移ろいを告げる。

  2020.11.23

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  10月17日：細道の先へ（３）久慈→田野畑（北山崎、鵜の巣断崖、島越）→宮古　～三陸鉄道・北リアス線の旅～

  三陸鉄道旅の折り返し。田野畑駅で予約しておいた観光乗合タクシーに乗車し、北三陸の景勝地めぐり。同乗のお客さんは、全国各地からシェフの集う「ロレオール」なる本格レストランが目的地のよう。北山崎にて。マトリョーシカのように繰りかえすトンネルと三角岩の組合せ、曇り空ながら、これはまた趣がある。3つある展望台のうち、2つ目まではなんとか回れた。つぎに来るときは、もうすこし余裕をもって、レストハウスでゆっくりするかな。つぎの目的地、鵜の巣断崖へは、ハイブリッドタクシーで駅を通過し、道の駅に立ち寄り、山道を南下すること30分くらいだろうか、同じ村内なのに広いこと。紅葉の始まりつつある並木を歩き……みちのく潮風トレイルに、道は続いてゆく。宮古方面に行きますと運転手さんに伝えると、ひとつ手前の駅まで送りますよといわれ、お言葉に甘えることに。東京駅ふうの新しい駅舎と、集落ごと流失した島越地区の、階段のみを残す旧駅舎に、津波到達高17.9mを示すポール。そういう旅のつもりでなかったのに、なぜか、導かれるように、あの日、に引きもどされる。名も知らぬひとびとの慰霊碑に手をあわせるたび、いまだ心が痛むけれど、そのぶんだけ、すこしずつまた強くなれるかな……案内してくれた運転手のお兄さん、地元から東京で進学、就職したものの、自然のなかで子育てしたいと、この田野畑村に戻ってきたのだとか。上手く言葉にならないけれど、こういう若者が地域の宝なんだろうなと、つぎの目的地をめざす。待合室は吉村昭文庫。お、今回はレトロ列車だ！終点・宮古駅に降り立ち、ことしオープンしたばかりの「ゲストハウス3710（みなと）」に、まだ明るいうちにチェックイン。夕焼けをながめつつ山歩きの汗を流し、ひと休みしてオーナーさんおすすめの寿司屋へ繰り出したりするのも、駅近の素泊まり旅ならでは。バーカウンターで呑むひとあり、ラウンジでテレワークするひとあり、みんな思い思いの時間を過ごしているラウンジで写真整理しつつ、2日目の夜は更けてゆく。

  2020.11.23

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  10月16-17日：細道の先へ（２）岩泉小本→久慈　～三陸鉄道・北リアス線の旅～

  龍泉洞前からコミュニティバスに乗り、川沿いを進み小本駅へ。駅と役所の支所やら公共施設が一体化していて珍しい。すこし時間があるので、こども図書館で地元の地理歴史をにわか勉強(?)。ホームの待合室。宿泊地・久慈で、駅にほど近い宿の女将さんに教えてもらった、地元食材を使った新しいイタリアン風レストランへ。ヤリイカのソテーがお勧めとのこと、フォカッチャにサラダも付けてもらい……サングリアよりも雰囲気に酔っているな。夜は部屋の炬燵で持ち込み仕事をして……翌朝、駅へ行ってみると、70代くらいのご夫婦に道を聞かれ……7時ちょうどに「あまちゃん」の主題歌にあわせて、お弁当屋さんがオープン。朝から「うに弁当」に、岩泉の水で淹れたお茶とは贅沢な。宿をあとに、「やませ土風館」なる道の駅に立ち寄れば、昭和にタイムスリップしたコレクション。あとすこしで、マニアなオーナーさんのカフェがオープンするのかな。土産物屋とスーパーが混在しており、松茸を買い求める地元のひとがいると思えば、ふつうのお魚が普代村やら野田村産やら。車内で食べる予定の昼食を買って、きのうのレストランに、お弁当屋さんをカメラにおさめ……今回の旅　最北端の地をあとにする。

  2020.11.23

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  10月16日：細道の先へ（１）盛岡→岩泉　～紅葉ドライブと湯ったり森林浴～

  澄みわたった青空のもと、ひさびさの旅へ（盛岡行き車窓）。盛岡で長距離バスの切符を買い、乗車してほどなく、秋深まりゆく岩洞湖沿いを走る。白樺の黄葉に、ときおりナナカマドの赤が混じる。龍泉洞は冠水でお休みとのことで、近くの温泉に目的地を変更。11時半からの日帰り一番乗り、しかも貸切状態、窓から紅葉もちょっと見える。ロビーの薪ストーブが気になり、近づいてみるとクラフトマン。滝の音に耳を澄ませつつ、清流沿いの遊歩道を進む。リアス式海岸のミニチュア？レストハウスで、限定の岩泉ホルモンラーメン。バス待ちがてら、また紅葉狩り。

  2020.11.23

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  2020年1月：山形・瀬見温泉の旅

  関東からの帰りみち、メインルートの混雑を避けるように、山形新幹線に乗る。新庄駅の乗り継ぎ時間、駅となりの消防団関連の展示やら土産物をながめているとあっという間。瀬見温泉で下車し、小国川にかかる橋を渡る。この土地にしては雪が少ないのだろうけれど、ことしはこれまで、まったく降らなかったので、ちょうど足ならし。「観松館」客室の半露天風呂。一度、こういう部屋に泊まってみたかった。そして、また毎年でも泊まりに来れればいいな。朝がた、隣の外湯「せみの湯」まで、浴衣に長靴でそぞろ歩き。以前泊まった「喜至楼」との位置関係が、ようやくつかめてきた。晴れたり小雪が舞ったり。夜も朝も食い倒れだけれど、ジャンボマッシュルームの焼物と、マッシュルームスープは絶品。雪晴れの眩しさにも、少しずつ目をならしてゆく。道中もときどき地吹雪が舞うけれど、気がつけば県境を過ぎ、鳴子温泉から列車が少し賑やかになってくる。山を越えれば、たぶん、あっけらかんとした晴れが続いているのだろうな……

  2020.03.15

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  秋旅・最北の島を訪ねて（10月4-7日）

  台風がひとつ去って、もうひとつ近づく前の、束の間の秋空。仙台空港から飛び立つのは、いつ以来だろうか。空から見おろすリアス式海岸は、たぶん去年の今ごろ訪ねたあたりかな。すこし振りかえって思いあわせる、復興の理想と現実……本州の北の果て。新千歳は雲ひとつない快晴、21℃。ここから陸路400km、何気ない田園に、北海道らしさを探して……どの家にもあるのは、風除室と車庫、それから煙突。風力発電のある風景。日本海に沈む夕日。朝一番に稚内港を出発。利尻富士が近づき……後方には淡くサハリンの島影、たぶん。礼文島上陸。最果ての岬、でも南国のような透明度。「北のカナリアたち」ロケ地。島の全景を一枚におさめられるのは、かなり離れてから。利尻島、秋の植生たち。台風の爪あと。岩場のカモメ？ ウミネコ？昆布の直売店。逆さ利尻富士。台風接近中、でもこちらは凪のまま。日本最北端、宗谷岬。オホーツク海、なだらかな海岸線。復路も陸路400km、どことなく、日本でないような風景……あ、何か居る。大雪山の麓の温泉に一泊して、雨もようの紅葉狩り。雨風に足を止められなかったのは、たぶん日ごろのおこないがよかったのかな。降り立った仙台空港、台風一過の熱気と強風。まあ、この時季はいつも、帰り着いたわが家からの朝日がいちばんなのだけれど（10月8日）。さて、来年は何処へ旅しようかな。

  2018.10.08

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  海街・初夏徒然

  ときには空を見上げて、森の空気を吸って、無機質なコンクリートのなかで画面とにらみあっているうちに過ぎてゆく季節を追いかけて旅に出たい…かつてボランティアの拠点だった民家の裏山（5月6日）。タケノコが採れたからと誘われたら、いつのまにか、あたらしいプロジェクトが動きつつあるようだ。いつもの朝日（5月11日）。特別どこかに出かけなくても、こんな風景に目覚められるしあわせ。でも、この朝霧の時季、毎日見られるわけではないから、きっと、なにかいいことがあるはず……天気のよい土曜のお昼、はまぐり堂でおにぎりをテイクアウト（5月12日）。鮎川港で、積んできた自転車を組み立てて坂を昇っていると、「かに汁　たこ飯」の看板（Sunny's Kitchen）。どことなく、宮城でないような風景。漁師さんの、おまかせランチ。どことなく、日本でないような雰囲気。今夜はニューさかいで泊まりですと挨拶して……道すがら。いつか小渕浜の仮設に招かれたお父さんや、リボーンアートの鹿のオブジェの前で写真を撮ってもらったお姉さん、鹿の解体ツアーの運転手を務めてくれた宿のマスターやらと、思いがけない再開を果たし……リニューアルオープンされたばかりの露天風呂を満喫しつつ、半島の夜は更けてゆく。霊島朝日（5月13日）。元気市場の金華サバ定食に並び、あたらしい発見を求めて路地を歩き、風通しのよいIRORIのフリースペースで心地よい音楽を聴きつつ、旅の記憶をたどっている土曜の午後、持ちこんだはずの作業はさっぱり進まず……でも、アイデアとかクリエイティビティとかいえば大げさだけれど、いつもの日常をちょっと視点を変えてとらえるきっかけは、こういう一見無駄な時間から生まれてくるのかもしれない。そして、たまには、こんな時間があってもいいような気がする……なんでもない観測でも、ずっと続けていくことで、移りゆく街の風景の一部となって、いつか、なにかを残し、伝えることができるのならば。

  2018.05.26

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  秋の細道（５）大島→気仙沼→志津川 ～三陸沿岸紀行 part2～（10月4日）

  大島の休暇村から、朝焼けの田中浜へ降りてみる。水平線に浮かんでいるのは、朝一番の渡し船だろうか。よみがえれ、松林。穴の開いた二枚貝を見つけたので、輪に通してみる。宿のお兄さんの案内で、亀山山頂へ。はるか彼方に臨む金華山。定期船から橋を眺めるのは、今だけの経験。遊覧船として残すようだけれど、バイクに乗った郵便屋さんや、物資を運ぶトラックと旅人が同乗するのは、もうすぐ最後になる。気仙沼港周辺の土地勘が、ようやくつかめてきた。かつて訪れた仮設の商店街（南町紫市場）がこの春に解体され、整地の真っ最中。復興のひとつの過程ながら、寂しいと惜しむ声もあったよう……工事中の砂利道を歩き、いち早く本店舗で復活した「あさひ鮨」へ。ランチタイムの一番乗りでカウンターに案内される。酢味噌でいただく、初もののサンマ。不漁だった今年も、ようやく揚がるようになったらしい。5年前、仮設で営業していた同じ店で「復興ランチ」をご馳走になったときは、海産物に飢えた山国信州の住人だった。いろいろなひとと出会い、いろいろなことがあったけれど、これもひとつの定点観測。つぎに訪れるときは、まわりの景色も、またすこし変わっているかな。正午すぎ、ふたたびBRTに乗り、最後の目的地、志津川をめざす。さんさん商店街の一角にある、地元の写真屋さんの常設展。自衛隊がブルーシートにくるまれた遺体を運び出している、非日常が日常だったあの頃。防災庁舎でアナウンスを続け犠牲になった女性職員が、中学生のときにタイムカプセルに詰めた、30代の自分に宛てた手紙。一枚の写真を前に、言葉なんて、そして、あの日起こったことを前に、人間なんて、どれほど無力なのだろう、泣きたければ、泣いてもいい……ふだんは、これほど穏やかな海なのに……帰り着いた大崎平野のわが家にて、一夜明けた朝。志津川湾はきっと、朝日が水面にきらきらと反射しているのだろうな……あの日起こったことも、もっとこうしていればという思いも、変えることはできないけれど、それでも、名も知らぬ海を前に茫然と立ち尽くし、波にさらわれた土地をさまよう夢を、もうみることはたぶんないだろう……縁をいただいた地で、苦楽を分かちあえる仲間と、自分なりの「復興」を歩んでゆくことができるのならば。（完）

  2017.10.07

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  秋の細道（４）大谷海岸・気仙沼大島 ～船旅と潮騒ウォーキング～（10月3日）

  朝風呂から雲の切れ間の日の出を拝み、浜へ降りてみる。秋空が広がっているものの、履きものを脱いで波うちぎわへ歩いてみれば、県北の10月の午前6時台と思えないほど、砂と水が生ぬるい。BRTの到着まで、すこし時間がある。道の駅に設けられた献花台に手を合わせ、目を閉じれば、白砂青松を吹きわたる風の音と、海水浴の家族連れや、駅のホームで列車を待つ学生さんたちのはしゃいだ声が、潮騒のなかに聞こえてくるようだ。しかし、現実は……都市部や内陸にいると、こういうまざまざとした光景を目にすることがなくなりつつあるけれど、此処も同じ宮城県。それでも、宿の海産物と自家栽培の野菜の料理は、ほんとうに美味しかった。このクオリティの2食つきにオーシャンビューで、この価格は破格。釜石のようなものづくり精神もされど、その前に、豊かな海の恵みと、心あたたまるもてなしのあるところには、きっとまたいつか、在りし日の活気がもどってくる……はずだ。気仙沼に戻り、大島へ向けて出発。この春に架かった橋は、開通までもうすこし。宿にいったん荷物を置いて、海をながめつつ山道を散策。キノコ採りのお父さんとすれ違えば、その手のなかには、笠の開いた松茸と閉じた松茸が一本ずつ！雲行きが怪しげ……でも明日は晴れそう。こんな季節に桜？マンボウの酢の物にホタテの焼き物、メカジキカレーに気仙沼ホルモンやら、昨日にひきつづき食い倒れ。

  2017.10.07

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  秋の細道（３）釜石→陸前高田→気仙沼→大谷海岸 ～三陸沿岸紀行～ （10月2日）

  駅前の真新しいビジネスホテルで、ウミネコの鳴き声を聞きながら朝露天風呂。そして三陸鉄道で出発。海を見おろす大観音。なだらかな海岸線の吉浜湾。「恋し浜」駅のホタテ。BRTに乗り継ぎ、沿岸をさらに南下。大船渡から陸前高田市内へ入ると、目印のない空き地やかさ上げ地が続き、タブレットのマップも正しい場所を示さない。BRTを降り、一本松を目指して歩いているうちに、正午を迎えた。やなせたかし氏原作のアート。きのうのブルーナ氏とともに、復興と子どもたちの成長を、天国から末永く見守ってくれているかな。かつて賑わった道の駅とガソリンスタンド。ちょっとした飲食店や土産物屋の集まる一角にある、「岩張楼」ラーメン。がんばろう、という言葉が、すべてのひとに適切なのかどうかわからない。すこし周りを見わたせば、まだ工事車両が大活躍中の、埃っぽい土地と道路がどこまでも広がる。これからあたらしい街ができたとして、かつて暮していたひとが、みんな戻ってくるのだろうか……ただ、そんな場所だからこそ、遠くから見える目印と、訪れるひとが集まる核が必要なのかもしれない。ふたたびBRTで海岸線を南下し気仙沼へ。5年前のかすかな記憶をたどり、レンタサイクルで観光桟橋へ。シャークミュージアムの「氷の水族館」。マイナス20℃の世界でプロジェクションマッピングに宝船、ハロウィンの演出も。大島汽船の発着所を臨む、k-portなる喫茶店でひと息。帰宅途中の高校生たちで満員のBRTで大谷海岸へ。「はまなす海洋館」の夕食。フカヒレの姿煮。オーシャンビューの部屋で窓越しに月を眺め、潮騒を聞きながらおやすみなさい……

  2017.10.05

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  秋の細道（２）遠野→釜石 ～鉄とラグビーの港町～（10月1日）

  朝霧の晴れた山里。朝のちょっとした散歩のつもりが、五百羅漢の看板を見つけ…苔むした岩が並んでいるだけのようだが、あれ、よくみると顔が！駅への道すがら。釜石駅11時出発のバスツアーに参加するため、ローカル線に乗る。製鉄所の煙突～近代都市に来た感たっぷり。世界遺産・橋野鉄鉱山の高炉。しかし山道を車でも小一時間、ベコと馬と人力だけの時代に、よくぞここまで物資を運んだものだ。山を下り、遅めの昼食。街を歩いてみると、ラグビー関連のイベントで賑わっている。なぜかこんなところにミッフィーカフェ。ディック・ブルーナ氏の復興支援が縁だとか。暮れなずむ山岳工業都市。仮設商店街のディープな雰囲気に惹かれ、「こんとき」なるラーメン屋を探しあてたものの、日曜の夜はお休みのよう。またいつか機会があれば。

  2017.10.05

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  秋の細道（１）花巻・遠野 ～銀河鉄道と民話の里～（9月30日）

  秋晴れというにはまだ日差しのきつかった9月の終わり、新米の待ち遠しい季節。北へ向かう車窓、ふだんとすこしだけ違う、パッチワークのような田園風景が広がる。熊谷達也氏の「光降る丘」をkindleで開いてはみたものの栗原耕英の開拓史に思いを馳せる間もなく、「はやぶさ」は県境を越え、ほどなく新花巻へ到着。「SL銀河」入線！ラグジュアリーな車内は、動く宮沢賢治博物館。煙もくもくの車窓。宮守駅を過ぎた先のめがね橋が、撮り鉄スポットのよう。三脚を立てた外のひとたちに、手を振ってみる。最初の目的地、遠野に到着。駅前で茶会が開かれており、銀河鉄道の絵柄の茶碗でお手前にあずかる。雨ニモ負ケズ、自転車で6km、伝承館をめざす。囲炉裏端で「オシラサマ」の民話と、「ひっつみ」の昼食。雨合羽を着て河童淵へ。晴れた日よりも、こんな空模様のほうが釣れるかも？山里は早くも、秋本番。雨あがりの博物館、柳田國男氏の書斎と中庭が羨ましい…これからの旅のお供に。宿でも座敷童子やらいくつかの民話を聴き、夕食は内陸感たっぷり……早くも海ロス？ でも明日は釜石！

  2017.10.05

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  夏の思い出 ～Reborn Art Festival in 牡鹿半島（２）～

  漁師さんと、朝なぎの海へ。前日に仕掛けた定置網に、さて何が掛かったか…浜に接岸し、獲物を煮るなり焼くなりして喰う。むかしむかし、ここに学校があった。虫めがねでのぞけば、子どもたちの遊ぶ風景がみえてくるかな。牡鹿半島オブジェ。鮎川方向へ海岸ドライブ、そして、不法投棄物オブジェ。「時の海・東北」ツリーハウスからの眺め。こちらは、数年前に休校の小学校。トンボのオブジェ。と思ったら、本物のトンボ。駆けまわる子どもたちの姿もなくなった校庭の片隅にも、生命が息づいていた。毎朝、日の出の時間に石巻のどこかで撮影している写真家は、夜明けの青は、何かが生まれいずる色だという。この夏、この地に集結したクリエイティビティを核として、また新たな何かが生まれ、育ち、つながってゆくことへの祈りをこめて……Re-born 牡鹿、Re-born 宮城。

  2017.09.03

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  夏の思い出 ～Reborn Art Festival in 牡鹿半島（1）～

  7月末から始まり、そろそろ終盤のReborn Art Festival。どんなものかと、8月半ばに参加。鹿の解体ツアー。肉を仕込み、アート鑑賞へ。空からみると、航跡がファスナーにみえるのだとか。そうこうするうちに焼きあがり、ぶどう酒とともにいただく。（つづく）

  2017.09.03

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  信州里帰り ～善光寺門前ほか～

  きょうのアサガオとゴーヤ。きのうは、しばらくぶりの信州。山すそのビルの温度計は朝から30℃を示している。が、思いのほか風が爽やかなのは湿度の違いだろうか。すこし時間があるので善光寺大門までバスに乗る。こんなお店あったかなと周囲を見わたしていると、和も洋も、旧いものも新しいものも、石畳の参道にとけこんでいる。かつて自分の庭のようだったこのエリア、木々の緑の添える彩りに気づくのも、ひさしぶりに足を運んでみればこそ。以前通っていた、アーケードのひっそりとした映画館、相生座・ロキシーの前を過ぎ、権堂から長野電鉄特急に乗れば、次の須坂駅まであっという間。EIGHT DAYSなる雑貨屋に立ち寄り、モロッコのバブーシュを勧められ、つい買ってしまう。知人たちと合流し、夕方まで束の間、里帰りモード。ふるさと納税のナガノパープルが、いまから楽しみだ。長野市周辺、ほどよく都会で、でも人が多すぎず、ほどよく坂があってよいなと思ってしまう。暮していた頃は海への憧れが強かったけれど、山に囲まれた風景にもまた落ち着く。それぞれの良さがあるので、どちらのほうがということはないのだけれど、ときどき訪れることで、いまの暮しを見なおすことにもなる。 ときには、また旅に出よう。そして来年はきっと、よい報告ができるようにと……切りとった「ふるさと」の青空に誓う。

  2017.07.16

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  2017年2月：続・雄勝石めぐり in 関西 〜大阪市中央公会堂〜

  ようやくデータ移行作業完了。まあこんなことでもなければ、過去の記録をふりかえる機会なんてない。そして、記録に留めておかなければ、なおのこと記憶にとどまるはずなどない。というわけで、まずは写真整理。関西出張中の街あるき part2。大阪市中央公会堂。屋根が一部、雄勝石らしい。都市のオアシス。熊野街道へ、道は通じているようだ。旅の続きは、いつかまた。

  2017.04.24

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  女川航路・金華山／界隈視察

  霧に包まれた新緑の並木道を抜け、始発列車に乗りこむ。多賀城の歴史博物館に掲げられた企画展の横断幕、塩釜の繁華な港町、松島の旅館と牡蠣小屋……幾たびか見なれたはずの車窓が、初夏の朝日に包まれた今日はどことなく新しい。ときに、いつしか水の張られた田んぼを一歩ずつ歩く白鷺に目を留め、雑木林の小鳥のさえずりに耳を傾け、あるいは地球上の何処かの天災や疫病を伝える朝刊に目を落とすなり、船の時刻を確かめるなり……三月末のまちびらきの日には混雑のあまり気づかなかった風景と穏やかに流れる時間を満喫しているうちに列車は海岸線に沿ってゆるやかなカーブをきり、トンネルを抜けるとウミネコたちの鳴き声に出迎えられる。プレハブでチケットを買い満員船に揺られること半時間、八重桜の花吹雪を浴びてたたずむ鹿たちをながめつつ参道を登り黄金山神社へ。トランシーバ片手に走りまわる知人たちと合流し土産店に立つ。アクセスがスムーズになったこともあってか、いつになくにぎやかな祭日のようだ。そしてこれまで何処かで行きあったひとたちとの再会はやはりほっとする。帰路の列車待ちがてら、こちらもほどよいにぎわいをみせる明るく真新しい温泉「ゆぽっぽ」に立ち寄る……周囲を見わたせばいまだ重機と造成されたての土地ばかりだけれど、ひとの流れのほうが、先取りするかのように確実に変わりつつある。そして「サンファンヴィレッジ」のような滞在施設がふえたことで、かつて自分が訪れた頃よりも、宿のキャパシティが格段に改善していることもまた確かだ。翌日は東京からの一行に合流し原発関係の視察後、「ステイイン鈴屋」で昼食を。高台から霧のようやく晴れた海を見下ろし撮影しているメンバーたち……「観光」とは光を観ることであると先人はいう。日常を離れ、わざわざ「陰」の部分を観に訪れる志は尊いものだけれど、むずかしい理屈をこねるよりもまず、危機一髪で永遠に奪われることを免れた、そしてこれからもその恐怖が拭い去れていない、この海の豊かさと土地のひとの温かさを感じて帰れば、それで十分でないかとも思う。街なかへ移動して開北の仮設へ。一年前に女川に赴任し一人で事務所を守っているという旧い知人に思わず、お互い復興を見とどけましょう、と柄にもなく声をかけてしまう。こんど「はまぐり堂」のランチをご一緒しましょうね、とも。一日のインターバルをおいて、また三陸道に乗っている。いつか読んだ短編小説のフレーズを借りるなら、返されたと思ったらまた借り出される図書館の本のようだけれども、書庫の奥に積まれて埃をかぶるよりは、すり切れない程度に借りてくれるひとびとの手あかがついて戻るくらいがちょうどいい……さてこの次はどんな海の幸を味わえるのだろう、次の次は直通列車で往復できるようになるだろうかと、めぐりくる季節に想いを馳せる。

  2015.05.06

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  女川まちびらき×ももいろクローバーZ

  眠りから覚めつつある街を駆け抜ける配達員の運ぶ地元紙の一面が、女川のまちびらきを伝える。誘い出されて石巻線に乗りこめば、原色系のパーカー姿の若者たちに囲まれる。首都圏の何処かの列車に迷い込んだかのような満員ぶり、ボックス席をひとりじめしてのんびり新聞を開き朝食をとり海をながめつつひなびた終着駅の温泉を訪ねるようなローカル線の旅のおもむきは、この日に期待してはならなかったようだ。知人たちと合流して駅前の屋台を抜け、シャトルバスで山ステージへ登る。造成中の土地に囲まれた運動公園がライブ会場と化しており、パーカーやらフェイスペイントの彼ら彼女らが手を振り躍っている――女川を訪ねたというより、人間観察をしつつイベントを手伝ったというほうが正しいのだけれど、まあこんなことでもなければ「青春賦」の生歌を聴く機会なんてなかっただろうし、それと同じくらいに、此処に集まっているひとたちの何割かは、この地を訪れる機会もなかったかもしれない。ひとが集まることは、どんな理由であれ集まらないよりはたぶんいいことなのだろうけれど、でも、立派な施設ができたりちょっといい暮らしができたりすることが、仮に目に見えない恐怖とひきかえなのだとすれば、なにがほんとうにいいことなのかはよくわからない。小牛田駅で寄り道をし、ふきのとうと菜の花を買ってほっとひと息。「被災地の今」などという言葉でひとくくりにされることには違和感がありすぎだけれど、これもまたひとつの現実にはちがいない。そしてこの次は、ふつうの日にふつうの街に足をはこんでみようと、でもいつになったらいろいろなことがふつうに戻るのかなと……彼岸すぎの夕日を見送る。

  2015.03.24

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  蔵の町・小正月／しあわせ運べるように

  雲ひとつない青空に、風の音ひとつ立たない冬晴れの朝。猫がひなたぼっこをしている小路を抜けると臥竜公園。桜の古木たちが結氷した水面に影を落とし、水鳥たちが氷と水の境目に沿って列をなしている――信州を離れてから、帰省のように足をはこんだことは数あれど、こうして散策するのは何か月ぶりだろうか。小正月の休日、消防出初め式の行進をながめ、「おやつとごはんの店ai」で昼食をとり、雑貨店をめぐる。仮店舗に移転していた「ヤンネ」が復活オープンしていたほか、今年ならではといえば、羊の顔をしたカップケーキを「n-style」で買ったことくらいだ。「ゲストハウス蔵」へ戻ると、翌日のどんと祭で焼くための色とりどりのお団子作りが行われており、地元の子どもたちと一緒に手伝いつつ、中庭に積もった雪をながめる。……どこにでもありそうでいてどこにもない、大きな街では決して味わえない贅沢。朝のコーヒーを飲みつつスノーモンキー見物のお客さんとご挨拶。この近くで仕事していたなんて羨ましいですねと、いわれてみれば、たしかにそのとおりだ。スキーヤーのお客さんに八幡平「ゆきの小舎」と、瀬戸内海の「直島」のことを教えてもらった。今年の夏旅は、原点にもどって生みのふるさとの島めぐりもいいかもしれない。そしていつか、そんな原風景の海と、育てのふるさと信州の山並みと、ひとのあたたかさをそなえた新天地に根を下ろす……♪　……苦しいことものりこえ 当たり前のようにすぎていく　毎日を大切に生きてゆこう これからの「ふるさと」を　ぼくたちが支えてゆこう 次はぼくらが支えて行く　「ふるさと」のまちを　♪（「しあわせ運べるように」3番　一部抜粋改編）明日を信じて。 

  2015.01.18

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  「浜へ行こう」@牡鹿半島（２）

  朝日に輝く蔵王連峰を半島のはるか彼方に拝む。水揚げされたばかりの牡蠣を手にとり、剥きかたを教わり、あのときボランティアのみなさんがいなかったら漁師を続けられていないよ、との語りに耳を傾け、白波の海を仰ぎながら網焼きにかぶりつく。「サン・ファン館」奥の食堂「浜友」で、くじらベーコンやら金華穴子、酢豚ならぬ「酢鯨」をつまみつつ、地元のメンバーを交えて、でも何故か初めてでないかのように会話がはずむ。街へ戻り、「ニューゼ」で石巻日日新聞の壁新聞やら当時の写真を見学。つい三年前のことなのに、ふとした瞬間に、原爆資料館を歩いているのと変わりないような感覚に、襲われなくもない。もしもいま、同じように感じているひとがいるとすれば、あのときの痛みを消化、あるいは昇華させてのりこえつつある証拠なのだろうけれど、そういうひとがふえることは、そこにたどりついていないひとが、なお見えにくくなることと裏表なのかもしれない。まだ観光という言葉を使うことさえためらわれ時期をふりかえれば、こんなにのんびりしていいのかなと、こんなことができるようになったのだな、という気持ちが入り混じって言葉にならないけれど、ほんとうに支えを必要としているのは、むしろこういう場所に出てこないひとたちだろうから、飲んで笑って、復興バブルに浮かれているだけじゃないかといわれても、あたらずとも遠からずと思わなくもない。明るい話題がクローズアップされるのはもちろんいいことだけれど、ここ数年の間にも入るひともいれば出ていくひともあり、組織の離合集散の話も至るところから聞こえてくる……五年後、十年後どうなっているかは神のみぞ知る、であろう。できることがあるとすれば、市外から石巻へ、県外から宮城へ、海外から日本へ、仕事でも勉強でも、なにかのきっかけで移り住んだり訪れるようになったひとたちとともに、土地のひとが何を思いどんなふうに暮らしているのか、これからも訪ね続けていきたい。そしてそのためには、ボランティアに代わる新しいシステムが必要なのだけれど……「がんばろう」の先にある明日に想いを馳せつつ、南浜町に沈む夕日を見送る。 

  2014.12.07

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  「浜へ行こう」@牡鹿半島

  前日の昼間に舞った初雪に路面の凍結を案じつつ三陸道に乗る。石巻駅前でJENのメンバーと合流し、入居待ちの復興住宅を車窓に市街地を抜け、万石浦を渡る。いつか訪ねた「はまぐり堂」に、ツリーハウスが完成したらしい。小渕浜の集会所で浜のお母さんにサンマのつみれ汁の作り方かたを教わり、鯨の竜田揚げにしうり貝ご飯、茎わかめの漬物とともに昼食を。そして昼間から卵酒をご馳走になる。区長さんの仮設住宅に招かれ、奥さまの遺影に手を合わせる。鮎川浜へ進み、壁を塗りなおした「おしかのれん街」でチェーンソーアートをながめたり乾物を購入しているうちに日没を迎えた。スギとヒノキの香る民宿「あたご荘」へ。互助組織「寄らいん牡鹿」や「くじらのしっぽ」のお母さんたちや、お隣「めぐろ荘」の若旦那、「プレアツーリズム」運営の石巻専修大学の学生さんたちと酒を酌み交わし……といいたいところだが、タクシーも代行もないので地元のお母さんたちにはウーロン茶を注ぎつつ薪ストーブを囲み、冬の嵐の夜は更けてゆく。（つづく）

  2014.12.06

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  山形市街散策～文翔館×とっておきの音楽祭～

  収穫を待つばかりの水田にヒマワリやコスモス、ときに白い花畑……絵に描いたような田園風景を車窓に陸羽東線を進み、新庄から山形市へ抜ける。大正5年に建てられた旧県庁舎・重要文化財「文翔館」へ続く道の一角で、「心体表現の会」なるグループのメンバーが踊っている。ほとんど初めて訪れる街なのに、聞きおぼえのある「オハイエ」のメロディと見おぼえのあるTシャツに何故かほっとする。そしてメイン会場で仙台のメンバーにご挨拶。そう、「とっておきの音楽祭」のバリアフリー・スピリットは、地域の壁さえもこえてしまうようだ。「るろうに剣心」のロケ地となった洋館と中庭を撮影し、もう少し街を歩いてみる。9月とはいえ、内陸の昼さがりの陽光は侮れない。日陰を探していると、この街にも長野市の「ぱてぃお大門」のような広場があることに気づく。ソフトクリームを買ってベンチに腰かければ、少しかわいた風がジャズをはこんでくる……そう、ストリートがステージの音楽祭は、ちょっとした旅や街歩きに、ちょうどよい色を添える。お手伝いすればよかったのだけれど、今回は観客として楽しませてもらった。いくつもの出会いに感謝しつつ、豆名月のお菓子と「つや姫」を手土産に、隣県への旅を終えた。 

  2014.09.09

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