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2023年04月02日
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カテゴリ:音楽
先週半ばの朝、いつものようにFMラジオをかけっぱなしにしていると、7時のニュースに続いて「クラシックカフェ」(再放送)が始まって間もなく、アンドラーシュ・シフがクラヴィコードで弾いたバッハの「3声のシンフォニア」が流れはじめました。

この録音、今年初めにリリースされたもので、バッハの初期作品を中心にしたCD2枚組のアンソロジーです。収録されているのは1枚目がカプリッチョ「最愛の兄の旅立ちに寄せて」、「2声のインヴェンション」、「4つのデュエット」、「音楽の捧げもの」 から3声のリチェルカーレ、そして2枚目には「3声のシンフォニア」と「半音階的幻想曲とフーガ」が収まっています。



シフは近年ピアノのピリオド楽器に大きな関心を示しており、一昨年には19世紀(1859年頃)に製作されたブリュートナーのピアノを用いてブラームスのピアノ協奏曲を入れたCDが話題になるなど、クラシック音楽界では異色(?)の「ピリオド楽器派」として鳴らしています。そのシフがついにバッハの同時代に使われていたクラヴィコードによる演奏を世に問うたとあって、亭主も気になっていたところでした。出勤の身繕いをしながらの慌ただしい中、聞き耳を立てることに。

3声のシンフォニアは、2声のインヴェンションとともにバッハ自身が教育目的で作曲した音楽で、近代以降もピアノの教材の定番として初心者にはお馴染みのもの。が、音楽に「感動」を求めていた小・中学生時代の亭主には、これらの曲集、特に「3声の…」は地味で退屈だという印象しか持てませんでした。そうしてオトナになった亭主にその魅力を気づかせてくれたのは、誰あろう若かりし頃のシフであり、彼のモダンピアノによる演奏(1980年代の録音)はしばらくの間亭主の愛聴版でした。

さて、今年の暮れに喜寿を迎えるシフのクラヴィコードによる演奏はどうかというと、演奏には好感が持てるものの、音についてはこの楽器によくある地味でポロポロした響きで、こちらは今ひとつといったところ。(自らの耳で確かめたい方のために、CDのリリースに合わせて配信された音楽の捧げもの・3声のリチェルカーレのユーチューブ動画をリンクしておきます。[こちら])

R.カークパトリックが平均律クラヴィア曲集の録音で使ったドルメッチやジョン・シャリスの手になる楽器はダルシマーにも似たキラキラした響きを持っており、そのようなサウンドに魅せられている亭主としては、やや不満が残りました。

とはいえ、ここで気になってくるのは、シフが昨今盛んになっている古楽のアプローチをどう考えているか、という点です。

ネット上に落ちている記事によると、「チェンバロは『強弱が出ない』からどうしても嫌だそうな…」とあり、クラヴィコードが音に強弱やヴィブラートをつけられることを特に重視しているようです。(そのような特性はハープシコードやオルガンにはなく、モダンピアノに通じるものです。)

しかしながら、古楽の演奏家はそのような物理的な制約を、音楽表現への障害とは全く考えていないことも確かです。(ハープシコードの名人の演奏を聴いていると、「単音の強弱」といった物理的な手段に頼らずとも「人間の耳」がイリュージョンによって如何様にも強弱を感じ得ることを亭主も実感しています。)

このように見ていくと、シフはデュナーミクを欠くべからざる表現の手段と考え、クラヴィコードをモダンピアノの延長と見做している点で、依然としてクラシック音楽界の住人に留まっていると言えそうです。

なお、彼がクラヴィコードについて重視しているもう一つの要素は、その小さな音量が想定する小人数の聴衆の「親密さ」です。もしかすると、シフは18世紀以降のイタリア・フランスでの貴族やブルジョア達のサロン音楽に比すべきものを、後期バロックのドイツ、特にバッハの初期鍵盤作品に見ているのかもしれまません。

いずれにせよ、モダンピアノがその大音量ゆえに、極少人数のサロン音楽には「使えない楽器」になってしまった、というのもなんとも皮肉な話です。









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最終更新日  2023年04月02日 22時11分08秒
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