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2023年06月11日
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カテゴリ:音楽
「人は理屈で納得するが、感情で行動する」、とは米国の政治家、リチャード・ニクソンが残した言葉だとか。ニクソンといえば、今から半世紀ほど前に「ウォーターゲート事件」で職を辞した大統領として知られ、亭主もあまり好感は持っていませんが、この言葉は人間の本質をズバリ突いた箴言だと思われます。(長年の政治経験を通して真の人間理解に到達した、ということでしょうか。)

これが真実であることは誰もが感じているものの、「合理性」を重視する現代社会では「感情」の働きを軽く見がちです。そして、そのような「理性(分別)」が時として人の判断を誤らせることもよくあります。

例えば、依然として進行中のウクライナでの暴力も、その根っこを辿ると「東西冷戦の敗者」として三流国扱いされてきた「積年の恨み(ルサンチマン)」を晴らす、という露国大統領の強烈な負の感情にあることは明らか。20世紀前半に遡れば、第一次世界大戦に敗北し、戦勝国から蔑みと莫大な賠償を課されたドイツで、全く同じことが起きた(ヒトラーという「ルサンチマンの化身」のような怪物を生み出した)ことも思い出されます。(そのドイツの元首相がこんにちの露国大統領の感情とその行動を理解できなかった一方で、露国大統領が「ナチズムとの戦い」を口にするのを聞くと、もう頭がクラクラしそうですが。)

実は、以前にこのブログでも紹介した著作「デカルトの誤り」で、神経科学者のアントニオ・ダマシオが語っていることも本質的にはこれと同じです。ダマシオは、高次脳機能障害の研究を通じて、ヒトが理性的な判断だけでは行動を起こせず、何か行動を起こすためには感情の推進力が不可欠であることを示しました。

その元を進化生物学的に辿れば、生物であるヒトが起こす行動は基本的に「生存」のためにあり、そのために「欲望」(身体的・生理的な欲求)、事故・災害への「不安」、攻撃者への「恐怖」、「怒り」(生命の危険を回避あるいは除去する)といった感情が備わった、ということになります。

さらに、ダマシオによるとこのような感情はヒトの身体性と不可分で、その下層には「情動」という身体の状態を逐次反映する脳・神経系の働きがあるとか。(なので、どんなに人工知能が発達しても、この「感情」、「情動」は置き換えが効かないわけです。)

こう考えてくると、ヒトにとって芸術・芸能、特に音楽が何故あれほど影響力を持ち、必要とされるのかも理解できるというもの。何故なら、音楽はまさに人間の「感情」に直接働きかける、という比類ない力を持っているからです。「人はパンのみにて生くるものに非ず」の意味するところも基本的には同じ。(下世話には「パンとサーカス」とも言います。)

では何故音楽はそれほどの力を持つのか?例えば、若き日の吉田秀和翁は「ショーペンハウエルのフリュート」という随筆の中で、この問いと向き合った結果を次のように記しています
砲弾が、くぐり抜けてきた砲身の内部に刻まれた線によって与えられた一種の廻転的性向と前進力をもつように、モーツァルトの旋律は弾丸が大気の中に描きだす弾道の正確な美しさをもち、ベートーヴェンのデュナミークは、それがくぐり抜けてきた人間の内的意識の流れの力学的法則の鋳型の跡を、忠実にとどめている。
 彼らのシンフォニーは、ぼくらの時間的持続感と空間的運動感のいわば精神物理学的法則に一致したものであり、ぼくらはかかる作品に対して「明確な極めて現実的な美」といったものを感じないわけにゆかないのである。
(「主題と変奏」、創元社、1953/中公文庫、1977)
今から見ると随分唯物論的な物言いにも聞こえますが、これを亭主流に翻案すると、ヒトの心は音楽に対して共鳴現象のような反応を起こすように出来ているのだ、ということかと思われます。先ほどの「感情の起源」としての身体性に絡めていえば、例えば音楽のリズムはまさに心臓の鼓動に照応しています。

では何故ヒトはそのような心を持つようになったのか?ここからは亭主の想像ですが、それはやはり進化の過程で「生存に有利だったから」でしょう。音楽がもたらす「感動」や「快感」、「安寧」といった感情は、日々生存を懸けた行動によるストレスを癒し、あるいは集団内に融和や団結をもたらす効果があります。

もちろん、その分音楽はプロパガンダに容易に悪用され得るという危険もあります。ここで大事なポイントは、ヒトは感情によって行動するので、あらゆる局面において感情の取り扱いには細心の注意を払う必要がある、ということだと思われます。

「音楽は理屈ではない」、とは「音楽は諸刃の剣である」ということでもある、とつくづく感じる今日この頃です。









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最終更新日  2023年06月11日 22時05分28秒
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