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2023年09月18日
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カテゴリ:音楽
先週はじめ、作曲家の西村朗さんの訃報が流れました(9月7日逝去)。亭主にとり、西村さんといえば、NHK-FMで日曜の朝8時過ぎからの番組「現代の音楽」の司会役がすぐに思い浮かびます。時々ラジオを止め忘れていると「現代の音楽、西村朗です」と流れ始める彼のお元気そうな声を、つい最近まで耳にしていただけに、突然の訃報にびっくり。古希までわずか1日という69歳(9月8日がお誕生日)で癌に斃れられたとのことで、世の無常に改めて感じ入るニュースでした。

件のラジオ番組のホームページを見にいくと、出演者の訃報のすぐ下に「出演者交代のお知らせ」というリンクがあり、そこをクリックすると、10月から音楽学者の白石美雪さんへ交代するという記事とともに「西村朗さんからみなさまへ」と題してご本人のメッセージがアップされていました。曰く、
 「リスナーのみなさま、いつも番組をお聞きいただきありがとうございます。この番組への出演歴は長く、通算で15年と半年におよびました。私は9月いっぱいでこの番組を卒業します。10月からは、かつて3年間、一緒に番組を担当していた音楽学者の白石美雪さんにバトンタッチをします。長い間お聞きいただきありがとうございました。」
今から想像するに、ご本人はこのメッセージを用意しながら残された時間がもう長くはないことを十分に意識されていたものの、病の進行が予想を超えて速かったことが伺われます。

さて、現代音楽というと、亭主は日頃から関心がない(というか避けて通っている)ので全くの門外漢ですが、そんな亭主も、西村朗氏については日本を代表する「クラシック系」現代音楽の作曲家として名前だけは存じ上げていました。そこで、いまさらながらその人となりを知る手掛かりはないかとネット上を散策しているうちに、特別対談企画【久石譲×西村朗】というお題のユーチューブ動画が公開されているのを見つけました。

久石譲さんといえば、スタジオジブリの一連のアニメ映画に数々の名曲を提供した作曲家としてよく知られています(日本のジョン・ウィリアムズ?)。亭主宅にも子供用としてピアノ独奏に編曲された「となりのトトロ」や「千と千尋の…」の楽譜があるほど。一方で、同氏は「クラシック系」の現代音楽の作曲も手掛けているようで、表題の対談も昨年12月に行われた「四人組とその仲間たち」という現代音楽のコンサート(全音楽譜出版社主催)に久石氏がゲスト作曲家として招待されたのを機に実現したものだとか。(ちなみに、「四人組」とは池辺晋一郎、新実徳英、西村朗、金子仁美の各氏。この中で亭主が知っているのは、かつてのN響アワーの司会者だった池辺氏ぐらいです。)

というわけで、同じ現代音楽の作曲家といっても、どちらかというと対照的なキャリアをお持ちのお二人の対話がどういうものになるか、興味津々で動画を拝見。以下、対談を眺めながら亭主の注意を引いた点をメモっておきます。
(なお、動画は全体で50分程度の尺を、話題の切れ目毎に3回に分けた形でアップされており、クラシック音楽情報ウェブサイト「ぶらあぼ」からリンクを辿るのが便利です。[こちら])

まず「第1回」動画の冒頭近く、今回初めて「四人組」のコンサートに参加した久石氏に対し、これがもう30年近く続いていることを西村氏が紹介。主催者である全音の収益(あるいはサポート)を冗談めかして話題にした直後に、「まぁ、芸術はお金じゃないですからね」とまとめようとしたところ、久石氏が「いやいや…お金じゃないって言い切きっちゃいけないんですよ」と押し返します。以下はそれに続くやりとりです。
西村:「ああそうですか、もう言い切るしかないんですけれども(笑)...」
久石:「いや、逆にね、僕すごい気になるのはね、そうやって作家の思いが優先しちゃっていることによっての弊害みたいなのをすごい感じちゃうわけ。なぜなら我々ってやはりブレーキが必要な気がするんですよ」
西村:「はぃ…」
久石:「どこかで」
西村:「うん…」
久石:「つまり客に、お客さんに聴いてもらうとか。何かその辺での、そのお客さんに迎合する必要はないんだけれど、そういうところで演奏していく、つまりそうすると…ピュアな純粋の思いだけではできない何かが出てきますよね」
西村:「うーん…」
久石:「それがいいか悪いかは別です」
西村:「うーん…」
久石:「いいか悪いかは別だけど、何か歯止めみたいなのはないと。作曲家の思いが全てになっているというのは果たしていいのかなという疑問はちょっとある」
西村:「なるほど」
久石:「どう思います?」
西村:「なんか、やっぱりお客さんにしてみたらね、「闇鍋」会場か何かに引っ張り込まれて…真っ暗な中で何が口に入るかわからないようなこと…」
久石:「アハハハ」
西村:「そりゃやっぱりルールとしては「最低限食べれる」とか」
久石:「うん」
西村:「で、ある意味で…」
久石:「わらじを入れないとか(笑)」
西村:「そう、食べれるとか美味しいとか、まぁ料理人的な要素というのは作曲家は持っていたいなと思うんですよね」
久石:「いやー、その…」
西村:「やっぱり感覚期間に直接働きかけるわけですから。そこはルールですよね」
久石:「ですよね。だから何かその辺でこう… この四人組はもう、皆さん巨匠の方は大勢いらしゃるから、いいんだけれども、何かこの…現代音楽という世界が、一部の閉鎖的なところにならないように」
西村:「うーん」
久石:「持っていかないといけないっていう責任も、西村さんたちはもうお有りだから」
西村:「ぅおう…」

という感じでいきなり激突したお二人。久石氏の意見は、「クラシック系」現代音楽が長年抱えている「聴衆の不在」という大問題を直に批判したもの。それ自体は特に新しくはありませんが、業界を代表する西村氏、残念ながら「芸術はお金じゃない」と開き直るしかないところに閉塞感が漂っているようにも見えます。(芸術至上主義にどっぷり浸かっていた「みんなの教養」世代としては致し方ない?)

ここで西村氏は、この「責任」を教育という文脈に読み替え(?)、話題を自らの土俵に移すべく、大学での授業の中で行なっている現代音楽論の中身について開陳し始めます。彼曰く、「現代音楽」を作ったのはケージ、シュトックハウゼン、クセナキスの3人なので、(続く)作曲家は彼らがやったことに向き合い、それを超えて何ができるかを考えなければならない。しかるに、彼らはそれをやっていない(知識としてあるだけ)と批判しています。(なので、西村氏が考える現代音楽は、そういう作曲のスタンスが明確だった1950-60年代まで。1970年代以降はもう別物という認識です。)

ところが、久石氏はそのような西村史観に対し、これら3人の「西洋クラシック音楽の破壊者」が新しく持ち出した作曲技法のようなものについて、かなり率直な批判を行なっています。亭主なりに雑なまとめをすれば、これらは知的操作のようなものばかりで、作り出された音楽は意外に古臭かったりしてつまらない、とか。

そのほか、動画では現代音楽についてのいろいろな雑談が続きます。引用した冒頭のやり取りや作曲家論に加え、業界内のオタク談義やゴシップ的な話題もあり、亭主は普段知らない世界の内輪話として結構楽しめました。

それにしても西村朗さん、もう少しやりたいことはあっただろうと想像しまが、これも天命ということでしょう。改めてご冥福をお祈り申し上げます(合掌)。









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最終更新日  2023年09月18日 21時30分59秒
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