SALT OF THE EARTH

息子が父親の墓参りに行きたいので場所を教えてくれと連絡してきた。
都内であったが私も正確にお寺の場所がわからないので、
仕方なく「元姑」に聞いてみるように連絡先を教えた。
覚えやすい電話番号だったので、何年もかけていないのにすっと思い出したのも自分で
恐ろしかったが、これを機に元姑にとってはひ孫が生まれるということもあり、
また何かと出てこられては嫌だという思いが強かった。

息子の父親、要は私の前夫が死んで9年、そして息子の祖父、要は元姑の夫が死んで7年。
今や一人暮らしの元姑は、昨年は私の実家に「息子に会いたいので連絡欲しい」と言ってきた。その旨は息子に伝えたが、それでどうするかまで私の指示することではない。
初孫であったうちの息子は結構ちやほやされた。
実際、離婚後にもつきあいはあったし、世話になった面もあるにはあった。
だが、私の中には離婚後に彼女の投げた言葉や行動で嫌な思いをしたことを忘れることができないのだ。
自分の親の前で号泣したことなどなかった私が、離婚後一時身を寄せていた実家で受けた電話の彼女の言葉に、悔しくて悔しくて思わず泣いたことがあった。
した方はもう覚えちゃいないだろうが、こっちは忘れない。

案の定、夜になって元姑から「息子から連絡もらった」とこちらへも電話があった。
最低限の礼儀と明るい声で応対したが、やはり未熟者の私の心は動揺した。
あの結婚は本当に屈辱だった。自分の無知も晒した。自分勝手もした。周囲に大迷惑をかけた。思い出すたびに恥ることばかりで、思い出したくない。
私は前夫の骨まで拾って一銭ももらわないのだから充分にやったはずだ。
もう関わりたくないが、息子にとっては血縁だ。
お嫁さんも一緒に墓参りに行くのだという。うちの亭主は、提案したのは嫁さんじゃないか、と言うのだが、正直私の気持としてはお嫁さんにも元姑が関わってほしくない。

このことになると、自分の気持が乱されるのがわかる。
人を許せない、自分の狭さを実感させられて嫌になってしまう。
息子には息子の考えと行動があるのだ。自分の感情でそこに線引きができないとは未熟者だな、私も･･･