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カテゴリ:ショップリサーチ
皆さ~ん、お待たせ致しました。横浜美術館の「李兎煥 余白の芸術展」に行った帰りに、バナナ・リパブリックの横浜ランドマークプラザ店をじっくりと見てきた。
アメリカのGAP社が展開するバナナ・リパブリックが、北米以外の国に初めて進出したのがこの日本である。今秋に4店が開店している。これまでも、六本木ヒルズ店を何度かちらちらと見ていたのだが、3か月も経過し、オープン景気もひと段落したので、いよいよ今日は1点くらい購入もするつもりで午後5時過ぎに店内へ。 まず、目を引いたのは、店内のVMDの美しさである。メインのディスプレイ、棚の上などは、三角形の形に飾り付けるとか、棚の上に置くニットやパンツなどは、3枚なり4枚の定数定量を守って高さを揃える、フェイスアウト陳列とスリーブアウト陳列のバランス良い組み合わせ、といった基本がきっちりと出来ている。 それ以前に、内装にかなりお金をかけていることにも驚かされる。写真を数多く飾っていたり、ディスプレイ用の小物も数多く配置されていた。ランドマークプラザ店は、間口も広いが、奥が3段構え、3室構造の設計になっていたが、一番奥の部屋には大きなソファまで用意されている。8室あったフィッティング・ルームの中は広く、そこにまで額縁入りの写真が掛けてある徹底振りだ。 通路幅も非常に広く取ってある。また、ラウンド型のハンガーラックを配置し、トップス+インナー+ボトムスをコーディネート提案しているのも新鮮な印象だ。 今はクリスマス・シーズンということもあって、メインのディスプレイは白を基調としたものになっていた。1番目の部屋の商品も白の分量を圧倒的に多くし、VMDと商品のカラーコントロールを連動させている。また、ホームページにもアップされているような、クリスマスギフトになる小物類、マフラーや帽子、手袋、バッグやレザー小物、ジュエリーなどが壁面の棚に美しく三角形の形で並んでいる。 いわゆる、SPA(製造小売業)のお手本となるような、店内レイアウトと商品MDとプロモーション計画が、期末になっても完全に綺麗な形で継続している姿が見て取れた。 次に、商品についてだが、既に業界紙等でもかなり報道されている、サイズを日本人向けに変更している、というのは、メンズでもレディスでもはっきりとわかった。日本でいうところの13号サイズの人だと、かなり厳しいように思う。逆に、7号、場合によっては5号の小柄で細身の人には、レディスの4サイズ展開のうち一番小さいサイズなら対応可能なようで、店内にはスリムな体型のお客様がジャスト・フィットするサイズを求めて試着をする姿もあった。 企画の30%が日本市場向け、という報道もあったが、実際のところ、店頭で目を引くのは日本のアパレルの感覚とはちょっと違う商品であったりする。細かなことだが、セーターのUネックのUの空き具合とか、ジャケットの背中の切り替え(それこそU字状の切り替えなんかもある)とか、透かし編みを多様しているニット等々。 縄編みのマフラーやニットの帽子など、防寒小物が充実しているのも、アメリカ北部の寒さへの対応と、前述したホリディ・商戦の問題、クリスマス向けのギフトが非常に良く売れるお国柄を反映しているように見える。 逆に、秋口にはあったクロップドパンツやショートパンツとか、ベロアのジャケットなどの日本の今秋、冬の売れ筋は現在は皆無である。それから、クリスマス前だというのに、ワンピースの型数も非常に少なかった。 これは想像だが、期初には日本市場対応商品を用意していたが、ある時期でそれはストップしてしまったのではないか、という気がする。そうなると、日本のアパレルブランドのようなレイヤードルック(ジャケット+ベスト+キャミソールとか、スカート+パンツ等の重ね着)もないので、どうしても非常にコンサバなルックスに見えてしまうのだが・・・。 商品のディテールが微妙に日本のアパレルとは違うことが、こうなってくるとかえって個性になって良いように私は思った。怪我の功名ってやつでしょうか。 素材も3割は日本仕様、というのは、さっき書いたように今は店頭には恐らくほとんどなかったのではないかと推察されるからか・・・価格の割には、うーん、我慢できないことはないが、すごくいいものとは思えない気がする。ツイードにしても、ニットのヤーンにしても。ユニクロさんが、価格の割には素材はかなり良いのとは対照的ですね。 縫製も然り。アメリカのブランドにしては相当頑張っている方だと思うけど、ウールのジャケットやスカートの脇が少しつれているのではないか、と思えるものもあったりした。 何人かの一般の方のブログにも書いてあったが、アメリカのバナリパの価格を知っている人、特にアウトレットで買って味を占めている人から見ると、やはり、高いな、という印象を持つのは否めないような気がする。 とはいえ、今日私が試着して商品を購入している間にも、ぽつり、ぽつりとだが商品は売れていた。好立地にあるランドマークプラザの、入店客数の多さから見ると、買い上げ率はヤング向けのブランド程高くはないかもしれないが、恐らくいつもそこそこは売れているのではないか、という感じである。 どういう客層が買っているのかというと、ランドマークプラザ店の場合は、今日見た感じでは、30~40代前半の男女、カップル(シングルのカップルの場合と、既婚者と双方あるだろう)が中心なのではないかという気がする。 もちろん、それより下、上の層もいるだろうが、下の層にとっては、バナナ・リパブリックの価格は高すぎる。また、40代後半、50代になってくると、サイズの問題と、デザインが若い、ということになるであろう。 実は、都市型のややコンサバな大人市場を狙ったブランド、というのは、日本市場にはそう多くない。特にレディスは。結婚しても働き続けていたり、あるいはシングルだが、セレクトショップで自分でチョイスして買うまでのセンスがない層で、それなりにきちんと見える服を買いたい、でも、「マックス・マーラ」なんかのように高すぎるものは買えない、という層は、郊外型SCにはもちろんそんな服は売っていないし、百貨店に行くしかなかったのだ。 昔だと、「ニューヨーカー」「ポール・スチュアート」などトラッドベースの売り場、最近だと「アンタイトル」や「23区」などキャリア向けSPAに向かう層は多いのだけれど・・・。 駅ビルとか、ファッション・ビル系には、それらの売り場はないんですよ。だから、「ノーリーズ」とか、「ヒューマン・ウーマン」みたいなブランドにエイジの高い層が集まっていく。 意図してか意図せずしてか、ここにはまっていると思われる「バナナ・リパブリック」は、この調子だと、そこそこの実績をキープしていけるのではないかとさくらは思いますね。百貨店さんより出店コストは安いし、オイシイところをうまく突いていますよ。但し、坪数の問題もあるし、百万都市クラスでないとこういう客層は少ないと思うので全国20店舗くらいが限界かもしれないけど。 それでも成り立つのは、バナ・リパは、「GAP」が既に日本国内に定着し、社員数5,000人を誇るギャップ・ジャパン社のプロジェクトだからである。既に社員の教育・育成が十二分に出来、想像だが物流等のインフラも整備された上での出店だから、小規模でも利益が出る事業でOKなのだ。 バナ・リパさんをまだ見ておられない方、是非接客を受けてみて下さい。「こんにちは」といってアプローチをかけてくるスタイルはGAPと同じだが、なかなか粘り腰で素晴らしい接客である。市場の穴に近いポジショニングのブランドとはいえ、ふり客をコツコツ拾わなければイメージの良い外資ブランドという知名度だけでは数字は作れないと思うが、販売力はかなりハイレベルである。これならば、自分でチョイスする力に乏しいコンサバな層、ブランド名に憧れ感を持って来店する層をうまく拾っていけるだろう。 一番難しいかもしれないと思ったのは、メンズの重衣料である。ジャケット40,000円、スラックス22,000円といった価格帯は、百貨店ブランドやセレクトショップさんのスーツに比べると安いと思うのだが、いかんせんセレクトショップさんが強い!そこへ行かない層、行けない層は、青山商事さんやアオキさんなどが押さえている。 つまり、団塊ジュニアより上の年齢層に関しては、市場が未発達で単純すぎるのである。 その中で、どっちつかずのブランド、というマイナスのイメージを持たれるか、あるいは、お洒落なのに価格は少し安い、というポジティブなイメージを持たれるかは、広告宣伝次第かな、という気がする。レディス以上にメンズの方が、広告宣伝は必要なように思ったのだが。 PS.バナ・リパの日本進出については、小島ファッションマーケティング代表取締役の小島健輔氏が、雑誌『ファッション販売』の12月号に寄稿された文章が、非常に的確な分析を行っておられるので、是非ご高覧下さい。 人気blogランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年12月17日 23時26分24秒
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