A氏:ISO9001にかかわらず、環境でも労働安全衛生でも、マネジメントシステム審査は、規格に企業の特徴に対応した解釈の巾があるから、審査員も大変だろうね。
今まで来たこともない会社にいきなり訪問し、それなりの審査をしなくてはならない。
審査結果もきちんと文書にして派遣された審査機関に報告しなくてはならないからね。
私:しかし、一方で高圧的な審査員が生まれたのも確かだね。
もう10年くらい前になるが、関東地方のある都市郊外の小さなビジネスホテルに泊まったことがある。
度々利用したので、そのホテルの経営者の親父さんとは知り合いになった。
あるとき、その親父さんが「俺も長い間この商売をしていろいろなビジネスマンを知っているが、昨日泊まった人は『新人類』だ」と怒っていた。
部屋の衣紋掛けの数がすくないの、タクシーは時間通り来たのに、遅いのとか、偉そうに文句ばかり言うのだという。
実は、この「新人類」がISO の審査員だったんだね。
ところで、「精美堂」という会社のHPのカテゴリー「ISO関連」を開くと2001年からのISO9001の毎年の維持審査状況が詳しく載っている。
2003年頃来た審査員はちょっと異常で、会社は審査機関にクレーム書を出しているね。
そのクレーム書もインターネットで公表されているよ。
A氏:どんなクレームなのかね。
私:次の10件だね。
項目だけ、列記しておく。
詳細は、HPをみてほしいね。
1.別な意見を言うと偉そうに激高する審査姿勢
これは俺も他の会社の例を知っているが、審査員がその会社のマニュアルに「記録の保管」と書いてあるので、JISの訳通り「記録の維持」と書けというのを会社側が「保管のほうがわかりやすい」と拒否した。
そうしたら、「たった2文字の修正なのに言うことがきけないのか」と机を叩いてどなったそうだ。
元の英語はmaintainで、辞書をひくと多義語で「保管する」という意味もある。
このほうが適切で、JIS訳はよくないね。
もっとも、この審査員は、昼飯時とか、駅までの送り迎えの車の中の会話では、おだやかな人だったというから、審査の場は人格を変える魔力があるのかね。
2.他社の情報漏洩
3.審査時間内に審査員としての倫理なきコンサルセールス
4.貴審査機関の他の審査員を非難するなど審査の信頼性を破壊する発言
途中で審査員が変わると、前の審査員がOKにしたものを批判することがあるね。
5.審査の基準が目茶目茶
6.当社の実態に無知なアドバイス(審査とコンサルの混同)
7.典型的なしつこい文書過剰要求(審査とコンサルの混同)
8.マネジメントレビューの回数まで介入(審査とコンサルの混同)
5.から8.までは基本的にshallの無視だね。
9.基礎的なビジネス素養の欠如
10.エビデンスがない安易な不適合指摘
A氏:俺の元いた会社に来た審査員はどうだったかね。
私:この10のクレームのどれかは当たっているのではないかね。
どれも当たっていないという審査員は残念ながら少ないだろうね。