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私:トランプ氏が勝った米大統領選は、EU離脱を選んだ英国の国民投票に続いて、グローバル化に冷や水を浴びせかけた。 「いまこそ国家の出番だ」と説く鋭い資本主義批判で世界の注目を集めるドイツの社会学者、ヴォルフガング・シュトレーク氏へのインタビュー記事だね。
A氏:グローバル化の失敗についてはこのブログの「深い分断、きしむ民主主義」でとりあげたフランスの歴史学者エマニュエル・トッド氏と同意見だね。
私:シュトレーク氏は、米大統領選はグローバル化の敗者による反乱で、国を開くことが、特定のエリートだけでなく全体の利益になるというイデオロギーへの反乱でもあるという。 そのような敗者たちはさげすまれ、政治からいずれ離れるというエリートたちの楽観は、一気にしぼんだという。 格差の広がりは、自由市場の拡大がもたらした当然の結果で、国際競争で生き残る、という旗印のもと、それぞれの国家は市場に従属するようになり、政府が労働者や産業を守ることが難しくなったとシュトレーク氏はいう。
A氏;たとえば北欧諸国のように、教育機会や所得の再分配で格差を和らげることができるはずだが、シュトレーク氏は スウェーデンは腐敗のない政府や労働市場、教育に対し、半世紀以上にわたり投資を続けてきた国であり、小国ゆえ、競争力と社会的平等を両立できるポジションを、世界経済の中に見つけることもできた、ごく例外的なケースであり、ほかの国が簡単にマネできるようなものではないという。
私:国家までが国際競争にさらされた結果、福祉国家であることがとても高くつくようになり、グローバル化した資本は、規制や労働組合、高税率といった「社会民主主義の檻」に我慢できなくなり、資本が動きやすくなる一方、働き手は簡単には移動できないから、資本がどんどん優位になり、こうした国家の「檻」が打ち破られてきたという。 低成長を放置すれば、分配をめぐる衝突に発展しかねないので、それを回避し、人々を黙らせておくために、様々なマネーの魔法によって「時間かせぎ」をしてきたとシュトレーク氏はいう。 今は中央銀行によるマネーの供給に頼りきりで、いずれも、先駆けたのは米国で、「時間かせぎ」の間に、危機は深刻さを増しているという。
A氏:米国は「金融空間」という新しい市場をつくたんだね。 これは、このブログでとりあげた「資本主義の終焉と歴史の危機」で水野和夫氏が詳細に指摘していることだね。
私:シュトレーク氏は、大きな傾向は日米欧とも同じだが、停滞を真っ先に経験したのが日本で、日本では長期雇用と年功賃金制が社会の安定の源だったのが、80年代以降、企業が競争力を失っても、政府の支えのもと銀行が融資を続けたのは、長期雇用に手をつけて「内戦」になるのを避けるためで、その結果が不良債権問題であり、長期停滞で、賃金は上がらず、非正規雇用へのシフトが進んだという。 やはり金融緩和に頼ったアベノミクスは、目標をまったく達成できずに失敗し、他の国も含め「時間かせぎ」はそろそろ限界で、いつかの時点で、借金取りが回収にやってくるという。
A氏:いま成長を阻んでいるのは格差で、お金は、それを使わないお金持ちのポケットにたまっているだけで、人々の不満が高まり政治が不安定化したことで、投資もしづらくなり、人を雇うよりも金融市場で投機的に利益を上げようという考え方が幅をきかせ、現金の山の上に富裕層が座ったまま、雇用が増えなければ、需要など生まれないという。
私:シュトレーク氏は、私たちがいま直面しているのは、国境のコントロールを失って国が形骸化する、現代国家そのものの危機なのであって、英国のEU離脱運動のかけ声は国家が「コントロールを取り戻せ」だったという。 金融緩和が行き詰まった後に危機を先送りできる手段は見当たらず、もし、ドラギ(欧州中央銀行総裁)が「答えがない」と言えば、翌朝には世界経済は大炎上だが、シュトレーク氏は「私は解決策はないと断言させてもらう」という。 出口のないジレンマに向き合うより、甘美な解決策を聞きたくなるものだが、それを求める態度こそトランプを生んだという。
A氏;毎日仕事に出かけ、子育てに追われる普通の人々が、政治から遠ざけられてきた。 富だけでなく、政治へのアクセスをめぐる格差の広がりが何をもたらしたのか、政治権力に真剣に考えさせるべきで、彼らは臆病なので、人々が立ち上がれば向き合わざるを得なくなると、シュトレーク氏はいう。
私;だから、シュトレーク氏は、トランプは問題解決にはほど遠いが、彼のおかげで、問題を否定し続けることはできなくなり、人々が利害を軸に集団をつくり、そのために進んで戦うという、生々しい意味での政治制度の復権があり、そこに氏はまだ、希望を持っているという。 これは、徹底的にトランプ批判のクルーグマン氏やフリードマン氏と違い、多少の希望はあるね。
トランプのTPP撤退で、健康保険制度のように日本国家が国民のために作った規制「檻」をTPPのISDS条項(「TPPで訴訟リスク? 『ISDS条項』巡り論戦」)で米国のグローバル大企業により崩壊されるのは避けられそうだね。
「国滅びてグローバル企業残る」(「壊れゆく日本という国」)ことはとりあえず避けられそうだね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.11.22 19:17:43
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