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私:最近、週刊誌で食品店の店頭食品のコレコレに気をつけろという記事をよく見かけるが、この本の書評をみると、恐ろしい背景を知ることになるね。
しかし、評者は、この本はタイトルを見て「買ってはいけない」系の話かと思ったらまったく違い、本書が描くのはトマト缶業界で台頭してきた中国企業だという。
「イタリア産」の缶詰も、加工地がイタリアであり、中身は中国から運ばれているものが多いという、産地偽装でよく聞く話。
A氏:中国の場合、トマトの主要な産地・新疆は、反革命犯や政治犯を「改造」するために労働をさせる「労働改造」の一大拠点。
著者は2013年にこの制度が廃止された後も、多くの収容者がトマトの収穫作業を強いられているという証言を新疆で引き出しており、評者は、私たちはどこかで、反体制の知識人を含む人々がもいだトマトを食べているかもしれないのだという。
私:本書はグローバル経済の実態を示す一冊でもあるという。
フランスのトマト加工企業が、中国企業に買収された時点で、地元産トマトを使うという約束は反古にされ、中国から濃縮トマトが運ばれる。
フランスの地域の生産者の多くは転職を余儀なくされるが「フランス産プロヴァンス風トマトソース」は欧州のスーパーに並び続ける。
A氏:最も衝撃的な場面は、アフリカのガーナにある中国企業のトマト缶加工工場で、著者が人目をしのんで原料の入ったドラム缶に手を突っ込み、その「黒さ」を目の当たりにするところ。
酸化し変色した濃縮トマト(ブラックインクと呼ばれる)はアフリカで薄められ、着色される。
私:ブラックインク再加工の現場をおさえた著者の執念は相当なものだが、そうしたセンセーショナルな部分だけでなく、末端で働く人々の生活現場まで取材し、声を拾っているところに本書の意味はあると評者はいう。
著者はジャーナリストで、アマゾンの配送センターに潜入取材した前著がベストセラー。
評者は「奴隷制度がいかに自由主義とかかわりが深いか」という認識のもと書かれた本書は、たとえばTPPを推進した人々の間ではすでにそんなことは暗黙の了解なのだろうから、市井の人々にこそ広く読まれてほしいという。
評者は、タイトルから、「買ってはいけない」系の話かと思ったらまったく違うというが、やはり、最後は「買ってはいけない」系の話になるね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.05.07 17:45:37
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