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私:ブレイディみかこ氏は、保育士・ライターで、96年から英国在住。 現地の生々しい状況を伝えているが、前回は3月の「緊縮病『失われた10年』 待ちわびる、冬の終焉」で英国の緊縮財政をホームレス問題を通じて現場の姿を報じていたね。
今回は、治安悪化するロンドンと題して、背景にやはり緊縮財政があることを報じている。 A氏:ロンドンで2月と3月に起きた殺人件数が、現代史上初めてニューヨークを上回ったことが4月に明らかになり、ロイヤルファミリーとアフタヌーンティーの国の首都が、ニューヨークより治安の悪い都市になったというニュースは、英国のみならず、世界中を驚かせた。
ロンドン警視庁の発表によれば昨年4月から今年3月までのロンドンの殺人件数は前年比44%増で、若者の犯罪件数が約3割増。
凶器も銃の発砲事件は23%、ナイフ犯罪は21%上昇。
週末になるとロンドンで10代の少年や20代の若者が刺殺・射殺されたという報道が流れ、「ユースクライム(若者犯罪)」という言葉がクローズアップされている。
長年ロンドンの貧困区で若者支援に関わるユースワーカーとして働いた人は「政治が若者支援の予算を削減し続けたら、ロンドンはかつてないほど危険な都市になるだろう」という。
11年から17年までの間にロンドンでは88の若者支援の「ユースセンター」が閉鎖されている。
私:「ユースセンター」は、地域の10代の青少年たちが集まって放課後や余暇を過ごせる場所で、そこで働くユースワーカーたちは、ティーンの話し相手となり、問題を抱えた青少年を指導し、学校や福祉課、警察と連絡を取りながら支援していく仕事をする人々だ。
こうした若者支援サービスの縮小が青少年犯罪の増加に結び付いているという声が福祉関係者から上がっている。 英国では10年以降、公的な若者支援への支出は約3億8千万ポンド削減されており、12年から16年までに閉鎖された全国のユースクラブは603に上る。
また、11年には、低所得家庭の学生を対象とする教育維持補助金が廃止。
10年から14年の間に16歳から19歳の青少年への教育予算は実質で14%削減。
A氏:ロンドンの若者犯罪の増加は複雑な要因が絡み合っているが、その背後には「緊縮」の2文字が浮かび上がってくるとブレイディみかこ氏は指摘する。
保守党政権は緊縮財政を推し進め、財政支出を削減してきたが、青少年が教育を受けることや、メンタルヘルスの治療を受けることや、余暇を過ごせる安全な場所を与えられることや、専門の知識と経験を持つ大人に相談する機会を得ることを困難にすればするほど、都市の暴力犯罪件数は増える。
これは現代の若者たちが理解不能な生き物になっているわけでも、親の養育が急に劣化したわけでもなく、若者たちへの投資が圧倒的に足りていないのであって、経済政策の欠陥と社会現象の明らかなリンクを、精神論や道徳論にすり替えるわけにはいかないとブレイディみかこ氏はいう。
私:一方、首都の治安を守る警察もまた、人員削減の一路をたどっている。
政府は警察の予算削減と暴力犯罪増加には関連性がないと主張してきたが、ロンドン警視庁の警視総監はそのリンクを認める発言をした。
路上を常時パトロールして不審人物に声掛けし、反社会的行動を取り締まる地域治安維持補助官(PCSO)が、ロンドンでは08年から16年までに65%も減少。
市内149カ所にあった警察署や交番も半数以上が閉鎖されて73カ所になった。
10代が凶器を持ち歩くのが日常になれば、取り返しのつかない悲劇が生まれる機会が増え、未来を担う若者たちを守れずに、何のための緊縮財政なのか。我々はこの悲劇にけっして慣れてはいけないと、ブレイディみかこ氏はいう。
緊縮財政の問題は、英国だけでなく、EU諸国でも財政規律にからんで政治問題なっているね。
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Last updated
2018.06.10 18:02:08
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