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私:米国が、多様な人種や価値観が溶け合う「るつぼ」ではなく、共存する「サラダボウル」と形容されて久しいというが、近ごろは、共存空間を隔てる「高い壁」の気配をそこかしこに感じると、沢村亙氏はいう。
向こう側は価値観が全く異なる世界で、「壁」を越えて交わるすべはない。
それでも沢村氏が、米国政治を取材していると、ふとした拍子で「壁」の両側を行き来することがある。
たとえば、バージニア州で選挙集会をのぞいたとき、11月の上院議員選に共和党公認で出馬する男性(50)は威勢が良く、「この国の大学はあなた方の子供を社会主義に洗脳しているんですよ」という。
社会主義? 洗脳? いつ、どこの国の話かと、沢村氏は耳を疑う。
この男性は、イスラム排斥や白人優越を唱える勢力と接触した過去で知られ、保守層の間ですら極端とみられてきた人物が、「トランプ支持」を御旗に政治の表舞台に出てくる例がこのところ、目立つという。
「白人至上主義者と言われることをどう思うか」という質問も飛んだら、「リベラル連中は決まってそんなレッテルを貼るんだ」と男性はいい、司会者が「メディアを信じてはいけません」と声を張り上げると会場は大きな歓声に包まれた。
A氏:沢村氏は、政治の中枢にも「壁」の存在を感じるという。
たとえば、政権幹部が匿名で米紙に寄稿して大統領批判したが、それについて「トランプ氏は痛みを感じていない」と事情通から聞いた。
官僚や司法機関を「自分の追い落としを謀るエリート」と攻撃して支持を引き寄せるのがトランプ氏の流儀で、「格好の攻撃材料を大統領は手にした」という。
「壁」が米国の「寛容」を窒息させている気配もし、たとえば、プライベートで友人とレストランを訪れた大統領報道官に、店主が意に沿わない政権の幹部だからと退店を求めたニュースに接したとき、トランプ氏は「外見が汚い店は中身も汚い」とツイートでののしり、大統領支持者が抗議に押しかけて長期閉店を余儀なくされた後日談を耳にした。
私:それぞれに通底するのは、異なる意見や価値観を問答無用ではねつけ、時には「敵」とみなして排除しようとする態度や言動。
人種差別や妊娠中絶問題など価値観をめぐる対立は以前からあったが、違いはひとまず置き、共通基盤を見いだそうとする良識と知恵もかって、米国にはあった。
「政治信条は違っても議場を一歩出れば、与野党一緒に夕食を囲む仲だったが、今は互いに口もきかない」と、ある元州議会議員は昔を懐かしむ。
すでに4年前の世論調査で保守層の50%、リベラル層の35%が「政治的な価値観を同じくする地域に住むことが重要」と答えている。
わが子には政治信条が同じ人と結婚してほしいと望む親も増えているという。
異なる考えと切り結ぶ営みに疲れ、「壁」の内側にひきこもるアメリカ。
「トランプ」はその帰結か。
それとも「壁」に穴をうがつ復元力を見せるのか。
しかし、最近はEU諸国も移民制限の動きが強く、やはり、人間の本質は、理念のように動けないのだろうか。
ところで、最近、米メキシコ国境を越え米国に密入国する人々に、トランプ政権は越境した親子を引き離して収容し、移民の意欲をそごうとしたが、国内の強い反発を招き、逆に移民支援の動きが広がっていると報じられている。
「壁」の穴をうがった一つの行動か。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.09.24 23:23:20
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