テーマ:DVD映画鑑賞(13627)
カテゴリ:洋画・サスペンス
2001年11月公開 監督:クリストファー・ノーラン 製作費:900万ドル 『バットマン ビギンズ』『ダークナイト』の監督を務めたクリストファー・ノーランが、実弟ジョナサン・ノーランの書いた短編小説を脚本化し、映画化したミステリ・サスペンス映画。 主要キャストに、『L.A.コンフィデンシャル』のガイ・ピアース、『マトリックス』トリニティ役のキャリー=アン・モス。 “メメント”とは、「記憶、思い出」といった意味。 [簡単なあらすじ] レナード(ガイ・ピアース)は、人気のない廃屋でひとりの男を射殺した。 男は、レナードが長年追い続けてきた、彼の妻を強 姦し殺害した犯人だった。 だが、レナードは自分がなぜこの場所にいるのかも、今殺したばかりの男のことも、なにも知らない。 彼は、妻を襲った犯人に突き飛ばされた時に受けた傷がもとで、10分間しか記憶が保てない前向性健忘になってしまっていたのである。 最愛の妻を殺害されて復讐を誓ったレナードは、わずかな時間しか記憶が保てないことを、人物や場所はポラロイドカメラで撮影した写真とメモで、手に入れた情報は自らの体に入れ墨として彫り入れることで克服し、犯人を追い続けてきた。 レナードは、いかにして男が真犯人だと看破するに至ったのか。 物語は、彼が辿ってきた道筋を、過去へとさかのぼっていく―― 新生「バットマン」シリーズで、一躍ヒットメイカーとなったクリストファー・ノーラン監督が、世に注目されるきっかけとなった、出世作ともいえる作品です。 レナードは、記憶障害によりわずか10分しか記憶が保てないという体質の男。 彼の記憶として残っているのは、怪我を負うことになった妻の殺害事件以前のことだけで、それ以降の新しい記憶は10分ごとにすべて消えてしまいます。 それは、長い話をしていたならば、最初になにを話していたのかすら忘れてしまうほど。 物語は、そんな彼の主観で進んでいくので、当然謎だらけ。 しかも、この映画が斬新なのは、レナードが妻の殺害犯を射殺した決定的な場面から始まり、徐々に時系列をさかのぼっていくという構成にあります。 レナードはついに犯人を追いつめて復讐を遂げたものの、どうやってこの犯人を見つけたのかは、自分でも分からない。 視聴者もまた、唐突に始まったこの場面だけでは、事件の全容は分からない。 手掛かりとなるのは、唯一ポラロイドカメラで写した写真と、体の入れ墨のみ。 次に物語は10分前、レナードと謎の男テディが口論をしている場面に戻り、ここでようやく、ふたりが連れだってこの廃屋にやってきたことが明かされます。 さらに時間は10分前にさかのぼっていき、今度はレナードはモーテルの一室に。 ここでレナードとテディが落ち合ったことが分かる――、という寸法で、視聴者も場面が変わるたびにレナードと同様過去のことがまったく分からないという状況におかれ、そうすることで、いくつもの謎と対面していくことになるわけです。 犯人を殺したところからのスタートでは、通常ならば最後の謎となるべき犯人の正体が分かってしまっているので、面白くないんではないか、と思ってしまいますが、上記のようにレナードの記憶が続かないことを巧みに構成として利用しているため、むしろ普通以上の謎を楽しめました。 この編集法は相当ややこしいため、ミステリ好きな人がみても難解だと思います。 しかも、ラストには、思いもよらなかった衝撃の事実が! 自分のことすら信じることができない、という苦悩を持つ難しい役どころ、主人公レナード役に、ガイ・ピアーズ。 彼の、繊細だけれどとぼけた感のある演技は中々のもの。 レナードの衣服や車にも、様々な秘密が隠されていたりします。 本当にややこしい。 謎の女性ナタリー役に、『マトリックス』のトリニティ役でブレイクしたキャリー=アン・モス。 物語冒頭でレナードが射殺したテディ役には、ジョー・パントリアーノ。 この男の正体が、本作の重要なキーとなっております。 関係ないけれど、彼がレナードを呼ぶ時の、「レニー!」という言い方がムカつきます(笑) 記憶のないレナードにとっては、彼の周りにいる人間の誰もが正体不明の謎の人物。 また、周囲の人間からすれば、レナードほど簡単に騙せる人間もいません。 誰が真実を語り、誰がしたたかに立ち回っているのか。 すべてが謎に包まれた状況の中、いかにしてレナードは真実に辿り着けたのか。 謎が謎を呼ぶ、実に巧妙なミステリとして、とても楽しむことができました。 さすがはトップクリエイター、ノーラン監督作品です。 また、細かいシーンの積み重ねである編集とも相まって、本当にややこしい映画なため、DVDの巻き戻し機能が大変役に立ちました。 しかも、DVDには親切に、ただしい時系列順にシーンを入れ替えたリバース再生モードがついているので、こちらも便利。 自分はこれを観て、ようやく物語の全貌を把握することができました。 最低3回くらいは観ないと、完全に理解するのは難しい映画です。 そして、すべての謎が解けた時に残るのは、記憶というものがいかに不確かなものであるかということと、途方もない悲しさ――。 物事を新しく記憶することができない、という人物を描いた映画としては、邦画の傑作『博士の愛した数式』がありますが、あちらが感動的なヒューマンドラマだったのに対し、こちらはきわめてミステリ要素の強いサスペンス。 まったく対照的なジャンルを選びつつも、どちらも素晴らしい出来栄えの映画ですので、見比べてみるのも面白いかも。 ********** メメント この映画の詳細(Amazon)。 ⇒メメント [DVD] クリストファー・ノーラン監督作品の記事はコチラ ⇒「バットマン ビギンズ」 ⇒「ダークナイト」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.07.27 19:11:33
コメント(0) | コメントを書く
[洋画・サスペンス] カテゴリの最新記事
|
|