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テーマ:本のある暮らし(3300)
カテゴリ:あした元気にな~れ
野坂昭如介護の2千日を野坂夫人が書いているが、先日NHK福祉ネットワークで「夫婦の舟唄 -夫・野坂昭如を介護して-」を見た。
2003年5月に脳梗塞で倒れてから現在78歳に至る6年間リハビリ生活を送っている。彼のHPの日記もそのとき以来途切れている。 元気な頃は酒豪作家として東の横綱を立原正秋と張っていたこともあり、禁酒を勧められてもベッドの布団の下などに隠して飲み続けるなどまっとうな家庭生活は送っていなかったと夫人は語る。 野坂が倒れてから介護を通して夫婦としての愛情や安らぎの生活を取り戻した感じで、夫人の顔は生き生きしていた。 「黒の舟歌」も挿入歌となっていたが、男の哀愁があってダンディですなぁ。「バージンブルース」もYouTubeで見たが勝手にのってます。 倒れてからは、右半身不随と言語障害があるが、頭はしっかりしており、連句詠みの効果もあるようだ。エッセーなどは口述筆記で著しているが、本格的な小説を書くまでには至っていない。 晩年、やはり病気に苦しんだ谷崎潤一郎を思い出す。高血圧に悩まされながら『鍵』を、そして右手マヒや狭心症で苦しみながら口述筆記で著した『癲老人日記』などを読むと、フェチ、マゾなど嗜虐的な倒錯的性愛があからさまとなってあきれるが、正面から老人の性をテーマにしたねっちりした傑作にはちがいなく、執筆の腕は衰えなかったのに驚かされる。 野坂さん、神戸で焼け出され、大阪でエロ事師、新宿で飲み逃げ、某作家やタレントを殴る、角栄に対抗して新潟で立候補し切られる 、まあいろいろやらはりましたが、起死回生最後の一花頑張ってや。 なお、戦後、織田作の小説だけはよく読んだそうで、小説を筆写したこともあったとか。開高健との対談集『午後の愉しみ』で次のような話が出てくる。 野坂:いまから見るとうまいね。・・〈中略〉・・可能性の文学とかなんとかいって、こっちはジャズに憧れると同じように、彼の講演を聴きに行ったことがある。織田作は非常に頭にひっかかっていた時期があるんだ。だから、ぼくがいま持っている全集・選集の類は織田作だけ。 開高:ぼくは、彼の初期の作品の舞台になっている場所に住んでいましたからね。「夫婦善哉」なんかあのままですよ。それで感心しちゃった。おれが自分のまわりの会話を書くとして、あんなにうまく定着できるかどうか、疑問なぐらいうまく書いていたですね。・・〈後略〉 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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