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March 25, 2007
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     緑ハート 甘えん坊の文鳥が 緑ハート

当時、我が家にはヌウという名の、オスの桜文鳥がいました。
すこぶる甘えん坊の手乗りでした。
この日私たちは、ヒヨドリ騒動にかまけて彼のことをほとんどほっ
たらかしにしていたから、たいへん。

ヒヨドリの雛チーちゃんダイちゃんたちと、この日初めて部屋で
対面するわけですが、ヌウのそのときの反応は、まさに異常としかいいようの
ないものでした。
鳥籠の金網にしがみついて、ついに爆発したのです。

「イイヨ、イイヨー」

それは私たちに何か訴えるときの、ヌウ独特の細く高い鳴き方なのですが、
いつもとはボリュームがぜんぜん違います。
「(そんな子たち、ほっとけば)イイヨ、イイヨー」といっているようで、
ヌウには悪いが、思わず笑ってしまいました。

「ほっといてごめんごめん」といいながら鳥籠の入り口を開けてやると、
すぐ飛び出してきて、私の手の甲をがむしゃらにつつきはじめました。
アワやヒエなどの粒餌を噛み砕くほどのくちばしなので、本気でつつかれると、
その痛さは悲鳴を上げたくなるほどです。

夫が口笛で呼ぶと、夢中で彼の肩へ飛んでいき、そこでも不満を乱暴に
ぶちまけ、むき出しの首筋を容赦なくつつくありさまです。

そうして今度はチーちゃんとダイちゃんのほうを見て、さて、
どうしてくれようとばかり、眼を鋭くし、体を細くしました。

文鳥も気が強い鳥ですが、ヌウはこのとき、無鉄砲に雛たちに飛びか
かろうとはしません。相手はまだあどけないとはいえ、自分とあまり
大きさがかわらないのです。しかも二羽。下手をすると、自分のほうが
やられると思ったのかもしれません。

ヌウには、私たち親を奪われたことのほかに、我慢できないことが
もうひとつありました。それは、自分が毎日愛用しているフゴのふちに、
チーちゃんダイちゃんがとまっていたことです。

フゴというと、魚を入れるびくなどを思い浮かべるひとがいるかもしれません。
ここでいうのは、飼い鳥の雛を入れておく藁で編んだ蓋つきの入れ物のことです。
いわば小鳥用のベビーベッド。

面白いことにヌウは成鳥になっても、まだフゴ離れができない子でした。
昼寝のときは鳥籠の止まり木でうとうとするのですが、夜、
本格的な睡眠をとるときは、このフゴの中でなければ落ち着かないのです。

といっても、このフゴに自分からさっさと入るというわけではありません。
夜眠くなると、いったん私たちどちらかのところへやってきて、
人の手の中かふところで、うとうとするのです。すると私たちは、
そう、ちょうど大人の膝で眠ってしまった幼児をそうっとベッドに移すように、
ヌウをフゴに入れて、蓋をしてやるのです。

フゴの中でぐっすり眠ったヌウは、あくる朝目が覚めると、
とっておきの機嫌のいい声で、
「ピピヨピピヨ ピッピピピー
 ピピヨピピヨ ピッピピピー」
と鳴きだします。
それは私たちには「オハヨウ、オハヨウ。ハヤクフタトッテェ」と聞こえ、
楽しい目覚まし時計のようなものでした。

ヌウはその気になれば、くちばしでポコポコ蓋をずらして自分で
出てくることが出来るのですが、朝はきまって、私たちが蓋を
取ってやるまで、歌いつづけながらいつまでも待っているのでした。

そんなわけでフゴは、ヌウにとってとてもだいじなものだったのです。
それを私はうっかり、止まりやすいだろうと、チーちゃんとダイちゃんに―。

あっと思ったときには、もうヌウは、フゴの縁にいました。
そして、憎き相手に触れんばかりにくちばしをつきだし、
「イイヨ、イイヨー」
 私たちは同時に、
「ヌウ。だめっ」
と、激しく叱って、もう少しで彼を払いのけるところでした。

ところがなんとそのとき、
あれほどまでにかたくなだったチーちゃんとダイちゃんが、
そろって大きく口をあけたのです。しかも小刻みに羽をふるわせ、
チィ、チィ、チィと親に甘えるのと同じ声を出してー。

フゴの上.JPG
フゴとチーちゃん&ダイちゃん
この写真は、何日かあとのものです
私たち人間にも、こんな風によく口をあけるようになりました

ヌウは面食らって、そのままフゴの上でキョトンとなっています。

夫が、しめたとばかり、すり餌を指先ですくってすばやくダイちゃんの
口におしこみました。すると、ごくりとのみ込んだではありませんか。

私も真似して、チーちゃんの口にすり餌をおしこみました。
これも夢中でのみこんだのです。

うれしいことに、二羽の雛はそれをきっかけに、私たちが餌を与えようとすると
羽をふるわせ、大きく口をあけるようになったのです。
そして、すり餌だけでなく、デラウェアも蜘蛛もよろこんでのみこみました。

「ヌウちゃんでかした。でかしたぞ」
「ヌウちゃんは、救いの神よ」
やっと自分に関心が向けられ、優しい声をかけてもらえるようになった
甘えん坊は、ようやく落ち着きをとりもどしたのでした。

在りし日のぬうkimari.JPG

外は、とっぷり暮れていました。
もう、この日は、これで何事もおきないと思っていました。






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Last updated  March 25, 2007 07:14:46 PM
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ハンサムクン3714@ Re:命拾いした老犬のその後(02/05) はじめまして。勝手に訪問させて頂いて、…
[ おとなの時間です ]@ ざこだんなさこえ ざこだんなさこえざこだんなさこえざこだ…
四季の風365@ mimityan2842さんへ たいへん遅くなりました。そちらへ伺わせ…
mimityan2842@ Re:命拾いした老犬のその後(02/05) 今年になってあまりにいろんな出来事が一…
四季の風365@ モモねこさんへ ☆なんて幸せな結末!! ★首輪をしてなか…
四季の風365@ ☆赤う頭さ巾ぎ☆さんへ ☆りんご猫さんのお宅から伺いました。 ★…
モモねこ@ Re:命拾いした老犬のその後(02/05) なんて幸せな結末!! チビちゃん、本当…
☆赤う頭さ巾ぎ☆@ Re:側溝から犬の鳴き声(01/30) りんご猫さんのお宅から伺いました。 私…
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