新 緑仙の日々是好日

「来年は、十三回忌があるのよ‥」



「あら、そうなの。大勢、親戚を呼ぶの？」



「ううん‥身内だけなんだけど‥お寺から法事はどうしますか？って
　連絡があったのよ。」




「お寺さんは、法事の前には必ず連絡してくるじゃない？」




「うん、法事はするつもりなんだけど‥
　実はね‥
　まだ、お墓をきれいに直していないのよ。」




「まさか‥地震の時に壊れたの？」




「うん、墓石が割れちゃったままなのよ。
　全部、直すとかなりの費用でしょ‥弟や妹にも相談していたんだけど
　ぐずぐずしている内に４年と８ヶ月も過ぎちゃった‥」




「費用か‥」




「直さないといけないのは分かっているんだけど
　しばらく法事もないから、全面的には直していないのよ。
　私は、後継じゃないし、かと言って長男の弟だって家を継いでる訳じゃないし‥」




「困ったわね〜」











外は、昨夜から冷たい雨が降っている。
なんだか、急に真冬になったみたいだ。


６０歳を過ぎると
お墓、保険、年金、葬式、介護‥こんな話ばかりが話題になる。
地震の爪痕は、今もそこかしこに残っている。


お墓を最初から直すのは
新しく建てるのと同じくらいに費用がかかる。
身内と言ってもそれぞれに家庭がある。
そこへもってきて、この辺はどこも被災地。
みんな、3.11の時は、自分の家のことで手一杯だったことを思い出した。




地震以前のお墓が立派だとランクは下げられないのかも知れない。
あ〜何かと悩める年頃なのである










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