ピアノを吹っ飛ばすマツーエフの激爆演!!
前回はコンチェルトを聴いて、マツーエフにはケンカで絶対にかなわないと書いた。今日は自分がライオンのような圧倒的強者に出会ってしまった草食動物になったかのような打ちのめされた気分になりながら、どこか笑いが止まらない。仁王立ちしたマツーエフに平伏すしかない、そんなコンサートだった。ピアノを極限までぶち鳴らす。演奏の勢いでコンサートグランドが10cm吹っ飛ぶ。好きな人にはたまらない、嫌いな人にはたえられないコンサートだった。2008/10/29(水)紀尾井ホール2列目真ん中。シューマン:子供の情景 op.15 リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調 ショパン:バラード第4番 ヘ短調 op.52 ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」 アンコール;リャードフ:音楽玉手箱スクリャービン:練習曲 嬰ニ長調 op.8-12シチェドリン:ユーモレスクグリーグ(ギンズブルク編):「ペール・ギュント」から 山の魔王の宮殿にて☆レビュー☆ちなみに私は「大好き」な類。開演前の調律に時間が掛かっていたのが暗示だったのか。シューマンは、なんとも美しく、かわいらしく。知り尽くしたヤマハCF3Sから繊細にピアニッシモをコントロール。大柄なマツーエフに似合わないといったら失礼か、素晴らしいシューマンだった。眼を閉じて微笑みながら弾く弱音が印象的だった。会場にはマツーエフそっくりな子供がいたのだが、もしかしたら息子さんで、息子を思いながら子供の情景を弾いていたのかなぁ、と想像した。一転、リストのロ短調。これは想像を超えた演奏だった。この曲自体、作曲された頃には訳わからんと言われた曲なので、爆裂するならばこの曲だろうと思っていた。過去にはホロヴィッツ、リヒテル、ギレリスといった鉄拳ピアニストの専売特許とも言われ、そこまでの音が出ないのであれば手を出すべき曲ではないと思ってきた。以前にも当ブログで巨匠たちが1~10の音量レベルの音を出すとするならば、3~6しか出していない、などと酷評した演奏もあった。マツーエフは、1~12くらいの爆音を奏で、中間部では興奮のあまり崩壊寸前!!後半の展開部では、何とか我を取り戻し、レベルでいうならば10くらいの音量で突進。興奮を乗り越えたクライマックスでは、誰もが手に汗握り、弱音が消え去るのを待った。ピアノって、弦が切れなくてもこんなに鳴るんだ。そう思ってしまう爆演だった。芸術的とか、そんな評価は一切期待していない。どれだけ聴衆のボルテージを高めるか、それだけを目指した演奏だった。いやぁ、たまげた。後半のショパン。興奮しているのか、やや雑。だが、今夜はこれでいい。誰もお上品な、貴族的なショパンを期待していない。ショパンで、どれだけ音を出せるのか。みんなの期待はその点に集まった。展覧会の絵。さらに興奮してきたマツーエフ。プロムナードがいずれもアップテンポで大音量。物凄く、ラフで荒々しいスケッチ図の展覧会である。オケ版のように、高らかに気高く金管楽器がなるのを期待していたが、そんなのどうでもよくなった。どれだけ人間の本能を刺激してくれるのか、それだけを待望した。嫌が応にもバーバヤーガ以降に期待が集まる。意外と普通の興奮具合のバーバヤーガからキエフの大門へ。キエフでは圧倒的大音量でどんだけ大門だ?と思わせる演奏。原曲では音が足りないぜ!!と言わんばかりに音をズカズカと補足し倍音効果を狙う。これまた芸術は爆発だ!!といわんばかりの展覧会の絵に大興奮(笑)今日発売のCD(カーネギーライブ)に展覧会の絵ではなくプロコの7番が入っています。リャードフの可愛らしい音楽は、今日の二つ目の聴き所。弱音美も素晴らしかった。ピアニッシモを自在に駆使する演奏には感服。アンコールで何度も弾いてきたスクリャービン8-12では、特に低音が大音量。これはロシア人の曲だぜ!!といわんばかりの暴れん坊で、最後の和音で何とピアノが10cm(推定)吹っ飛んだ!!!何たるロシアンパワーー!!シチェドリンもアンコールの定番だが、こういう曲もとても上手。笑いを誘う。しかし、心臓に自信の無いご老人が退出を始める。ラストは、ギンズブルグ編のグリーグ。ピアノ編は初めて聴いた。予想通りの編曲だが予想以上の爆音だった。これまた興奮して、どんどんスピードアップ。難度もアップしているで崩壊寸前でクライマックス。これまたピアノが5cm(推定)吹っ飛んだ・・・!!批評家?俺には関係ねーー。俺は、俺が弾きたいように弾くんだよ、俺がマツーエフだ、覚えとけ!!芸術の秋というよりは、スポーツの秋の夕べであった(笑)※私は大好きです。しばらく、普通のピアニストは聴けないだろう・・・、そんな演奏会だった。サイン会。背が高く、腰位置も高く、体格が良いのでかっこよかった。握手。ケンカしても勝てそうにない大きな手だった(笑)