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2006年10月12日
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カテゴリ:海外ミステリ

司祭の娘であるモニカ・スタントン22歳は、処女作『欲望』がベストセラーとなったものの、同居する叔母や近所の人から白い目で見られます。

なぜならその小説は、奔放な恋をする上流世界の女性を描いたもので、故郷の町から出たこともない地味な生活を送っていた彼女とは思えない大胆な表現がなされていたからです。

ついに居辛くなったモニカは、家を出てアルビオン撮影所へ行き、脚本家の職を得ます。

ところがそこでは恐ろしい事が次々にふりかかることになります。
最初の事件は、プロデューサーに呼び出されたセットで、硫酸が降ってきたのです。



この作品の舞台は、イギリスの映画撮影所です。カー自身も映画の脚本の仕事をしたことがあるそうですが、その時の経験は苦いものだったようです。友人のクレイトン・ロースンに手紙で「連中はいかれてる」と表現したくらいですから。

そのせいか、映画に携わる人々はみな個性的でアクが強く、ヒロインはまさに魔界に飛び込んだかのように描かれています。それとも、もともと映画界とはそんなところなんでしょうか?
さらに第二次世界大戦中ということで灯火管制があったり、『海洋のスパイ』という映画が撮影されていたりします。
その割には戦争は暗い影を落としてはいません。
全体に明るく、ラブコメディの要素が強い作品です。

しかもヘンリー・メリヴェール卿はなかなか出てきません。
ぼやきながら登場するのは後半を過ぎてからです。

ありがちな展開ながら微笑ましいロマンスと、小憎らしいミス・ディレクションが柱でしょうか。
昔のユーモア・サスペンス映画を見ているような気分で楽しく読みました。


かくして殺人へ かくして殺人へ : カーター・ディクスン








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最終更新日  2006年10月12日 23時56分44秒
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